第69話 公爵令嬢は脱ぎたくない
3人で食べ歩きをしていると、ドリアド、アンディーン、サラマンディアが横に並んで前から歩いてきた。
ドリアドが女性の姿で真ん中にいるため、二人を侍らせているみたいだ。すれ違う男性の目線は皆、ドリアドの胸元に引き寄せられている。
「ちょっと!あなた今、あの人の胸見てたでしょ!!」
カップルの女性の一人が怒りだす。
「お前だって、その隣にいた赤い髪の男ガン見してただろうが」
「し、してないわよ!!」
3人はお祭りカップルの浅い関係を壊しながら歩いてきたようだ。
「アンディーン、次はあそこの雑貨店へ行きましょう」
「行かぬ」
アンディーンの言葉を無視して、ドリアドはアンディーンの腕を引っ張る。
凝視していたからか、ドリアドと目が合う。
「フィーナちゃん」
ドリアドが手を振ってきた。
視線を集めている3人のところに、い、行きたくない。無視するわけにはいかないので、合流する。
遠くからは見えなかったが、サラマンディアは右手に空になった木コップを持っていた。中身は赤い液体が少しついている。
ドリアドの右手の小指に、装飾品がはめられている。たしか右手小指にリングをはめると魅力を引き出すと言われていた気がする。これ以上魅力を引き出してどうするのか。
「見て~!これ~!アンディーンに買ってもらったのぉ!」
「え!それは意外」
意外過ぎる。アンディーンがドリアドに何かを買うなんて。
「ち、ちがう。無理やり買わされたのだ」
「フィーナちゃん嫉妬しなくても大丈夫よ、これは脅して買ってもらっただけだから!サラマンディアちゃんと寝てた時、フィーナちゃん火傷してたでしょ?熱を逃がすために、水がないところで、水魔法を使うのには限界があるとか言い訳して、フィーナちゃんの色々な所、冷やしてたのよぉ~。それを秘密にするって脅して買ってもらっちゃった」
う~ん、全然秘密に出来てない。
「そなた、言わぬと言ったではないか!!!」
アンディーンが怒りだす。
「どんな風に、冷やしたかは言ってないじゃない。そもそも火傷を冷やしたっていうのはフィーナちゃんも知ってることでしょ?ね?」
「う、うん」
火傷を冷やしてもらっていたのは知っている。ただどんな風に冷やしたのか隠されると気になってしまう。
「詳しく」
サラマンディアが真剣な眼差しといつもよりも冷たい言葉でドリアドに言い放つ。
「アンディーンから聞いてねぇ~」
サラマンディアの言葉をドリアドは軽く受け流す。
「そこのお嬢ちゃん達!仲良いね!土の国の文化を体験していかないか?仲の良い今の関係がうーんと!もっっっと!仲が深まるよ!」
そこには、灼熱地獄の蒸し風呂!と書かれていた。名前からしてかなり熱そうだ。
「僕、ここ行きたい!皆で熱いの我慢大会しよっ!!」
先ほど言っていた木の箱に入って熱い蒸気が出るところとは、蒸し風呂のことだったらしい。
「いいわよぉ。熱いだけなら嫌だけど蒸気があるなら私は大丈夫かな」
「俺も平気」
「わ、わたしも大丈夫だ」
「僕、熱いの嫌」
ドリアドはノリノリだ。サラマンディアも大丈夫らしい。アンディーンは震え声だ。グノムは嫌らしい。
「体験してみようかな」
「6人ずつの案内だ。一人5銅貨だ。時間は30分。脱衣所の隣が蒸し風呂でその隣が水風呂だ。あとは案内みながら入ってくれ」
案内された脱衣所へ入る。脱衣所には蒸し風呂のルールが書かれていた。
・蒸し風呂・水風呂へは、着衣を禁止する
・掛け湯で体を流してから入ること
・人数は6人まで
・蒸し風呂は男女共有スペースとする
・蒸し風呂10分、水風呂1分、外気浴5分がおススメ
男女が別れていない!?だと!?そんな馬鹿な。平民の文化でもお風呂は別別だった。土の国では混浴なのだろうか?
私以外はみんな精霊だ。服は着ているが人間の服を模した自身の力だから裸にはならないだろう。私だけ裸……すごく嫌……。
精霊達は案の定、そのまま掛け湯をして蒸し風呂へ入ろうとしている。
「ちょっと待った!!皆ちゃんとルール読んでないでしょ!」
ミノムが皆を止める。
「服のまま入ったらダメな場所なんだよ!服みんな消して!」
いやいや、消さなくて良い。そのままでよい。
ミノムは率先して服を消し、桶をプルプルと持ち上げ掛け湯をして、蒸し風呂に入る。
他の精霊達も真似をして、入っていった。
皆を見ないように、後ろを向いたまま立ち尽くす。
何度か水浴びをするときにアンディーンもいた……とはいえ、相手の服を脱いだ状態は見たことがない。いつも着衣していた。精霊達に裸の概念とかそういうのはあるのだろうか。
「ど、どうしよう」
「フィーナ、早く!我慢大会始められないよ」
ミノムにせかされ、とりあえず服を脱ぎ、タオルで大事なところを隠しながら、入る。
主人公所持金:7銀貨59銅貨(▲25銅貨 サウナ)




