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公爵令嬢は転生したい  作者: 中兎 伊都紗
第一章 公爵令嬢は転生したい(第5部 風の国)
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第70話 公爵令嬢は隠したい

「やだぁ!アンディーン、あそこモザイクにしてるの!面白すぎぃ」


 ドリアドの笑った声が聞こえる。思ったよりも濃い湯気が立ち込め、皆の位置が分かりにくい。ミノムがどこにいるかは完全に分からなかった。

 椅子らしきところを手探りで探し、熱すぎないよう布が敷かれた椅子の上に腰をかける。


「フィーナ、俺いる」



 火の精霊サラマンディアは膝の上にタオルを置いていた。間違えてサラマンディアの上に腰かけてしまったようだ。


「ご、ご、ごめん」


 勢いよく立ち上がると胸に何かが入ってきた。


「フィーナ苦しいよ」


 ミノムは白い霧の宙に浮いていたようだ。


「ごごごごごめん」


 混浴だから視界を悪くしているのだろうが、見えなさ過ぎても困る!


「フィーナちゃん、こっちおいで」


 ドリアドの声がするほうへ行き、ドリアドの隣に座る。


「みて、アンディーンのここ。人間の下半身をみたことないからって、モザイクにしてるのよ!面白すぎじゃない?www」


 話す内容が気になってしまい、ついアンディーンの陰部に目を向けてしまう。

 陰部は突起した部分がなく、平らで、腰の部分は水が一定のリズムで波を打った時の綺麗な水模様になっていた。アンディーンはところどころやはり綺麗だ。


「ちょ、フィーナちゃん、見つめすぎぃwwアンディーン、困惑してるわよ」


「い、いやちがっ!水の模様が思ったより綺麗だなって」


「えー!!フィーナちゃん、こんなのでもいけちゃうの!!」


「ちがっ!そうじゃない!」


 少し熱い程度の蒸し風呂が一瞬、灼熱の温度に変わる。


「あつっ」


 自分の体が焦って火照ったのもあるかもしれないが、水蒸気が確実に温度が上がった気がした。


「僕を無視するなー!!」


 涙目になりながら、グノムも入ってきた。


「皆入ってきたから、今から我慢大会ね!最初に出た人は、皆の言うことを一つ聞くこと!」


「「「「はーい」」」」」


ミノムの言葉に皆で同意する。熱い蒸し風呂に10分も我慢するのは大変そうだ。


「フィーナとサラマンディア、蒸し風呂でタオルはダメだよ」


ミノムにタオルをもっていかれてしまった。慌てて大事なところを手で隠す。


「フィーナちゃん、隠す必要ないじゃない。こんなに良い胸してるんだから」


ドリアドに下から乳を持ち上げられ、揺らされる。


「ひゃっ」


「そうだぞ。恥ずかしがることはない。既に何度か水浴びも一緒にしたではないか」


アンディーンは堂々としていればよいと言ってくる。男女の境が無い精霊からすれば人間がなぜ体の一部を隠して生活しているか分からなくても仕方がない。

 再度、温度が灼熱に変わった気がした。


「お姉さん、服とか脱いで入ってね~」


 部屋の外から、店員の声がした。グノムを除く、5人分の料金で支払いをしたので、もう一人入ってきてしまったようだ。男性ではなさそうで良かった。グノム分の支払いをしていないが、人間ではないので見逃してほしい。

 女性らしき人影が入り、すぐ近くの椅子へ座る。


「皆、人様が入ってきたから、うるさくしたらダメだよ」


 精霊達に言い聞かせる。


「構いませんよ、楽しそうな声が外まで聞こえておりました。私も混ぜていただけると嬉しいです。フィナリーヌ様」


 気を使って言ってくれた言葉だとしてもありがた……。


 今フィーナではなく、フィナリーヌと言われた気がする。何故名前を知っているのだろうか。

 熱い空気が冷えたのか、白い霧のモヤが少しだけ晴れる。


「ルル!」


「祭りの日に抜け出すと思っていましたよ。お嬢様」


 行動を把握されている。さすが専属侍女だ。



 蒸し風呂を出た後は、屋台が並ぶ通りを食べ歩きして、祭りのメインイベントである花火を待つ。


「皆は花火見たことある?」


「「僕達あるよ」」


 土の精霊達は見たことがあるらしい。花火は魔道具で作られた土の国の産物だからだろうか。


「数百年前の花火とはくらべものにならないと思うから、楽しみにしてて!」


 花火がよく見えそうな、高い建物が無いところを探して歩く。子どもの頃のおぼろげな記憶だが、坂を上った裏道の広場から見ると、花火の全体像が見えた思い出がある。


ヒュルヒュルヒューーーーーー、どーーん!!ドン!


 花火が始まり、連続で上がる。はしゃいだ子ども達が勢いよく走り、腰にぶつかってきた。


「きゃっ」

「お嬢様」


 ルルが子どもとぶつからないように、腰に手を回し、体を寄せる。違う意味できゃっ、となる。


「「僕達盗られた!」」


 グノムとミノムが同時に叫ぶ。

 腰の小さな鞄を触る。ぶつかってきた少年のうちの誰かが、砂漠の薔薇を盗ったようだ。


「私が行きます」


 ルルが真っ先に向かう。人混みの中に子ども達は紛れ、どこにいるか分からない。私達の目を欺くためか、バラバラに散った。


「皆で探すよ」


 精霊たちは頷き、それぞれの子ども達を追いかける。



 砂漠の薔薇を盗んだと思われる、一人の少年を追いかける。人混みの中で風球が使えず早く進めない。空中に上がっても横の動きが遅いため、使えない。

 ルルは屋根の上に登り、7階から誰が盗んだのか全体を見ようとしていた。

 ルルの背後に男の影が現れる。ルルが簡単に背後を取られるなんて……。そしてなぜかルルは反撃することもなく、動かないままだ。


「お姉ちゃん、よそ見してるとこれ、売り飛ばしちゃうぜ」


 砂漠の薔薇を堂々と見せつけてきた少年は路地裏へ逃げていく。精霊達を紋へ呼び戻し、走って追いかける。

 追った先に一人の杖をついた紳士が見えた。紳士は少年を杖で転ばせ、砂漠の薔薇を回収する。

 黒いスーツに白い刺繍を入れ、ロングブーツを履き、縦長の帽子を被った紳士が砂漠の薔薇を返してくれた。刺繡入りの高価そうな服を身に着けているのでおそらく貴族だろう。周りに護衛がいないので、お忍びで祭りへ来ているのだろうか。


「お嬢さん、祭りの日はスリも多いから気を付けて」


 紳士は回収した砂漠の薔薇を布に包み、丁寧に返してくれた。


「ありがとうございます」


「そして、もう一つ。助けてもらったからとすぐに人を信用して、怪しい人間の間合いに入ってはいけないよ」


 紳士に睡眠薬草入りの水を飲まされ眠りについた。


「ル…ル…」

主人公所持金:7銀貨59銅貨

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