小説家への手紙
この一瞬を残したいと感じる場面がある。
そんな時、自分が小説家だったらどんなによかったかと思わずにはいられない。
一瞬はどこまでいっても一瞬で、その時感じたこともすぐに霧散してしまう。
ああ、もったいない。
そんな時、小説を開く。
あの時感じた一瞬に出会えたら、顔も知らない小説家と友人になれたような気さえする。
まぁ、実際にそんなことはごく稀で、あの一瞬、もしくはあるはずのない至高の瞬間を求めて延々とページをめくり続けるわけだが。
つくづく文章を書く人は天才だと思う。
読むたびに思う。
1秒にも満たない間に感じた切なさや、喜び、痛みを、とんでもない精度で脳内に再現する。
幼い頃は漠然と小説家に憧れたりもしたが、今は神にも等しいものに見える。
私は消費する側で満足できてしまうし、あそこまで精度の高い文章を書けるとも思わない。
彼らの文字にかける執念というか、エネルギーはどこからくるのだろう。
たまにユーモアも交えて引き込んでくるからたまらない。
ということで、面白い文章を書ける方々、今後とも私を楽しませる文章を書き続けてほしい。
私の掴めなかった一瞬を、どうか文字にして残してほしい。
そうすれば、いつでもあの一瞬に戻れるから。