+ ※ナークタリアside
■■■■■■■■■ナークタリア■■■■■■■■■
「シシャナク領からまた書簡だと?」
冒険者ギルドの長と、そしてこのフェイルローズ領の領主代行をしているナークタリアの下には毎日大量の書類が持ち込まれる。
この日は書類の他に一通の書簡が届けられた。
「おそらくはいつものように作物の催促かと。こちらはまだ供給が足りない状況だと言うのに・・・」
書類を持ってきた文官のケニックが顔をしかめる。
シシャナク領はフェイルローズ領の隣、国境の境目に位置しており本来であれば国防のために他から食料支援を受ける立場だった。
けれど今は状況が逆になってしまっている。
”神の意志”のせいだ。
「異世界人たちがようやっと自立し始めましたが・・・まだまだですからな。まかなえるだけの作物を作るには数年かかるでしょうな」
肩をすくめてみせるのはバラックだ。自分が領主館ではなくこちらに入りびたっているせいで彼も領主の仕事に詳しくなってしまった。
彼らのほとんどは冒険者になり、魔物を討伐してくれる。魔物からは時折食べられるアイテムをドロップすることがあり、狩れば狩っただけ食料を賄えることになる。
けれどそれでも足りない。魔物のドロップはほとんどが肉であり、人は肉のみを食べるわけではないからだ。
穀物や野菜や果実はどうしても不足しがちになる。
それをどう補うか?
他領からの買い付けである。
王の勅令の下、低価格で送られてくる作物だったがすべての領が納得して送ってきてくれているわけではない。
シシャナク領のように不満を持つ貴族ももちろん存在していた。
わたしは書簡を開き内容に目を通す。
「・・・・・・これまでの金額を払えときたな。でなければ作物を返すようにと。こちらで作物のできが良くなる”祝福”があったのを知ってのことだそうだ。できねば兵を起こすと言っている」
「・・・たった十日そこらの祝福にですか」
異世界人が増えたことでいくつかの問題が起こっていた。食糧問題はもとよりポーション、武器防具、砥石などの消耗品が不足し始めたのだ。
それを解消するために、神は生産品を多く、より良くするための”祝福”をこの地に与えてくださったのだ。
それは十日ほどの祝福だった。
作物はよく育ち、物は高品質に、そして早くできるようになっていた。
万全とはいかないが足りなかったもろもろをある程度まかなうことができる祝福だった。
そう。万全ではない。
まだ足りない。
シシャナク領の求めるままに返せるほどの量は、全然なかったのである。
けれどこれまでのことに不満を持っていたシシャナク領としては不満も爆発するだろう。
異世界人の現れたここフェイルローズ領のみならず、近隣の領地はどこも作物が足りない状況におかれていた。なのに”祝福”が与えられたのはフェイルローズ領だけなのだ。少しは分け前をよこせと言ったとして誰が咎められようか。
無理だと突っぱねられるほど、簡単なことではない。
「実際無理なわけですが、領主はなんと?」
「フェイルローズ卿はどうしてもと言う場合にはシシャナク伯爵に譲歩しても良いと言っている。戦争だけはするなとな」
ナークタリアは領主代行だ。本来は別の国のエルフだが、人族の政治や習慣を学ぶためにこちらの国営作法を学んでいる。代行の仕事もそのためだ。
領主であるフェイルローズ卿は王都で仕事をしており、その間の領地の経営を任されている。
なので領地の施策は領主であるフェルローズ卿の考え通りにすすめなくてはならない。
「シシャナク伯爵に会うか・・・、バラック、先方に私が会いに行く旨先ぶれをたのむ。ケニック、ついてきてもらえるか」
「わかりました」
「おう」
領主が領民に無理をさせてでも他領との戦争を回避しようと言うのだ。代行である自分もその通りにしよう。そうなれば今重要なのは急ぐこと。相手に挙兵を思い留まらせなくてはならない。
「集まったか」
急ぎ集めた兵士たちを見る。
シシャナク伯爵は気の短い典型的な軍人気質の人だという話だ。もし怒り心頭で挙兵を決意していたならこの程度の兵士を連れて行っても護衛にもならないだろう。
自分は良いカモだと討ち取られ、彼らも殺されることになる。補佐に連れていくケニックもだ。
「危ない橋を渡らせることになる・・・すまないな」
「いえ・・・」
言葉は少ない。数日前までは領地の生産量が改善する兆しが見えてみんな喜んでいたというのに。突然の戦争の気配に空気が重くなっていた。
全員が馬に騎乗したのを確認する。
「行こう」
馬の鼻先を西に向け、ゆっくりと進ませていく。
目の端に、何かが光ったように見えた。
視線がぶれる。いや───体がぶれる。
気づけば私は地面に倒れていた。何が?そう視線を上げた時、
後ろに続いていた馬の
ひずめが
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「なにしてんだ姉ぇえー!!??」
町中から町に転移すると町の中央広場に移動していた。大きな城下町で迷子になっても安心な仕様だね。
「よし。やりとげた」
「説明しろー!!」
うるさいなぁ。
仕方がないから説明することにした。
「く、そうか、冒険者ギルドで言いがかりをつけられて殺されたから仕返しした?ほ、ほう?へぇ?」
「そだよ。精霊さんたちと戯れる美少女が嫌いなんだろうね。怖いから冒険者ギルド使えなくなっちゃってるんで、その腹いせも込めてね」
弟はいまいち信じていない顔だったが、ため息を一つついて首を振る。
「はぁ・・・いいよ。調べとくよ。いつものことさ・・・うん」
「よろしくー?」
いいならいいけどね。
それよりもスキルは何をとっているのか見せろと言う。見せません。弟からのセクハラでも姉は許可しません。
「今のでまたカルマ値が貯まっただろ!、今後も心配だから有用なスキル教えるから、取ってくれ!」
「えー?」
心配されるようなことはあまりないと思うけど。まぁそこまで言うなら見せ合いっこで妥協することにした。
名前 シィリエ «銀色の月»
種族 ハーフエルフ
職業 狩人
年齢 15
・スキル
弓Lv5 貫通矢 一発必中
弓精霊Lv5 クイック
盾精霊Lv3
火魔術Lv3 火矢
水魔術Lv4 水矢
・スキル
裁縫Lv5 連縫
木工Lv6 線切り
・スキル
遠矢 野駆け 解体 集中 鷹の目 魔素消費減少 精霊の友
弟のステータスも見せてもらったがスキルが多いだけで良くわからなかった。種族がハーフ魔族と言っていたけど表記では”半魔”だったのがちょっとウケた。
「ソロプレイなのに攻撃的だなこのビルド!?しかも魔法特化?!」
いやいや普通だよ。
魔術だけど魔法?。魔法というのは魔術系含む物理防御で減算されない属性攻撃全般のことらしい。精霊の攻撃や呪術なんかがそうだ。
「とりあえず『隠れる』と『忍び歩き』は取ってよ。あとできれば『目くらまし』もほしい」
「なにそれ。やだよ暗殺者みたいじゃん」
何言ってるんだこいつって目で見られました。今日のはたまたまです。
なけなしのポイントで取ろうと思ったらなぜかポイントが増えていたので全部取ってみた。きっとあのクソエルフを倒してレベルが上がったのだろう。うまー
名前 シィリエ «銀色の月»
種族 ハーフエルフ
職業 狩人
年齢 15
・スキル
弓Lv5 貫通矢 一発必中
弓精霊Lv5 クイック
盾精霊Lv3
火魔術Lv3 火矢
水魔術Lv4 水矢
・スキル
裁縫Lv5 連縫
木工Lv6 線切り
・スキル
遠矢 野駆け 忍び歩き 解体 目くらまし 集中 鷹の目 隠れる
魔素消費減少 精霊の友
「『目くらまし』は砂とか粉を相手に投げつけた時の混乱成功率があがるから、アイテムボックスに小麦粉とか入れといてくれよ。今はおれの粉袋あげとくから、これを参考にしてくれ」
袋をもらった。網目の粗い袋らしく、このまま投げれば当たった場所に粉が舞い散るらしい。
「ひとまずはこれでいいか。『回避』とか『格闘』もほしいけど、必要になれば取るだろうし。あとはたまにでいいからカルマ値の確認に神殿行ってね。あとしばらくはさっきの奴には近づかないこと。好感度下がってるから」
「はーい」
カルマ値は大事っぽいので気にしておこう。心はピュアピュアなつもりでもいつの間にか貯まってるようだからね。
そのあと小言モードに移行した弟。聞きたくないので無理やり分かれた。
ふぅ、なんか今日は情報量が多かったのでちょっと休みたい。
カルマ値
クソエルフ
新スキル
新しい要素を確認するのは明日にしよう。