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公爵令嬢は転生したい  作者: 中兎 伊都紗
第一章 公爵令嬢は転生したい(第5部 風の国)
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第73話 公爵令嬢は踊りたい

ー翌日


「さて、踊りの練習ですが、音楽に合わせてポーズを繰り返して頂きます」


「はい」


「ワン、ツー、スリー、フォー。ワン、ツー、スリー、フォー。」


 執事長の拍手に合わせて、ポーズを取る。社交ダンスのステップやポーズと全く違う踊りは少し難しい。


「素晴らしいです。まだ始めて間もないのに、ステップのタイミングは完璧です」


 リズムに合わせて動くことは出来ているようだ。社交ダンスのステップがいきているのかもしれない。


「しかし、キレがありません。まだ踊らされているという感じです。手の先、足の先に気持ちがこもっていません」


 執事長が何を言っているか全然分からない。手や足に気持ちがこもるとはどういう状況だろうか。


「見本を見せます」


 執事長が踊ってみせてくれる。両手の指をピンッと立て、口元に持っていく。女性らしく腰を少しまげ、こしょこしょ話をしているようなモーションを取る。

 男性がやっているのに、女性の幻が見える。


「フィーナ、精霊達が踊ってみたいと言っておる」


 誰が言ってるんだ?サラマンディアは踊るイメージ全くないけど……。とりあえず全員の精霊を呼び出す。踊るつもりが無い精霊は出てこないだろう。


「「僕達、踊れるよ~!」」


 グノムとミノムの体が大きくなって出てきた。私よりは頭一つ分小さいが、少年くらいの身長をしている。力が少しは戻ったのだろうか。

 精霊達は全員出てきた。そしてなぜか黒い服で統一されている。ドリアドが土の国で貰っていた全身黒い服だ。

 男性姿のドリアドを真ん中に、アンディーンとサラマンディアがドリアドの肩に手を置き、その横にグノムとミノムが立膝で座り込む。


僕達は 迷いながら

今を生きて、生きていく


失うと分かっていても、

気持ちを止めることはできない


永遠に続く退屈を終わらせた君は

誰よりも特別な人となった。

触れば壊れてしまうあやふやな関係

この関係を壊したい

いえ、このまま続けたい


君と遊ぶこの時間を

君と二人きりで話す時間を

とてもとても大切にしたいんだ


君の笑顔をいつも見せてほしい。

君の笑顔は、この先の僕達の支えになる



僕達は 生きるほど

何かを得て、そして失っていく


失うと分かっていても、

歩みをやめることはできない


もう出会ってしまった

気づいてしまった

この気持ちをあなたにも知ってほしい

いえ、知らないでほしい

君は僕達とは違う時間軸で生きている


君を見送る悲しさを

取り残される寂しさを

また味わうのは嫌なんだ


なにより君を心配させたくない

最後の時は、笑っていてほしいから



 ドリアドを中心に歌とダンスを繰り広げる。衣装の統一感とポーズを決めるタイミングが完全に一致しており、目を離すことができなかった。ドリアドの気持ちを歌ったものなのか、声・ダンスに気持ちがこもっていた。

 手や足に気持ちがこもるとはこういうことなのだろう。


「素晴らしい!!息の合った歌、踊り。途中で一人ずつセリフをいれるともっと良いかもしれません。ぜひコンサートの前座をして頂きたい」


 執事長が拍手喝采で褒め称え、前座までお願いしている。


「いいわよぉ」


 ドリアドが中心になって答える。さきほどまですごくカッコイイ声で歌っていたのに、オカマボイスになって残念だ。

 執事長とドリアドで、コンサートの打ち合わせがはじまる。


 その隣で、ドリアド達の真似をして踊ってみる。腰づかいや手と足を連動させた動きがやはり難しい。


「フィナリーヌ様の踊りは女性向けです。ドリアド様達の踊りを真似するのはあまりよくないでしょう」


 執事長に注意された。





ー3日後。


「フィナリーヌ様、作詞の進捗はいかがでしょうか」


 練習中に執事長から質問された。正直全然進んでいない。夜ご飯の後は、踊りや歌詞の暗記で精一杯だ。


「い、いえ。まだ」


「出来れば明日までに完成させていただきたいのですが」


 明日までは到底無理だ。


「作詞したことないので、何を書けばよいのか……」


「恋人に送った手紙やポエムをそのまま書いていただいても構いません」


 いや、それただの公開処刑。恥ずかしすぎるわ。


「予想よりもダンスや歌の習得ができているので、本日は作詞する時間にしましょう」


 急遽、練習ではなく作詞の時間となった。


「ドリアド」


 ドリアドを呼び出して、初日に歌っていた歌をどのように作ったか聞いてみる。


「作詞のやり方おしえて。あの歌はドリアドの作詞でしょ?」


「そうねぇ。一言でまとめると頭に浮かんだことを書けばいいのよぉ」


 ドリアドがオカマ声で答える。ふむ頭には何も浮かばない。困ったものだ。


「そういえば、風の精霊ってどんな精霊が多いの?」


 王女は風の精霊の恋ポエムを書いていると言っていた気がする。


「すごく自由な精霊が多いわねぇ」


 精霊達は皆自由な気がする。それよりもっと自由ってことなのかな?イメージがわかない。


「自由に空をとんで、自由にどこかへいく。ふらふらしてるイメージね!」


 頭の中に浮かんだ印象が、色々な人に声をかけ、浮き名を流す男性を想像してしまった。せっかくなので、そのまま浮き名を流す男性に恋をしてしまった歌詞を頑張って書いてみよう。


曲名:WingLove


今日もあなたは風に吹かれて、どこへ行くの?

あの子のところ?その子のところ?

エスコートをしてくれたかと思えば、ダンスは別の子達と踊ってる

あの子とダンス?その子とダンス?

ふらふらしているあなた 今日こそ私が射止めるわ

あの子けちらし、その子けちらし


あなたと離れたくない

踊り続けて、狂いたい

一曲のダンスが永遠になる

そんな魔法をあなたにかけた

これでわたしとあなたはひとつになる



今日もあなたは自由に飛んで、どこへいくの?

あの子のところ?その子のところ?

明日デートの約束をしてるのに、他の子達を口説いてまわってる

あの子を口説く?この子を口説く?

ふらふらしているあなた それでも私はあなたが好き


あなたとずっとランデブー

歌い続けて、狂いたい

今この瞬間が永遠になる

そんな魔法をあなたにかけた

これでわたしとあなたはひとつになる


ずっとずっとランデブー

あの子もその子もランデブー

ずっとずっとランデブー

あなたとふたりでランデブー



テーマを絞って書いたら意外と作詞できてしまった。この歌詞にどのような曲がつくのか楽しみだ。できることなら明るい曲になってほしい。


 執事長に完成した歌詞を渡し、歌の練習へ戻った。



ーコンサート前日。


「本日は、明日の流れを実際に演習します」


 執事長の指示に精霊達と頷く。


「まずは前座であるドリアドさん達からステージにあがっていただきます。フィナリーヌ様が歌うときもバックダンサーとして踊ってください」


 バックダンサーにもなるとは驚きだ。


「そしてフィナリーヌ様、基本的には録音した音声が流れているため、マイクは飾りです。しかし新曲だけはフルで歌っていただきます。新曲が最大の見せ場なので、ミスのないようお願いします」


「録音!?ですか。今までの歌の暗記と練習は一体なんのために」


「機材トラブルに対応するためと、姫様の歌とフィーナ様の歌をまぜ、皆様に別人であることを気づかれないようにするための工夫です」


 たしかに声質が全然違うので、私が歌ったらばれてしまいそうだ。


「新曲はどうするんですか?私だけの声ですが」


「大丈夫です。貴族派に襲われて昏睡したことは民衆も知っています。病み上がりで声が少し変わったことにします」


「そんな大雑把な」


「姫様は曲によって声質を変えて歌われる方なので問題ありません」


「たしかに、曲によって受ける印象が変わりましたね」


 恋愛の曲と戦争の曲が多かったが、二つの曲はがらりと声質がかわっていた。


「それでは予行演習始めます」


 執事長の言葉に従い、コンサートに向けて練習を重ねた。


主人公所持金:7銀貨59銅貨

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