迷いの森だよ!
■ナークタリア カイナ町にいた領主代行兼ギルド長のエルフ。シシャナク領との間に争いを起こしたことで罰をうけている。
森を進むと森だけど、その様子が少し変わった。
背の高いクリスマスツリーみたいな木々が多くなってきた。針葉樹林である。
ゲームなので強い痛みや暑さ、寒さというのはそんなに感じない。けどこのマップに入ったあたりでちょっとだけ寒く感じはじめていた。
「遠くに山が二つ見えるね。片方は雪山だし、あったかい装備をそろえた方がいいかも」
サラマンダー装備も悪くはないが火属性耐性なので。水とか凍り属性の耐性装備がほしいところだ。
ただ、もう片方の山には雪がない。山頂から煙が登っていて活火山の様相があった。
「あっちは火属性耐性がいるっぽい。おもしろいなー」
まだだいぶ距離があるのだが、このまま北に進めばあれらの山のふもとに到着するだろう。山を攻略するためにふもと辺りに村があってくれるとうれしい。
森には狼とトロールと鹿が出る。
※フォレストウルフを倒しました
※フォレストウルフを倒しました
※フォレストウルフを倒しました
※フォレストウルフを倒しました
※ウルフ肉
※ウルフ肉
※ウルフ肉
※ウルフ肉
※森狼の毛皮
※森狼の毛皮
※森狼の毛皮
※森狼の牙
※トロールを倒しました
※トロールを倒しました
※硬木のこん棒
※蛮族の腰蓑
※フォレストカリブーを倒しました
※フォレストカリブーを倒しました
※フォレストカリブーを倒しました
※シカ肉
※シカ肉
※トナカイの角
※スノーエルクを倒しました
※霜降りシカ肉
※ヘラ鹿の角
※ヘラ鹿の毛皮
食料が出るのがいいね!
・・・
ここに来てもう何日になるか。安全ではない場所でのログアウトにも慣れたものである。
マップを見ながら森を北上するんだけど、山に到達するより前から木々の間に霧が漂い始める。
これがなかなかの濃霧になりマップが機能しなくなるのだ。
マップ名は”迷いの大森林”。
迷子になっているうちに世間ではイベントが始まり、そして終わっていた。
今日は心持ち東側から攻めてみることにした。行けども行けども森ばかり。たまに木に登ってみても霧の中では方向を確認できない。霧が薄い時ならなんとか太陽の位置がわかるなーくらいだ。
いっそ森を燃やしてみようかと思ったのだけど燃えたのはごく一部の範囲だけだ。湿度が高いのかろくに燃えなかった。
東に行くにつれて霧が晴れてくる。
「道・・・?」
たぶん道だね。砂利などを撒いて作ったらしい人工的な道があった。
あまり使われていないのか草に埋もれていたけど。
「お、村だ。集落かな」
道なりに進むと、丸太を連ねた柵で外側を囲った集落っぽい場所を発見した。
「何者だ!」
「冒険者だよー」
二週間ぶりの人里は良いねぇ。おじゃましますと村?に入ろうとしたら門番に止められた。
門番は耳の長い長耳族。・・・エルフだ。
「ここはエルフの国、リーフリット精霊国だ。何用で訪れた?」
「え?迷子になってただけだけど」
「・・・・・・そうか。まぁよくあることなので仕方ないが。紹介状などがない者は東に周れ。外住みの集落がある」
よくわからないけどわかった。
言われるままに柵をたどって東に移動する。と、さっきまでの柵よりも低い柵で囲まれた集落が見えてきた。
そこにも門番がいるがエルフではない。人族の門番だった。
「おう。人か、いやハーフエルフか。あんたもエルフと商売にきたのかい?ここはエルフに許可された商売特区だ。拠点になる場所はねぇから死に戻りだけは気をつけろよ」
特に検査もなくすんなりと門を通してもらえる。
なるほど、ここには商人とその護衛、あとはその商人と交渉するエルフなんかが集まる場所らしい。
人里にやってきたうれしさからエルフの売り子が広げている露店を眺める。
おお、布だ。織物だ。
そういやエルフは布製品が良いって言われてたな。
高級な布はサラマンダーの革よりも高価な値段がつけられている。うーんほしいなぁ。
とりあえず貯まりに貯まった毛皮が売れないか交渉を・・・というところで何やら人がガシャガシャ音を立てて現れる。
鎧を着たエルフの兵士だ。10人ほどだろうか、わたしを囲って武器を突き付けていた。
「”銀色の月”だな?貴様には国際犯罪の疑いがかけられている。抵抗せずにいっしょに来てもらおうか!」
えー?
兵士たちに両腕を拘束され、高い柵の中に連れていかれる。おお、エルフの国に入れてしまった?不本意な入り方だけど。
「この者の死刑を求刑いたします!!」
ばばーん
知ってた。人を国際犯罪うんぬんにかけてくれやがったエルフと言えばこいつしか思い浮かばない。
そう
カイナ町のギルド長であり、領主代行をしていたクソエルフである!
「・・・・・・まぁ待てナークタリアよ。そなたはこの者を害そうとしたわけではなかったが、たまたま害することになった。それを恨みに思ったこの者が自分を殺したはずだと言ったな。それは証明できることか?」
「私の感情がそう言っております!」
冒険者ギルドでクソエルフに殺されたわたしは、街中で見つけたクソエルフを弓矢で狙撃して殺した。復帰したクソエルフは犯人が誰かはしらないまま、わたしに対する好感度が急激に下がっていたことで狙撃の犯人だと判断したわけだ。
「感情。」
「そうでございます!」
木と織物で飾られた、質素な王宮の王の御前でクソエルフは声高らかにわたしを糾弾する。
クソエルフ顔真っ赤だな!
しかしそれを聞かされる王とその臣下たちは困惑が隠せない。だって理由が感情ではね。子供の喧嘩じゃないんだから。
「そのうえ、その者は私を嵌めてシシャナク伯爵に攻撃をさせたのです!」
「ほう?」
「私の精霊が伯爵の孫を攻撃したのは全部っ、その娘がそうなるように私の感情を操作したからなのです!」
「感情。」
王様はため息をつく。エルフの王は若い。いや、たぶんそれなりの年齢なのだろう、話し方なんかは年を召した感じもあるにはあるが、けれど長寿で知られるエルフ。王になるには若く見えるね。
「もうそなたは黙っていろ。それで。そちらの、そなたの言い分もあるようなら聞きたい」
「冤罪だ!」
「・・・・・・これは両方頭がいたい案件なのでは・・・?」
なにやら臣下とヒソヒソされるが大丈夫だ。わたしはわたしの無実を知っている!
「そこのクソエルフに殺されて、仕返しするよね。そしたら伯爵さん、シシャナクの伯爵さんとの話し合いの場にそのクソエルフがきたんだよね。クソエルフ、いきなり精霊を召喚して伯爵さんのお孫さんを焼き殺したの。たぶん精霊に『女を殺せ!』って命令したんだと思う。そしたらその場に女はわたしと伯爵のお孫さんしかいないわけでしょ?、精霊は二人のどっちをクソエルフが殺せって言ったかわからないから、両方狙って殺したんだと思う。それで伯爵さんとは完全に敵対しちゃって戦争になったんだよ」
「ふむ。戦争のきっかけを、その阿呆が起こしたということか」
「だよ」
クソエルフは青い顔で反論しようとするが、クソエルフの後ろについていた兵士エルフに抑えられ、発言をさえぎられる。
「・・・戦争はどうなった?」
「伯爵さんが負けて、あとからやってきた王国の王子様に処断されちゃったよ。でもそのクソエルフも戦争を起こした犯人だってことで、王子様に王都で裁判にかけるって連れていかれたよ」
「なるほどな」
王様はクソエルフに視線を向ける。
「帰国を命じられたと言っていたが国外追放だったか。どうも貴様の言には信頼がおけぬ。今一度聞き取りを行うからしばらく牢屋に入れておけ」
わーいざまぁ。
弁明しようと躍起になっているクソエルフを兵士が連れて行こうとする。しばらく冷や飯でも食べているといいさ!
わたしはお金をかせいで布を買おう。転職用の代金も集めないとだしなぁ
「そ、その娘はエルフを”短小”とののしっておりました!”種無し”とも!」
ザワ、と空気が変わる。
種無しって言ったっけ?短小は言ったような気もしなくもない。あまり覚えてないな。
「なん・・・だと?」
王様も怖い顔をしている。
え?なんだろう。怒ってる?
「ほう。娘、言ったのか?」
「えーと、言ったような、覚えはありますね」
早めにごめんなさいしよう。早いうちに謝るのがことを大きくしない処世術だ。
「ごめんなさい?」
「うむ。ゴメンですめば法律はいらぬのだぞ」
あんたがそれを言うのかよ。法律なんて思いのままだろうに。
あれー?と困惑するうちにわたしの罪状が読み上げられる。
国家侮辱罪。
どうやらわたしの言葉はエルフの繊細な部分をいたく刺激する言葉だったようで。
10年の禁固刑が決まった。
おい。




