第54話 公爵令嬢は誘き寄せたい
「いらっしゃいませー」
お店に入ると、ドリアドが試着を楽しんでいた。
「こっちとこっち、どっちが良いと思う?」
女性服を見ていると思っていたが、男性服をコーディネートしていた。
裾や胸元に刺繍が入った丈の長い黒外套、足のラインがでる黒いズボンと黒ブーツ。全部黒ってどうなの?と思ったが予想よりもカッコイイ。
ドリアドはアンディーンにも無理やり着せ、、二人ともとてもまぶしいです、はい。
「フィーナ!」
入店したことに気づいたドリアドが寄ってくる。
「ここの店主、黒よ」
ドリアドが肩に手を置きながら耳元で小さく囁く。
ドリアドの全身が黒過ぎて、何が黒なのか一瞬フリーズする。
「一緒に服をみましょ〜。フィーナに似合う服は、、これかな?」
「商品名:夜のランジェリー(黒)
価 格:80銅貨
効 能:〇〇補助 精力の出をよくします」
「服っていうか、それもはや下着!」
体に当てられた服は、黒い布切れ一枚を、首元でクロスさせたクロスホルタータイプの乳バンドと、刺繍のみでつくられたどこも隠せていない黒いショーツだ。
激しいツッコミをいれたら、アンディーンと目が合ってしまった。気まずい空気を醸し出し、すぐに逸らされた。
やめて、『そういう下着を着るのか』とかちょっと思った後に目が合って気まずくなって逸らしてしまう青春まっさかりの少年みたいな反応やめてえ。逆に気まずいから、いっそ堂々と見続け・・・るのもキモイから嫌だな、うん。
女心は複雑すぎた。
「ご鑑賞中に申し訳ございません。お客様へ特別にご案内したい商品がございます。奥の間へ来て頂いてもよろしいでしょうか」
店主にどう探りをいれようかとは全く考えていなかったが、店主のほうから接触してきてくれた。とても有難い。
「ぜひ、どんな商品かお聞かせください」
◇◇◇
奥の間にあるソファーに腰掛け、入れてもらったティーを飲む。
2人用のソファーに3人が座っているのでちょっと狭い。ドリアドは上品に座り、アンディーンは疲れているのか背もたれに寄りかかっている。
店主は、ドリアドとアンディーンは付き人だと思っていたのか、座ることに驚いていた。すみません、付き人では無いんです……。
「ご足労頂きありがとうございます。早速本題に入らせて頂きます」
店主は机の上に両手サイズの小さな箱を置く。箱の中には砂漠の薔薇が入っていた。
「エドアルド・アンソワ様よりお預かりした商品です。フィーナ又はフィナリーヌと名乗る者が来たら渡すよう仰せつかりました。保管料として金貨5枚頂きましたが、命を懸けるには安すぎる金額です。金貨3枚をお返ししますので、こちらをお持ち帰りください」
「兄がご迷惑をおかけしました」
「いいえ、こちらも引き受けたのに途中で投げ出すようなことをして申し訳ございません。ただ国と争いたい経営者はどこにもおりません。ご承知ください。また今後、砂漠の薔薇について聞かれた際は、こちらに矛先が向かないよう、光の国のフィーナリーヌ様へ渡したとお伝えさせて頂きます。差し出がましいとは存じますが、一刻も早く、土の国から出国したほうがよろしいかと助言させて頂きます」
「今まで保管して頂き、ありがとうございます。情報を流す際は、金髪ロングヘアの女性と言って情報を流すようお願いします」
変装用のウィッグを外し、金髪の姿になる。
店主は少し驚いた表情だったが、私の髪を見て納得した表情へと変わった
「承知しました」
「そして、この金貨3枚で店頭に飾られていた魔力感知阻害の黒マントを購入するわ」
追っ手がかかった時に、逃げられるよう高額なマントを購入する。
『商品名:夜の帳(女性用)
価 格:3金貨
効 果:魔力感知阻害 単一属性魔法無効』
「ありがとうございます。属性無効の効果がついた黒外套ですね。仕事を途中で放り出したお詫びといってはなんですが、お連れ様が先程見られていた服もご用意しましょうか」
「え!ほんとお!今後、男色家の美青年と出会ったときのために男性用の服も欲しいと思っていたのよね!ぜひお願いするわ」
ドリアドがすごく嬉しそうに答える。欲しい理由はナンセンスだが、ドリアドらしい。
「かしこまりました。少々お待ちください」
店主が品物を包んでいる間に作戦を立てる。
ドリアドに砂漠の薔薇と同じ形の木彫りを作成してもらい、砂漠の薔薇を持っているとアピールしながら、通りを歩く。砂漠の薔薇を狙ってきた刺客を片っ端から捕まえ、兄の居場所について聞く。
単純な作戦だが、砂漠の薔薇を欲しいと思っているならば狙わずにはいられないだろう。
店主から砂漠の薔薇、黒のマントやドリアドの黒衣装を受け取り、ウィッグを外したまま、店を出た。
◇
レンガの家が建ち並ぶ通りを歩いていると、甘いバターの香りが鼻をくすぐった。
「そろそろお昼にしよっか」
「ああ、そうしよう」
アンディーンが喜々として甘い香りのするカフェテラスへ入っていく。
誰もそのお店で食べるとは言ってないのだけれど、、、。
日除けのパラソルがあるテラス席へ座る。
爽やかな風が吹き抜け、気持ちの良い春を感じる。風と一緒に疲れも吹き飛んでいく。
机は少し大きな丸を描き、重量感がある鋼鉄素材で出来ていた。
優雅な曲線で描かれたアンティーク調の椅子は、エレガントな造形美を表現している。
メニュー表を見て、それぞれが食事を決めていく。
【メニュー】
食事……8銅貨
・ソーセージ5本
・ジャーマンポテト
・ライ麦パン
ケーキ1切……30銅貨
・バウムクーヘン
紅茶200cc……20銅貨
・クイーンズティー
・ダージリン
「ソーセージとかジャーマンポテトもあるみたいよぉ」
「私はこのバウムクーヘンを頂こう」
「すみません、ソーセージ、ポテト、パン、バウムクーヘンと食後にクイーンズティーをお願いします」
食事8×3=24銅貨、ケーキ30銅貨、紅茶20×3=60、銀貨1枚と銅貨14枚を支払う。
目立つように、砂漠の薔薇が入った箱を机の上であける。
「アンディーン、ドリアド、光の精霊、何人反応した?」
私の見える範囲だと5人は反応していた。
「7」
「8」
「6」
皆バラバラな人数で答える。
食事中に集まってくるのを待って、食後に人気のない路地裏へ誘いこみ捕まえるとしよう。
「何か、入ってるわ」
ドリアドが箱の底から白い紙切れを取り出す。
「親愛なるフィナへ
私を探すなと言っても、フィナは今頃探しているでしょう。探す途中に必ず目についた衣服店に入ると思い、この店に預けました。この鉱石は、どんな病をも治すと言われている砂漠の薔薇です。
友人は土の精霊より託されたと言っておりました。精霊との約束を守るため、命を賭して戦い守り抜きました。友人が精霊と交わした約束を守るためにも、砂漠の薔薇をアンソワ家へ持ち帰ってください。
兄も必ず後から帰ります。
P.S 会いに来たら怒ります」
簡略化された手紙が同封されていた。探すなとは言われてないが、早く家に帰れという気持ちが伝わってくる。お兄様が安全な状況かどうかも分からないまま帰れるはずがない。お兄様は分かってて書いてるのだろう。なんせ入店する衣服店まで予想されている。
食事を終え、お店から出る。
主人公所持金:15銀貨14銅貨(▲食事24銅貨、ケーキ30銅貨、紅茶60銅貨、銀貨1枚と銅貨14枚)




