プロローグ:――世界は、まだ均衡〈バランス〉の上に
本作『黒猫の晩餐』は、
「もし正義が機能しなくなった世界で、誰が正義を行うのか?」という問いから生まれました。
夜の闇に紛れて活動する“黒猫”たちは、
復讐代行というアウトローな立場にありながら、どこか哀しく、どこか美しい。
そんな彼らの葛藤と戦いを、ぜひ最後まで見届けていただけたら嬉しいです。
ノワール、復讐劇、裏社会ものが好きな方には特に楽しんでいただけるかと思います。
少しでも心に引っかかる何かが残れば、それが作者にとっての「ご馳走」です。
それでは、晩餐の幕開けを――。
これは、正義が機能しない世界で。
これは、闇が光よりもよく見える世界で。
これは、猫たちが沈黙の晩餐を交わす世界の物語。
誰もが知っている。
この国の“法”が全てを救ってはくれないことを。
警察が、検察が、そして裁判所が――
その正しさに、時折、目を背けることを。
だからこそ、彼らは現れた。
『黒猫の晩餐〈くろねこのばんさん〉』――
名もなき依頼者の「復讐〈ふくしゅう〉」を請け負う影の自警団。
暗闇に潜み、法の網をすり抜けた罪人に“罰”を与える者たち。
率いるのは、寡黙な男――黒川 椿〈くろかわ つばき〉。
人々からは“シェフ”と呼ばれ、冷徹な正義をもって依頼を“料理”する。
その側には、過去に何かを失った者たちが集う。
冷静沈着な暗殺者“江原 道彦〈えはら みちひこ〉”、
復讐の意味を探し続ける少女“嵯峨野 さゆり〈さがの さゆり〉”。
そして、彼らの前に立ちはだかるのが、
裏社会を牛耳る中国系マフィア『青龍会〈せいりゅうかい〉』。
その若き頭目――楊 陳豪〈よう ちんほう〉は、
金と暴力で国家さえも捻じ曲げる冷酷な支配者。
血で描かれるのは、正義か、復讐か、それともただの暴走か。
交わるはずのなかった者たちが、今、運命の盤に集う。
――物語のはじまりは、ある少女の涙だった。
復讐を願うその一滴が、すべての歯車を動かしていく。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
これが『黒猫の晩餐』のプロローグとなります。
今後は、それぞれの登場人物にフォーカスしたエピソードや、
青龍会との衝突、依頼人との出会いなどが描かれていきます。
キャラクターはどれも、作者がこだわって設計した存在です。
お気に入りの一人が見つかれば、ぜひコメントで教えてくださいね。
今後の展開で、誰が信じられ、誰が裏切るのか――
読者の皆さんの予想を裏切りつつ、満足してもらえる物語を目指します!