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公爵令嬢は転生したい  作者: 中兎 伊都紗
第一章 公爵令嬢は転生したい(第5部 風の国)
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第74話 公爵令嬢はバレたくない

ーコンサート当日。


 馬車でアレーナ・ディ・ヴェローナへ向かう。その建物は大理石で出来た円形の建物だ。屋根はなく、ステージを中心に観客席が円形に用意されている。

 ステージの端に、巨大な魔道具フォト―が置かれ、遠くに座った人でも王女の様子が見えるよう工夫されており、フォト―の後ろにある席は、座れないようになっていた。円形の観客席の3/4を使用してコンサートを開くようだ。夕刻から始まるコンサートに向けて着々と準備が進められていた。


 「王女様のおなーりー!」


 会場で護衛している騎士が叫び、門が開かれる。会場の中ではなく、控え室へ通された。


「お嬢様、失礼します」


 王女としての服装ではなく、コンサート用の服を着させられ、化粧をする。

 最後に口紅を塗られる時は、やはりちょっと緊張してしまう。


「お嬢様、とてもキレイです」


「ありがとう、ルル」


 魔道具フォト―の裏側へ移動し、少しだけ会場の中を覗く。民衆はコンサートが楽しみで湧きたっているかと思ったが、目が虚ろな者や下を向いている者、楽しそうな顔を浮かべているがどこかぎこちない者等、色々な人相が入り混じっていた。終戦したとはいえ心に爪痕がまだ残っているようだ。



「みんな、いくわよー!」

「「「「「「「おー!」」」」」」」



 ドリアド達が右手を重ね合わせ円陣を組んでいる。光の精霊も一緒だ。私も混ぜてぇ。


「皆様、準備はよろしいでしょうか」


「はい、大丈夫です」


 さりげなく円陣に混ざろうとしたが呼び止められてしまった。

 背中に頑丈で見えにくい紐をつけられる。


「いきますよ」


「あぁ」

「「はーい」」

「ふふ」

「うむ」

「…」


 サラマンディア以外の全員がそれぞれ同時返事をして、真っ暗闇のステージへ上がる。


音楽が真っ暗闇の中からなり始める。

ドリアドの頭上に光の精霊が丸い光として現れ、ゆっくりと舞い落ちる。

地面に光がおちた瞬間、ステージにはおびただしいライトが精霊達に注がれ、踊りが始まる。


 王女ではない者の登場に、最初戸惑っていた民衆も、目を奪われ離せなくなるほどの美しい踊りと妖精達の姿に観客達は息をのむ。



「もっと笑ってほしいの」

「「君を笑顔にするのは僕達だ」」

「笑顔を俺だけに見せて」

「ずっとそのまま笑ってて」


 曲の間奏に皆のセリフが入る。背筋というや耳がぞわぞわとしてしまった。決して悪い意味ではない。たぶん。


「「ギャアアアアアアアアア」」


 貴婦人や子女のあられもない歓声があがる。あぁ、やっぱりぞわぞわする人は何人かいたようだ。私も鳥肌が立った。サラマンディアが人前でセリフを言うのにも驚きだが、アンディーンの最後のセリフが異様に色っぽくてなんだかいつものいじられアンディーンが遠くにいってしまった気がした。なんだか寂しい気持ちになってしまった。腹いせに歌が終わった後、セリフを真似していじってやる。



 前座で大盛り上がりとなってしまった会場の空気を偽物の私が登場して壊してしまわないか不安になる。昨日までは緊張や不安はなかったのに、ここにきて心臓の音がどんどん早くなる。


「フィナリーヌ様、いきますよ」


 ひえええぇ。深呼吸をして、呼吸を整える。まずは風球で浮いた状態で登場し、ゆっくりステージにおりて歌う。1曲目は王女が作曲した内戦の少し悲しい曲だ。録音も流れるのできっとバレないだろう。


風が吹く木陰で隠れて泣いてる

通り過ぎる人々 見て見ぬふりをする

父の死を讃えて奏でる歌たち

帰らぬ人の声に涙がおちた


死なないで どんなに叫んでも

赤い血は

溢れて止まらない


温かな心に残された

幸せの記憶はるか

とこしえの幸せをねがう

=


止めてくれと縋る民草の声を

無視して正義を語り燃やし進む

母の死を讃えて奏でる声たち

胸の音激しくかきならして


悲しみは憎しみしかうまぬ

それがわからぬひと

もう皆いなくなる


温かな心が残された

幸せの記憶はるかすぎていく

始まりのリズム



 歌い終わった後、会場はとても静かになる。一斉に眩しい光に照らされる。



「みなさん、本日は起こし頂きありがとうございます。内戦が終わって数年経ちましたが、まだまだ各地に爪痕を残し、癒えていない方も多いでしょう。皆さんが少しでも元気になってくれるように、歌います」



 去年の音声の使いまわしだろうか。王女の声が会場に響く。

 次の曲は、空中で横移動する曲だ。ワイヤーにぶら下がり自由に飛んでいるように見せる。空中で踊るのは少し難しい。手の振り付けを思い出しながら踊る。



 曲の途中で、短剣が飛んでくる。おそらく貴族派残党の攻撃だろう。ドリアドやアンディーン、サラマンディア、ミノム・グノム達が剣をはじく。黒い服で身を纏ったルルが短剣を回収している。攻撃の出所を執事長が一人ずつ倒していた。


 周りの観客はパフォーマンスの一種だと思い、精霊やルル達の芸当に拍手をしている。バックダンサーというかもはやメインという感じだ。

 2曲目の終盤で、ステージに戻りながら舞い踊った時、一つの短剣が分身し、いくつもの残像を作り出す。気を取られてしまった精霊達とルルは後ろからの本命に一瞬反応が遅れてしまい、剣が通りすぎる。その通りすぎた剣は宙づりの紐とウィッグを切断し、金髪を露わにした。


「はじまりいいいぃぃぃ」


 歌の途中だったため、とんでもない声が出てしまった。風球の詠唱は間に合わないと思い目を瞑る。


「風よ、大空に高く舞い、羽ばたけ。風羽ウィンドフェザー


どこからともなく声が聞こえ、体が再び宙に浮かび、ゆっくり地面に降りる。

 コンサート会場の真ん中に落下し、人々が奇異な目で見てくる。ウィッグもとれてしまい、王女でないことがバレた。

 照明が一気に落とされ、会場は闇に包まれる。

 

「王女が落ちた」

「いやあれは王女じゃない!」




主人公所持金:7銀貨59銅貨

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