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公爵令嬢は転生したい  作者: 中兎 伊都紗
第一章 公爵令嬢は転生したい(第4部:土の国)
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第50話 公爵令嬢は捜索したい

 噴水の先に広がる土の国の景色は、ゴシック様式で建てられたレンガの家が並んでいた。2から3階建てが多く、冒険者ギルドや仕事斡旋ギルドなどは7階建ての大きな建物となっていた。

 地面にもレンガが敷き詰められており、道は広く、馬車や人が行き来している。

 レンガ通りの奥には、ノイシュバンシュタイン城の屋根が見える。あれが王宮だろう。


 兄の留学先は、王都にある王立魔鉱魔法学院だ。馬車で数時間の距離だ。

 王都へ向かう馬車を探すため、レンガ通りを歩く。

 通りにあるお店は魔道具屋や鍛冶屋が多く、鉱石を使った武器や道具が豊富に取り揃えられていた。


 「号外ー!号外ー!」


 通りの真ん中で、叫びながら紙切れを配り歩く人がいた。人だかりになっていたため、気になり紙切れを貰いに行く。


「魔鉱魔法学院で殺人事件!

 昨日未明、王立魔鉱魔法学院で一人の生徒が殺害されていた。

 殺害したと思われる生徒は失踪。衛兵が追っているものの手掛かりなし」


 犯人像として兄のフォトーが載っていた。目はモザイクで隠されているものの、確実に兄だ。馬車を探している場合ではない。事情や状況を確認するためにも、学院まで走って向かうことにした。



 魔鉱魔法学院に入り、教師や生徒らしき人物に兄の居場所について聞く。

 兄の名前を出すと、なぜか目を背け話そうとしてくれない。しつこく聞いていると一人の教員から学院の敷地から出ていくように言われてしまった。抵抗しようとしたが、衛兵を呼ぶと脅され言われるがままに外へ出る。


「お兄様に何かあったらどうしよう……」


 太陽は沈み始めていた。気持ちも一緒に黄昏ていく。

 建物の陰に入ると、温度差のせいか体が冷え、血の気が引いていくようだった。


 手掛かりも情報もない状況でどのように兄を探せばいいか分からず、ただ呆然と通りを歩く。狭い路地へふらふら歩いていくと頭の横を短剣が通り過ぎ建物に突き刺さる。自分の無力さに打ちひしがれたいたからか、無意識的に体が反応し、突き刺さった短剣を抜いて、投げ返す。


 金属をはじく音が響き渡る。


 周りを見渡すと、黒い外套に身を包んだ怪しげな集団に囲まれていた。桜師匠の言う通り、本当に暴漢が多いようだ。気づかない振りをしてふらふらと歩き、人数を数える。

 屋根の上に2人、前に3人、後ろに2人。風球ウィンドボールで上空へ逃げようと思ったが、屋根の上に人がいては逃げきれない。さてどうしたものか。


 前にいるうちの一人が短剣を抜き、刃を光らせ突っ込んできた。


「火よ、いでよ。火球ファイアボール


 全員のマントの裾に、火をつけ外套が燃え上がる。

 暴漢達は、燃えた外套を捨てようと、視界を遮るように燃える外套を投げつけてきた。今がチャンスだと思った残りの暴漢達も一斉に襲いかかってくる。


 屋根にいる人間が降りれば、こちらの勝ちだ。風球ウィンドボールで上空に上がり逃げられる。隙をつくることでこうも上手くいくとは思わなかった。


「風よ、いでよ。風球ウィンドボール


 初級魔法の風球で空を飛び、高みの見物を決め込む。


「ドリアド、捕まえて」


 右手の紋が光り出し、木の精霊ドリアドが現れる。


「木よ、仇なす者を捉え、我が守りとなれ。木檻ウッドジェイル


地面から木が生え、一点に集まった刺客達がドリアドの檻に捕まる。なぜ襲ってきたか確認しようと、風球をゆっくり横移動させると、木にぶつかった。私も檻に入れられたようだ。


「ちょっと!ドリアド!なんで私も檻に入れてるのよ!!」


刺客達が一斉に短剣を投げてくる。


「刺すなら私を刺して/////」


ドリアドが私の前に立ちはだかり、盾となる。


「い、痛ったああい//」


ドリアドは歓喜の声をあげ、投げられた七つの短剣のうち六つは当たりに行き、一つの剣だけ避ける。避けられた一つの剣は容赦なく、私の太腿に刺さる。


再度、金属をはじく音が響き渡った。


「痛っ」


声で痛みを発したものの、実際には剣は刺さっておらず、痛みはなかった。


「ご無事ですか。お嬢様」


聞き慣れた声だったが、それよりも大事なことがあった。


「ドリアド!!なんで避けるのよ!わざと避けたでしょ!!」


「それはも、ち、ろ、ん。あの子が女だからよ。男の逸物以外は御免だわ」


「紋に戻れ」


命のやりとりの最中に呼んではいけない精霊だった。ドリアドを紋に戻したことで、木檻がなくなった。

 檻から解放された刺客達がその場から離れようと四方八方に散る。

 逃げた刺客達を黒い服、白いエプロンをつけた一人のメイドが追いかける。


寸刻で七人の気絶した男女が積みあがる。


「お嬢様、ご無事でなによりです」


「ありがとう。ルル」


ルルが戦っているところなんて初めて見た。強すぎて、敵いそうにない。このまま家まで強制連行される流れだろうか。


「お父様に頼まれて、来たのかしら」


念のため確認する。


「奥様よりお嬢様を常に守るよう、仰せつかっております」


「連れ戻しに来たわけじゃないのね」


「はい。常に傍で仕えるよう幼い頃からの命令を受けています」


ルルの黒い目が妖しく見えたのは、夕闇のせいだろうか。ダークブラウンの髪も夕闇に溶け、暗く見える。


「それは、、、光の国にいる間、ずっと一緒にいたってことかしら?」


「はい。惜しくも水竜討伐の際は、お嬢様を見失ってしまいその責務を果たせませんでしたが、それ以外のお出掛けの際は常に傍におりました」


どうやら四六時中ストーキングされていたようだ。町での情報がすべて伝わっていたのも頷ける。


「今回の件、お父様に報告するの少し待ってもらえないかしら」


「承知しました。この者達はどうしましょうか」


「とりあえず、手足を拘束してなぜ襲ってきたか確認しましょう」


両手両足を紐で結び、軽々しく持ち上げ逆さ吊りにする。ルルの動きは間違いなくプロの動きだ。

 人目につきにくい狭い路地だったが、念のため宿屋で聞き出すことにした。

 アンディーンを呼び、水檻に入れ宿屋まで運んでもらう。

主人公所持金:18銀貨28銅貨

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