★第49話 公爵令嬢は絶句したい
【イラスト注意】噴水前の桜師匠と白狐
「桜さん!無事だったんですね!」
桜師匠に駆け寄り、無事を確認する。どこも怪我が無さそうで胸をなでおろす。
「えぇと、無事だが……何かあったのか?どうしてフィーナがこんなところに……?」
「桜さんが事件に巻き込まれたと兄から手紙を貰って、心配で駆け付けたんです」
「うーん。とくに事件に巻き込まれた記憶はないかな?何度か、襲ってきた暴漢を撃退はしたけど」
どうやら自力で撃退したらしい。さすが師匠だ。お強い。
「撃退する時に兄を見かけませんでしたか?本当の私と同じ金髪で目は栗色なんですけど……」
桜師匠とは一緒に寝泊まりした仲なので、金髪の姿を見せている。
「襲われていた二人の学生のうち、一人がフィーナと同じ髪色だったかもしれない……。
すまない。ならず者を撃退した時にはもう、二人の姿は無かったんだ」
「おそらくそのうちの一人が兄だったのだと思います。助けて頂きありがとうございます」
「いや、お礼をされるようなことをしたわけじゃないよ。通り道の邪魔だっただけで」
道すがらに悪漢を倒し、人を助けるとはさすが師匠だ。
「キュー!」
白狐がこびを売るようなあざとらしい声で鳴く。
「そろそろご飯の時間だな。土の国を出る前に食事しようと思っていたんだ。フィーナも一緒に食べないか」
「はい!ぜひ一緒に食べましょ。白狐についてもお話聞きたいです」
戦闘中は『う゛ー』という低い魔獣のような声だったはずだが、何があったのか……。非常に気になる。
見た目も獣らしい見た目からデフォルメ化した可愛い見た目になっている。
「この子は、キュウちゃんだ!フィーナといた時は気絶していてな。
町を出た後、意識を取り戻してじゃれてきたんだ。可愛くて殺すことができず、それからずっと一緒にいる」
「どんな風にじゃれ合ってきたんですか?」
可愛い見た目に変化した理由あたりがすごく気になる。
「キューちゃんが最初に目覚めた時は、私の首に巻き付いていたんだ。
そのとき冷たい風が吹いて、首をキューと閉めて私を温めてくれたんだ。
嬉しくて沢山撫で撫でしていたら、再びキューちゃんは眠ってしまったけどね」
師匠、それは首を閉めて気絶させようとしたけど、撫でる圧力に負けてしまっただけでは……。
「次にキューちゃんが起きた時は、いきなり首から離れて走り出したんだ。
追いかけっこしたいのかと思って、私も全力で追いかけて捕まえた!
捕まえた後は沢山スリスリしたなぁ」
それは逃げようとしたのでは……。
「次に目を覚ました時は、暴漢に囲まれてて、白い霧を出して敵をかく乱してくれたんだ。
おかげで敵を全員みねうちで仕留めることが出来た。ただ敵から一撃を貰ったのかキューちゃんも伸びていたんだ。
暴漢め!こんなに可愛いキューちゃんを攻撃するとは許せん!」
それは師匠の攻撃が当たったからなのでは……。
「そのー、、キューちゃんは夜の間にいなくなったりしないんですか?」
私がキューちゃんなら絶対に夜の間に逃げる。
「夜は毎晩一緒に寝てるよ?私がいつも先に起きるけど、起きた時は必ず私の胸の中にいるかな」
キューちゃんは毎晩、抱擁力で気絶させられているようだ。可哀想に。
関所の近くにあったサンドイッチ屋で5銅貨の軽食を買い、関所前にある噴水に腰をかけて食べながら話した。
「サンドイッチをもう2食分買ってくる」
食べ終わった桜師匠が、再度サンドイッチ屋へ行った。
首に巻き付いていた白狐が私の膝に乗ってきた。
「おい、人間。桜から逃れる方法を知らないか」
白狐がデフォルメ化した姿から通常の姿に戻り、威厳のある声で話かけてきた。
「……」
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」
光の精霊が出てきて叫ぶ。
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」
白狐も叫ぶ。お互い喋ると思わなかった者が喋って驚いたらしい。二人のでかすぎる声に驚いて逆に黙り込んでしまった。
周りの視線が集まったので立って光のモヤが周りから見えないようにする。
パタパタと腕を振っていると桜師匠が戻ってきた。
「何かあった?」
白狐はすぐデフォルメ化した姿に戻った。
「あ、いえそのちょっと……」
「キュー!!」
桜師匠の前で喋る気は無いようだ。
「桜さんはこの後、どうするんですか?」
「私は今から木の国へ行くつもりだ。数百年ぶりに開国したらしく、もしかしたら宗近の剣があるかもしれない。一縷の望みをかけて向かうつもりだ」
「そうなんですね!引き留めてしまってすみません」
「いや、こちらこそお兄さんに関する情報を何も分からなくて申し訳ない」
「いえ!大丈夫です。今から兄の通っていた留学先を訪ねてみます」
「そうか。土の国は暴漢が多いから気を付けるんだぞ!」
「はい!桜さんもお気を付けて」
桜師匠と噴水の前で別れ、土の国から出ていくのを見送った。
主人公所持金:18銀貨28銅貨(▲5銅貨)




