★第58話 公爵令嬢は濁したい
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土の国の王都へ到着し、フィーナとしてウィッグと魔力阻害のローブを被る。
昼間に砂漠の薔薇を追ってきた刺客達は、金髪の高出力魔力を追いかけるため撒くことができるだろう。
暗殺部隊の刺客達との合流地点へ到着し、ルルの肩から降ろされ、地面にようやく足がつく。
刺客達は屋根の上で待機していた。人数が7人から14人に増えている。協力体制を築いたというのに穏やかではない。
「ルル様、フィーナ様。申し訳ございませんが、砂漠の薔薇の在り処を案内して頂けますか」
刺客のリーダーが屋根の上から降りて、真剣な眼差しで言葉を投げかけてくる。リーダー以外が一斉に短剣を抜き、私とルルに切っ先を向ける。
お願いというより、強制という感じだ。
「在り処をお伝えしてもいいでしょう。しかし先にご子息様の所へ案内して頂きます」
ルルの言葉を聞いたリーダーを除く13人が一斉に襲い掛かってくる。
ルルの腰にある針が一斉に飛び出し、両手の指の間に挟まれる。
「火よ、我が守りとなれ。火壁、アンディーン、サラマンディア、捕まえて」
魔法陣を取り出し、火壁でルルと私を囲み身を守る。
そしてアンディーンとサラマンディアを呼び、無力化するようお願いする。
隣にいたはずのルルは、火壁が出来る頃にはいなかった。
「その必要はないようだ」
アンディーンの言葉に、火壁を解除する。
13人が山積みになっていた。
7人の時は、寸刻で積みあがっていた山が、魔道靴を履くと瞬殺になったようだ。
「前回と比べて、近づいてきてくれたので、すぐに終わりました」
たしかに前回は四方八方に逃げる敵を追っていた……。とはいえ14人は末恐ろしい。味方でよかった。
(その台詞は将来的になるフラグに聞こえるのお)
光の精霊が不吉なことを言う。光の国の公女に子爵であるルルが敵対するわけがない。それにルルの実家は母の血縁だ。反逆の可能性は0だ。
刺客のリーダーと向き合い、今回の件について確認する。
「お兄様を逮捕した件、お話して頂けますか」
「再び、お嬢様に刃を向けた罪、贖って頂きますよ」
私とルルで、刺客のリーダーへ詰め寄る。
「申し訳ございません。ルル様、フィーナ様。
エドアルド様を逮捕したのは、手柄に目が眩んだ衛兵でして、私達とは別管轄の部隊故、阻止が出来ませんでした。今は城の地下牢に閉じ込められています。
また砂漠の薔薇を持っていると思われる金目で金髪ロングの女性について聞き込みをしておりましたら、『その女性は火や水の精霊と共にいた』と情報を得ました。複数属性の精霊と共にいる女性はなかなかおりません。すぐにフィーナ様だと分かりました。
この件を上の者に報告すると、砂漠の薔薇を持っていると思われるフィーナ様を死体となっても連れてこいと王命を受けまして、強襲した次第でございます」
「もとより、私は兄を、あなた達は砂漠の薔薇を。という協力関係だったはずですが、なぜ襲撃したのでしょうか?渡してほしいと言えば良いのでは?」
少し怒った口調で刺客のリーダーへ質問する。
「わ、渡して頂けたのでしょうか……?」
……。兄のお願いを反故にするのは少し考えてしまう。ただ兄が逮捕されて、拷問や処刑をされるくらいなら渡してしまいそうだ。
「あ、兄の無事と兄の判断を仰いだ上で、検討します」
抽象的な言葉で濁した。
「「ちょっと待った!!僕達を渡さないで!」」
手乗りサイズの精霊が二人出てきた。
二人ともキレイに澄んだ茶色の目をしている。砂漠の薔薇と同じ色だ。一人は釣り目でツンツンした表情をしている。もう一人は、同じくちょっと釣り目で、いたずらが好きそうな顔をしている。
髪色はツンツンそうな子が少し濃い茶色で、いたずら好きそうな子がくすんだ茶色だ。
「僕達、この鉱石が無くなったら消えるんだ!だから渡さないで!」
どうやら兄が言っていた精霊のようだ。
「やっと出てきたかのお。ミノム・グノム、今まで何していたんじゃ」
光の精霊が土の精霊に話しかける。
「僕達、100年前くらいに人間やドワーフにたくさん採掘されて、最後の一つになったんだ」
「採れなくなった僕達を人もドワーフも忘れていった!」
「「そしたら精霊として力が維持できなくなったんだ」」
ミノム、グノム、両方の順番で土の精霊が話す。グノムは人やドワーフが心底嫌になったのか、睨みつけるように話してくる。
たしかに利用するだけ利用して忘れられたら私も心底嫌になりそうだ。ドワーフ・人間め!なんたる無礼を!
「どうして、姿を現せるようになったのですか」
ミノムとグノムに質問する。
「君達のおかげだよ。土の国の人達、砂漠の薔薇について沢山話すようになったんだ」
「ふん。お礼とか言わないからな!」
「お礼なんてとんでもないです。ごめなんさいね、忘れてしまって」
「ふふ。グノムがね、お礼は言わないけど契約ならしてもいいって」
ミノムはいたずらな表情を浮かべ、答える。
「ぼ、ぼ、僕は契約するなんて一言も!」
「え?そうなの~。じゃあ僕がしちゃおっと」
「ミノムがするなら、僕もしておいてやる。僕達は一心同体だからな」
たしかに砂漠の薔薇を2輪の花が咲いているように見えるが、一つの鉱石だ。
「ふふ、こんなこと言っているけど、グノムは今まで誰とも契約したことないんだよ。僕はしたことあるけどね!」
ミノムはいたずらな表情を浮かべ、グノムは刺々しい表情のまま、両肩に乗ってきた。
「「魔力を少し貰うよ」」
両頬に甘いKISSではなく、少し噛まれた。チクッと痛い。ちょっと血が出た気がする。『キレイな薔薇には棘がある』というのは物理的な意味だったのか。
右手の紋に新しい模様が刻まれる。
「お嬢様、どなたと話されているのでしょうか?」
刺客のリーダーとルルは土の精霊達が見えていないようだ。
「血を飲んで、契約したから今はもう姿が見えるはずじゃ」
「初めまして、ルル。横断幕ありがとね」
土の精霊ミノムがルルに話しかける。
ん?血を飲んで姿が見えるようになったなら……
「ドリアド、あなた村の者たちに姿を見せる方法あったじゃない」
ドリアドが出てくる。
「フィーナちゃんのこと、大好きだけど女の子の血はいらないかな~って☆」
「紋に戻れ」
全く、なにが「星」だ。呆れて言葉が出ない。違う捉え方をすると、命掛けで己を貫くドリアドはある意味すごい。私だったら命がかかっていたらどんなに嫌いな人でも血くらいは飲む。
「土の精霊様、どうかお力をお貸しください」
刺客のリーダーが膝まづき、お願いする。
「ご子息様の解放が交換条件です。まずはあなた達の雇い主である王のところへ、案内しなさい」
「ルル様、承知しました」
刺客13人の針を抜き、解放し王宮まで道案内をしてもらうことになった。
刺客のリーダーは先に戻り、話をつけてくるようだ。
冒険者フィーナではなく、公爵令嬢として兄を釈放してもらうため王様へ会いに行く。こういう時は家名を使って有利に事を運ぶべきだ。
主人公所持金:15銀貨14銅貨




