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公爵令嬢は転生したい  作者: 中兎 伊都紗
第一章 公爵令嬢は転生したい(第4部:土の国)
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第57話 公爵令嬢は観戦したい

◇ 


 先程の金色の刺繍が入った豪華なソファーに戻り、子爵と話す。

 娘は専属の医者が状態を診断中だ。


「娘を助けていただき、ありがとうございます。娘が人の姿に戻ることができるなんてぇえ、う゛ぅ゛」


子爵は腰を90度にまげ、頭を下げながら、涙を流す。


「完全に治療したわけではありませんわ。もし完全に治したいなら聖女ポインセチアに依頼したほうがいいでしょう」


光の精霊が言っていたことを子爵にも伝える。


「聖女殿は……」


気まずい空気が流れる。

どうしたのだろうか?頼んだけど断られたのだろうか。


「魔人化を阻止して頂いただけでも十分でございます。この恩は一生忘れません……。お礼をさせて頂きたいのですが、アンソワ家の方を満足させられるお礼が出来るかどうか」


「高価な品物や金品は結構ですわ。今ある高級な茶菓子と紅茶で十分です。それからお酒も頂けたので十分ですわ」


ドリアドとアンディーンと一緒に紅茶を飲み、サラマンディアはお酒を飲む。サラマンディアの性格は落ち着いた冷静な雰囲気に戻っていた。


「それだけというわけには……」


「問題ありま……」


「お嬢様、ご無事でしょうかあぁ」


バリンッ!!


 叫びながらルルが侵入してきた。

 窓ガラスが割れて、部屋に破片が散らばる。

 ハイエナのボスはルルの着地点へ迷いなく飛び込み、右ストレートを繰り出す。

 流石のルルも空中で避けるのは難しかったのか、右ストレートを左手でディフェンスして受け止める。

 力を流すことができず、窓の外へ飛ばされる。

 飛ばされたルルを追って、ハイエナのボスも庭へ行く。


「あ、呼んだの忘れてた」


 ドリアドが小声で呟く。


 庭では、高度な肉弾戦が繰り広げられていた。


 男が右ストレートを繰り出すと、ルルは背後に男の首に回り針を刺す。

 首に刺さったはずの針が地面に落ちる。

 仕留めたと思いこんだルルの隙をついて、背後から男が左ストレートを繰り出す。

 ルルは後ろを向いたまま、右手にある針の側面で打撃をいなしつつ正面へ振り向く。

 右足で蹴りを繰り出し、左ストレートを繰り出して、空いている脇腹を狙う。

 蹴りが来るのを待っていたかのような表情で、ルルの蹴りよりも低い姿勢をとり、ルルの軸足となっている左足を払いのける。

 ルルは軸足となっている左足に力を入れて蹴り上げ、高く飛び、後方転回をして距離を取ろうとする。

 男はルルの着地点へ間合いを詰め、右拳に魔力を込め連続で殴打をする。

 たしか技名は


連続衝撃オンパレードインパクト


 男は声に出し、連続で殴打する。ダサい技名とか言っていたが、気に入っているようだ。


 連続殴打の一つが当たったのか、ルルは門がある方へ吹き飛ぶ。

 追い打ちをかけるため、ルルが飛んだ方へ男は距離を詰める。

 ルルも空中で態勢を整え、正面の門を蹴り、男の方へ飛び込む。


「私の為に、争わないでぇ!!」


 突如、ルルと男の真ん中に三つ編みを横に流した女性が立ちはだかる。

 勢いを殺しきれない男の拳とルルの針先が女性に当たる。


 豹変したサラマンディアと同じくらいの濃い魔力が三つ編みの女性を包む。 

 ルルと男の力は相殺され、突風が巻き起こる。


 白い髪が混ざった黒髪の女性は、目が赤かった。子爵の娘が戦いを止めたようだ。子爵と違い度胸がありすぎる。病み上がりとは思えない。魔人化した影響だろうか、魔力が通常よりも多くなっているようだ。


 お酒を飲んでいたサラマンディアに、突然お姫様抱っこをされて、2階から降り、ルルの前に立つ。

 

「◎△$♪×¥●&%#?!」


 やめて!お姫様抱っこは挙式を上げた時にするもので、未婚の貴族女性がしていいものではないわぁああああああ

 バタつき、何事もなかったかのように平然と自分の足で立つ。


「剣を納めよ、フィーナも砂漠の薔薇も無事だ」


 一緒に降りてきたアンディーンがその場を納めようとする。


「そうね。ルル駆け付けてくれてありがとう」


「申し訳ございません。男に攫われたと木板で伝言がありまして」


「ルルちゃん、ごめめん……!攫われたのは本当なんだけど、無事だったというか一件落着というか」


ドリアドが軽く謝まる。ごめめん…とは謝る気があるのだろうか。


「お嬢様、お知らせがあります!これを!」


ルルから渡されたのは1枚の紙切れだった。右上には号外と大きな文字で書かれている。


「魔鉱魔法学院の殺人犯エドアルド・エルリックを逮捕!!

 衛兵お手柄!潜伏場所へ突入し、無傷で確保!」


 紙面には、兄の写真を加工したものが掲載されていた。顎が二つに割れ、けつアゴとなり、目は釣り目になっている。名前は一緒だが、家名が違う。アンソワ家の名前を伏せて、刑を執行するための加工だろうか。

 生温かい汗が背中をつたい、冷たい風が吹き抜ける。

 日は傾き、地面が淀んだ橙色に変わる。


「ルル、刺客達との合流地点へ至急向かうわ」


「何かお急ぎのようですね」


 子爵の娘に声を掛けられる。


「えぇ。ご挨拶もせず去ることをお許しくださいませ」


 スカートの裾を掴み、軽く会釈する。  


「土の国の魔道具をお持ちください。何よりも速く駆け抜けることができるでしょう」


子爵の娘は二回手を叩く。

ルルと戦い、服装がより一層乱れた執事が自分と同じ靴を持ってくる。

渡された魔道具は靴に魔石が嵌められた物だった。

間合いに入り込む速さは、魔道具によるものだったようだ。


「このような貴重なものを頂いてもいいのでしょうか」


ルルが子爵の娘へ確認をする。


「かまいません。この魔道靴はもう魔石が持ちません。使用できてあと1回か2回です」


「そうですか。それでは遠慮なく頂きますわ」


魔道靴を履こうとしたらルルに俵担ぎをされた。


「きゃっ!」


「お嬢様、こちらのほうが早いので失礼します」


 ルルは子爵とその娘へ会釈をして、疾風のごとく走り出した。


「お嬢様、もう1点報告があります」


 ルルが走りながら話し掛けてきた。

 淑女らしからぬ体制に私は話す余裕がない。


「今から合流する刺客達の所属についてですが、紋章を調べたところ王宮の暗殺部隊だと思われます。学院の者達からの情報とも一致します」


「協力体制を築いていながら、兄を逮捕した理由が解せないわ」


「はい、ご子息様の件についてしっかりと聞き出しましょう」


ルルの目に強い光が灯り、口元が歪んだように見えた。

ルルの表情に背筋が凍る。この子、絶対何か企んでる。。。

主人公所持金:15銀貨14銅貨

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