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ミッションイベント☆


というわけでイベントの開始日だ。

冒険者ギルドに行って依頼の受諾をする。

受付のお姉さんにイベントの概要を説明してもらったらスタートだ!


「冒険者さんっ、今日はよろしくお願いしますねっ」

「こちらこそー」


元気に挨拶してくれたのは私の今日の相棒。普通科のメディアちゃんだ。

ちょっと太めのメガネがかわいい彼女はなんと、平民であった。やったね♪フラグ回避である。

開始を待つ参加者を見ると結構な数のプレイヤーがいる。プレイヤー1人に対して学生も1人なので今回のイベントはNPCを連れ歩けるだけのソロゲーと同じようなものだ。


「初めはどこからまわりましょうか?ルートはおまかせしちゃっていいですか?」


この要望にうんと応えると完全にプレイヤー主体の探索ができるようになるっぽい。もちろんYESだ。


「うん、いいけど、欲しいドロップアイテムとかあるなら───」「納得がいきません!」


開始待ちのなかに、声を荒げて教師にくってかかる生徒がいた。

おう、なんだろうキラキラしている。やたらと美形の少年が騒いでいた。


「しかし、フォルトゥナー君・・・」

「なんで王族である僕の相方がこんな程度の低い冒険者なんですかっ。これではまたしっぱ・・・ううんっ!」


金髪碧眼でちょっとショタの入ったキラキラ美少年は周囲を見回して何かを吟味している。あ、こっち見た?


「そうですね、一番強そうな・・・あの冒険者を付けてください」

「フォルトゥナー君、それは無茶というものだよ、すでにペアは組まれているのだからね」

「ではお願いしましょう。ええとそこの君、庶民だな?君と僕の冒険者を変えてくれ。わかるな?」


どうやら変えろと言われている冒険者はわたしらしい。相方であるメディアちゃんに詰め寄るキラショタに、メディアちゃんはたじたじである。


「は、はい・・・」

「よし、学園長。交渉により許可を得たぞ。これで文句はないですね」

「う、うむ。そういうことであれば仕方ない。冒険者の方もよろしいですかな?」


えぇ~、ちょっとどうなんだ、と困り顔のわたしとは対照に、うれしそうに許諾しているのはキラショタの相方の冒険者だ。

”貴族の学生は注意だ”

そう教えてくれたゴンジョさんの教えは、他の冒険者たちも既に知っている事実だったらしい。




ルールをざっとおさらいしておこう。

まず今回のイベントはプレイヤー1と学生NPC1による探索イベント。

プレイヤーは学生を連れて探索できる。学生の課題を手伝うって理由でね。

課題は採集品20種類か、もしくはイベントマップの奥にいるボスを倒すことで成功になる。

これは個人の課題。学生全体の課題もある。

全体の課題は三つ、


課題を達成した学生が全体の半分を超えること。


ボスの討伐パーティーが10を超えること。


共有されるマップの探索度が80%を超えること。


だ。まぁ学生の、と言いつつもプレイヤーに課されたミッションがこれにあたる。

イベント日数は二日。明日の22時まで。

それまでにこのうちの二つを達成していればミッション成功、三つならミッション大成功として参加プレイヤーにイベント報酬が配られる。


さて、それとは別に”ランダムボックス”というおまけ要素もある。

モンスターを倒したときに希にドロップとして、もしくはイベントエリアで拾った採集品を100個、イベント広場の教師に納品すると1箱もらえるものだ。

わたしはこれを目当てに参加したのだけれども・・・雲行きが怪しくなってきたぞー?




「じゃあ行くぞ、冒険者。行先は私が決めるがいいよな。・・・冒険者?」

「・・・・・・シィリエです。いいですけど」


納得いかない部分はあるがまぁいい。

強い人がいいって言うならわたしの斜め前あたりで「俺レベル50なんだぜ。すげぇだろ」とか自慢していた馬ヘッドの冒険者を選んでほしかった

とか

メディアちゃんは別れるときにすまなそうにしてたのに新しい相方ともう意気投合している

とか

いろいろあるけどね。

まぁ!いいよね!


「そうか。なら行くぞシィリエ。私はこの課題を失敗に終わらせるつもりはない。貴様もそのつもりで精進しろよ?」


ぐぬぬ。ふー。


あきらめて前を歩く彼についていくことにした。

まずは森だ。順当に素材採集から始めるようだ。


「む、みつけたぞ。あれだ冒険者」

「あ。ですね」

「・・・・・・ほらあれ」

「はい」

「早くしろよ愚図だな」


・・・・・・え?わたしが採るの?

君の課題じゃないの?

という疑問は意味がなかった。

流石お貴族様。自分の手を汚さず下々の手を使って採集するらしい。・・・え、今後も全部わたしが採るのかな?


はい。全部採らされました。

植物とか木の実とか花とかモンスターの牙とか肉とか。

いくつか種類もあるので森フィールドで手に入るのはそろそろ出そろったと思う。

全部で12種類に及んだ。

・・・足りないな。あと8種類足りない。

そうなるとあとあるのはマップの中央の小山に開いた穴。洞窟マップの中だろう。

ダンジョンというには小さいけれど立派なダンジョンなんだそうで、あの奥にはボスもいるらしい。

続きは明日やることになった。




「いやー・・・イライラするクソガキだったわ!」


冒険者ギルドの併設されている食事処だ。


「ははは、さっそく洗礼を受けたみたいだな」

「いやもうわがままだったらないよ!?あれ拾え、そこ登れ、こっちはいやだ、あっちがいい。そんなんばっかりでさぁ、やったのと言えばフィールドのモンスターに過剰な火力の魔術を撃って自慢することだけですよ!子供かと!」

「まぁまぁ。これあげるから落ち着きなよ」


愚痴の相手はギルドに入り浸っているゴンジョルノだ。今日のクエストを受けた冒険者たちは、みんな何かしらの話題をもってここで駄弁っていた。


「おうおう、見てたぜー、銀月の。おめぇさん│あの(・・)王子に目ェつけられたようだな」

「まじか、銀月があいつを引いたのかっ」

「わはは、そいつは厄日だねぇ」

「えぇっ、何?どゆこと?」

「なぁ。有名だよなぁ」

「あぁ。ハズレ王子ってやつだな」

「ハズレ王子・・・」


聞きもしないのに教えてくれたことによると、あの王子はプライドが高く、他者を蔑んで無茶ばかり言うために冒険者たちからのみならず、学園の生徒たちからも距離をとられているらしい。

昼間みたいなわがままは日常茶飯事。からまれた人は運が悪かったとあきらめて、王子が満足するまでつきあい、他に迷惑が被弾しないように生け贄になるのが暗黙のルールだとか。


なるほど、学園長とやらも王子の言うままだったのはそういうことか。


今回はわたしが生け贄らしい。


「あの王子は嫌われててなぁ。去年の課外授業も冒険者のリタイアで課題失敗してるんだぜ」

「その前の年もだ。なぁ!」


二年連続で失敗か。だから今年は特に強そうな冒険者を求めたってことだね。

銀月もさっさとリタイアしちまいなよ、という声に曖昧な返事を返しておく。


イライラはするが、もう課題の半分は終わってる。あと明日付き合えば終わりなのだ。それまではやろうかな。

それにまぁ、三年連続ってのもかわいそうだしね。


などと、その時のわたしはのほほんと考えていた。


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