★第47話 公爵令嬢は感傷に浸りたい
ー翌日。
どんよりとした気持ちのまま目を覚ます。夜ご飯も食べす、水浴びもしていないからだろうか。体が重い。昨日泣いたせいか、目が腫れていてうまく開かない。感傷に浸りたい気分だが、手紙を書いて村長達に内容を確認してもらわなければならない。嫌々コディマのベッドから出て、紙とペンを取り出す。
謹啓
突然お手紙を差し上げる失礼をお許しください。かねてよりアンソワ家のご高名は、鎖国していた木の国にも届いております。わたくしどもは、木の国の各村を束ねるソンチョーズと申します。
この度、木の国は数百年ぶりに開国する運びとなりました。開国にあたって折り入ってお願いがあり、筆を取りお手紙申し上げた次第です。
つきましては、アンソワ家の協力の元、臨時国王会議を開催し、各国と平等な協定を組めるようお力添え頂けませんでしょうか。また国境整備の経験も乏しいため、詳しい者を一人相談役として派遣して頂けると大変恐縮でございます。
長く鎖国をしていた木の国では、ほかに信頼して頼める者もおらず、失礼を承知でお願いする次第でございます。
お礼につまらない物ですが我が国で取れる最高級のシルクをアンソワ家へ優先販売させて頂きます。
決してアンソワ家に損失がでることがないようお約束申し上げますので、どうか事情をお察しいただきまして、ご承諾くださいますようお願い申し上げます。
もしもご承諾いただけましたら、魔道具テレフォンバードでご連絡ください。光の国との国境を超えられるようにしておきます。
こちらの勝手なお願いでたいへん恐縮に存じますが、どうかお助けいただきたく、切にお願い申し上げます。 謹白
書き終わった手紙を村長達に確認してもらい、朝食を食べた後、出発することにした。コディマとコディマの両親、村長’sに見送られて木の国を後にした。
「やっと帰れるー!!!」
行く予定のなかった火の国、木の国に滞在していたからか、感覚的には半年ぶりに帰郷する気持ちになる。光の国で借りた部屋は第3章の終わりまできているのにまだ1泊もしていない。
「アンディーン。泉を使って帰るのと、木の国から帰るのどっちが早いかな?」
「あんまり、変わらんな。光の国にある泉は、火の国の境界近くにあるからな」
あまり変わらないなら、関所での検問がない光の国の泉から帰ることにした。それに木の国と光の国は道がまだ整備されていない。泉で光の国へ移動するほうがメリットが多かった。
「アンディーン、泉で光の国に移動してから帰るから、泉の精霊にお願いして」
泉から光の国へ戻り、風球を背中にぶつけ走って帰ることにした。体力と魔力は消耗するが馬車より風球の方が早く移動できる。早く帰りたかったので、走って帰ることにした。
ー2日後。
森の道を抜けた先にあるアンソワ家の邸宅へついた。
「お帰りなさいませ!!!お嬢様!!!」
メイド達に出迎えられる。
「早速で悪いのだけれど、お風呂の準備をお願いできるかしら」
「かしこまりました」
数人のメイドが頭を下げ、お風呂の準備をしに行く。
「お父様とお母様はどちらに?」
「今、水の国と揉めている関係で、王都で会議をしております」
「水の国と何があったのか、あとで聞かせてもらうわ。走り通しで疲れたから、今日は湯浴み後は休ませてもらうわ。お父様とお母様にはテレフォンバードで帰宅を伝えて」
「承知しました。お嬢様が無事で本当に良かったです」
専属侍女ルルが本当に安堵した声で話す。自室へ戻り、湯浴みをしながら会話を続ける。
「心配かけたわね、ルル。手紙で連絡はしたけれど、お父様とお母様に届いていたかしら?」
「申し訳ございません。私が把握している限りでは届いておりません」
「なんですって?火の国から手紙をだしてから1週間以上は経過しているのだけれど」
「火の国からですか。1件アンソワ家の宛ての手紙が炎竜との騒動の事故に巻き込まれ焼けたと報告がありました」
心当たりしかない。あのとき配達員の方もいたのか。
「天災に巻き込まれたなら仕方ありませんわね」
「差出人が誰かを確認しなかった私どもの落ち度です。処罰はなんなりと」
「手紙一つでそこまでしないわ。お父様とお母様には手紙を出せる状況ではなかったと言うから安心して」
「ありがとうございます。フィナリーヌお嬢様が変わらずで嬉しいです」
「そうね。考え方が変わりそうな出来事は色々あったけど、人の根本は変わらないわね。屋敷に戻ると貴族の喋り方になってしまうもの」
ルルと新作のケーキやドレスなどの他愛もない話をしながら、部屋着へ着替える。服を着せてもらう最中に質問される。
「お嬢様、右手にある紋章がかなり変わっておりますが、こちらは?」
「これは、色々あって、水の精霊と火の精霊と契約した……ん?」
木の精霊の紋もまだ消えていなかった。消えてしまったけれど、私の中で生き続けるということなのだろうか。少し涙が出そうになったが我慢した。
「ドリアド……」
小さく呟き、右手を握る力を強くする。紋が光りだし、最初に会った時とほとんど違わぬ姿でドリアドが現れる。
全体的にふんわりとさせ毛先を遊ばせたショートヘアに、ドレスの裾にツルや葉の刺繍が入った服を着ている。艶やかなシルク生地のアワーグレスドレスは胸やウエストの細さを強調させ魅力的な大人の色気を演出していた。
髪だけがロングヘアからショートヘアになっている。
「ドリアド、生きてたの!!??なんで誰も教えてくれないの!とくにタマ!!」
「誰がタマじゃ!こやつは正確にはドリアドであってドリアドではない」
「何その友達だけど友達じゃないみたいなセリフは」
「お嬢様、この美しい女性は一体?」
「ドリアドと言って、木の国で知り合ったの」
「木の国ですか!?あそこは入れないはずじゃ」
「まぁ色々あって。明日お父様に話す予定だから、その時また話すわ」
「ドリアド、あの状況からどうやって生き延びたの」
「私という精霊を別の木に宿らせたの。原初樹木と根で繋がっていた別の木に。なので光の精霊の言う通り、記憶を引き継いだだけの別の精霊とも言えるわね」
「じゃあ美青年とか好きじゃなくなった?」
「何言ってるの!大好きに決まってるじゃない!」
「それならドリアドのままだよ!見た目は変わって、宿り木も変わったかもしれないけど、ドリアドは変わってないよ!」
女性の姿をしているドリアドに抱きつく。
「お嬢様に友人が出来たのですね。すごく嬉しいです」
「こほん。ドリアド今回の件は後で言及させて頂きますから、本日は紋に戻りなさい」
貴族らしい振る舞いを忘れて、ドリアドと話してしまったのが恥ずかしくなり紋に戻した。
簡単な軽食を食べ、昼間だったが布団に入る。2日間走り続けた疲労は相当なもので、すぐに眠りにつき、翌日まで目が覚めなかった。
主人公所持金:15銀貨53銅貨(▲45銅貨。2日分の食事:5銅貨×3日×3人分)
風球を背中にぶつけて走れば、馬車(時速10km)より早く走れます。(戦闘補助魔法としてとても優秀な風魔法)




