戦闘訓練
次の日になりましたわたしです。でもログアウトしていないので変な気分です。こんにちは。
広い食堂でみんなといっしょに食事をとりまして、このあとの予定を聞かされます。
まず体育。それからちょっと座学をしてご飯。そしてまた体育。
戦闘させられるために呼ばれたのでほとんどの時間が体育ですね。やだー!
今日はお姫様はいないのだとか。月一で顔を見せるそうです。
今日一つ目の授業(?)はランニング。城の裏庭に作られた広い運動場でひたすら走って体力づくりだそうで。ちなみに体操服(?)は一人三着配られている。
みんなぺれぺれダルそうに走っているのを横目にわたしは元気だった。
あれだね。どうやらスキルで取ってた『野駆け』とかステータスがそのまま私の血肉になってくれてるんだろうね。楽なのはいいことだ。
わたしは桜ちゃんのグループでいっしょに疲れた顔をして走る。
男子よりは遅いけど桜ちゃんたちも運動部。なかなか良いペースだ。
「疲れました・・・」
「そうかな、運動だけしてりゃいいってのは楽だけどね」
「あずさは脳筋だから」
「静香もメガネを捨てれば脳筋じゃんよ」
「うるさい。わたしの知性がメガネ部分にしかないと思ってるでしょう?でも違うの。最近気が付いたんだけど、メガネを取るとなにもできないし何もわからないの」
「うん?」
「メガネには知性も筋肉もあるのよ」
「・・・・・・」
「メガネには脳みそも筋肉もあるのよ」
座学は運動のための組み分けみたいなものだった。前衛と後衛の役割を説明してえ、メガネ?メガネはスルーで。
クラスを二つに分ける。
前衛がやりたいメンバーと、後衛がやりたいメンバーに。
後衛が2/3集まっていた。
みんな危険な前衛をやりたくなくて後衛に集まった感じだね。もちろんわたしも後衛だ。
「適正で再度組み分けを行う。後衛希望者は5人ずつ出て槍か剣を持って並べ!」
近接用の武器を持たされて盾と木剣を構えた兵士とかるく打ち合いをさせられる。
「よし、お前は前衛だ!」
やーだよ♪
と言うわけにもいかず前衛に振り分けられてしまいました。しょんぼりだね
剣スキルや槍スキルを取ってしまったせいだな。
まぁ、弓はゆずってやろう。あんな生まれたばかりのバンビみたいにオドオドしてる女子と貧弱なボウヤたちに、弓という安全なポジションをゆずるくらいなんてことはないさ。
グループでも真央ちゃんとあずさちゃんは前衛に分けられていた。
桜ちゃんは弓で、静香ちゃんは魔術で戦うことになりそうだ。
一旦食事をとって午後の授業だ。
午後からは午前中に分けた前衛後衛ごとに訓練が行われる。
前衛は武器を持っての素振りだ。わたしは木剣で。
「よーし『剣風』っ『二連撃』っ」
「こらースキルは使うな!」
怒られちった。
剣精霊のモアちんがいなくてもスキルは発動する。ゲームのスキルもだが、この世界でもスキルというものがあって、どうやら同じような効果を起こせるようだった。
あほな男子が怒られるのも覚悟のうえでスキルを発動して遊んでいる。ははは殴られてやんのー。
素振りの後はまたランニングだ。ただし今度は武器を携帯したままだ。今はまだ木製の武器だけど、これがそのうち本物の金属剣にかわるのだと言う。
それまでにはもうちょっと体力を付けておいたほうがいいかもしれないね。
これで今日の授業は終わりだけど、このあと自主訓練がある。残りたい生徒は残って訓練していいってことらしい。
もちろん桜ちゃんたちは居残り組みだ。
「魔術難しいのよね」
「弓あたらないです」
「槍は面白いわよ。気に入った」
「剣は微妙かなぁ。もっとこう、ハデなのがいいなぁ」
魔術は気になるので後で静香ちゃんに教わろう。弓ならある程度は教えられると思う。感覚で撃ってるだけだけど。あずさちゃんはモーニングスターでも握っとれ。
わたしは桜ちゃんに弓の手ほどきをする。
「こう、かな?」
「違う、もっとこう、背筋を伸ばして」
「こ、いたっ」
おっぱいが邪魔してるね!私の時はそんなことはないんだけど。なんだこの格差。ハーフエルフは貧乳なのです。しかたのないことなのです。
兵士の人に言って胸当てを貸してもらう。
改めて弓の練習をしていく。
外が暗くなるころにはようやく一本二本、的に当たるようになってきた。
「桜ちんの職業は何だっけ?降霊術師?」
「付与術師だよ。魔力を使って武器に魔法を付与できるんだよ」
霊を降ろして強化するわけではなかったらしい。私の精霊手と似たような感じの職業だ。もっとも、一体も精霊のいないわたしと違って付与はきちんと効果のある職業だったけど。
「矢にファイヤーボールを仕込もうよ。これならよけられても爆風でダメージ与えられるよ」
「えぇ・・・できるのかな。・・・『付与:ファイヤーボール』?」
お、できたっぽい。矢の先っぽに火の玉が灯る。
「え、やだこれ、や、どうしよう!?」
「射るんだ、射て、ほらあの的を」
動揺した桜ちゃんは火球矢を適当に放り投げた。
ドーン
爆風で桜ちゃんと私は吹っ飛ばされる。わたしが盾になっていたので桜ちゃんはそれほど傷を負っていない。
「いたた・・・びっくりだよ!」
「いたたたた、ご、ごめんなさいっ」
もう今日はこのあたりにしておこう・・・スキルが使えることがわかっただけで十分だよ。
小さい傷のできたわたしたちはクラスの回復役に治療をお願いする。回復魔術を受ければ傷はすぐに治ってしまった。
「回復スキルいいなぁ。覚えられないかなぁ」
「ど、どうだろうね。職業との親和性が高ければ覚えられるかもって言ってたけど」
似た職業であれば他職のスキルも覚えられる。桜ちゃんの火球も本来は魔術師のスキルだ。けれど付与術は魔法を付与できるため、魔術に関するものは一通り覚えられるらしい。
なので桜ちゃんなら回復魔術も覚えられそうなんだけど。わたしも覚えたいものだ。
傷は癒えても煤けた姿はもどらない。
わたしたちは他のメンバーと連れ立ってお風呂にきていた。
シャワーは部屋にあるが風呂は施設に一か所しかない。なので男女交代で時間ごとに入れ替え制で入るのだ。
今は女子の時間。
「わーい」
「こらちびっこ!まっすぐ湯船に入らない!」
真央ちゃんに止められたわたしは雑に湯をかけられて体の埃を落とされる。もう入っていいー?ダメらしい。
石鹸で泡立てられたスポンジで体をゴシゴシと洗われる。あぶぶ、頭を洗う時は言ってほしい。ふぅ。これは楽な奴だ。そのまま身をまかせていると「よし、いいわよ」とようやく解放されたので湯船に飛び込んだ。
「は~ごくらくごくらく」
「おっさんくさいわね」
「シィはいい齢らしいぞ」
失敬な。まだ2●歳だぞ。アラ20だアラ20。
ゆっくりしているとみんな入ってきたので見比べる。やはり桜ちんの胸囲はでかい。
「そんなだから弦に引っ掛かるのか」
「そ、それは言わないで!」
「ほう」
「なるほどにゃー」
「浮いてるものねぇ」
わいのわいのしていると他のグループも入ってきた。湯船には10人も入るといっぱいいっぱいになってしまう。なので適度に交代してやっていこう。
「ほらシィたん、頭ふいてあげるよ、行こうっ♪」
「もう好きに呼ぶがいいよ。頭くらい自分で拭けるもん」
あずさちゃんに引っ張られながら脱衣所に向かう。
わしゃわしゃ拭いてもらってついでに髪を櫛でといてもらう。ふぅ。ドライヤーがないのはしかたない。魔道具で作れないのかな。
お風呂が終わるとご飯だ。
まぁそれなり?何か胃もたれするような感じがあるのは肉多めだからだろう。野菜と果物が少ないのはどこのファンタジーでもいっしょなのかもしれない。
この世界の魔物は倒しても野菜も果物もドロップしない。かわりに肉。なので食用の家畜は少ないらしい。味が悪いのもそのせいかな。食べる用に品種改良してないからね。




