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公爵令嬢は転生したい  作者: 中兎 伊都紗
第一章 公爵令嬢は転生したい(第3部:木の国)
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第45話 公爵令嬢は裁判したい

【5月某日 木の国裁判所 第1法廷】

・弁護士:アンディーン

・検察官:第3村 村長

・被告人:フィーナ及びコディマ

・裁判長:第5村 村長


「それでは、被告人に対する神樹謀殺未遂事件について審理を行います。検察官から起訴状の朗読がありますから、被告人はその場で聞いてください。」


裁判長の合図で、検察官が話し始める。


「昨夜、コディマとフィーナ殿は湯浴み中に謀殺計画を立てていたと複数の証言があります。また木の国の者がドリアド様が見えないことをいいことに嘘をついて根を切断し、衰弱させるのが目的だったと推察されます。その証拠に証人を用意しました。証人前へ」


(いや待て待て、パクリはあかのお!パクリはのお)

(何言ってるの。これはれっきとした裁判の再現で、パクリでもなんでもないわ)


最初に噂を流したと思われるエルフが証言を始める。


「私達は、客間の片づけを終え、帰宅している最中に確かに聞きました。『神樹なんて無い方がいいんだ』、『願いを叶える力は俺達にはいらない』と。フィーナ殿が村で唯一ドリアドが見えるコディマを誑し込んでいる現場だったに違いありません」


「イギあり!!!」


(アウトおおおおお!アンディーンの発言はアウトじゃ!)

(大丈夫。音声では同じかもしれないけど、文字で書き起こせば異議とイギで違うから!セーフ)


「弁護人の発言を許可する」


「そのセリフはどちらもコディマの発言で、フィーナの発言ではない。フィーナが誑し込んでいた証拠にはならない。そしてここに新たな証人を用意した」


「弁護人側の証人よ前へ」


複数のエルフの女性達が並ぶ。


「私たちは聞きました。私達を騙してフィーナ殿が神樹を枯らそうとしていると」


「それは誰から聞いたのかね」


アンディーンがノリノリで質問をする。


「第1村の村長ヤドナシ様からです」


「この証言にあるように、今回の噂は村長によって広められた。噂を広げて得をするは誰か?これで皆さんお分かりになりましたよね?そう犯人は第1村村長ヤドナシ!あなただ!」


そういって座っている第1村長へ指を差し、皆の視線が第1村長に向けられる。


「わしは……。ホームレスです」


第1村長はホームレスとと入れ替わっていた。


「ヤドナシを探して捕らえよ!」


逃げたと気づいた他の村長達が叫ぶ。その瞬間、原初樹木の方からバンッという大きな音が響く。外に出て原初樹木の方角を確認すると鳥が一斉に羽ばたいていた。


(ドリアドが危ない)


光の精霊の言葉に頭が真っ白になる。周りにいた人達を一切考慮せず、全力の風球ウィンドボールを背中にぶつけ、原初樹木まで走る。


 原初樹木まで駆けつけると、土弾アースバレッドが撃ち込まれたのか、木の幹は半分切り込みが入り、傾いていた。樹幹が支えとなり、かろうじて折れていない状態だ。


「ドリアド!!!」


 原初樹木の横でドリアドも横たわっている。下半身が透明となっており、徐々にドリアドの体が透けていく。


「フィーナちゃん」


「どうして!どうして!木の国の神であるドリアドに害をなすのですか!?」


木の傍にいる第1村長ヤドナシに向かって叫ぶ。


「わしも神樹の被害者だからさ。

 この第1村では、人の発展した文化を取り入れるため、50年に1度、複数人が5年間国の外で過ごす。わしの娘が、100年ほど前に使節団として風の国へ行ったんだ。

 5年経過したら帰ってくるはずの娘がいつまで経っても、いつまで経っても帰ってこない。

 だから娘を探しに行ったのじゃ。


探しているとな、娘じゃなくて孫を見つけたんじゃ。


 娘は身籠った後、すぐ旦那を無くし、木の国へ帰ろうとした。だがな人間の血が混ざった孫が村には入れず、娘は人間の国に住むことにしたんじゃ。


 そして娘は孫を育てるために、冒険者となったが、ある日を境に帰ってこなくなった。

 それから孫はな、盗みや物乞いをして生きながらえていた。


 孫を見つけたときはボロボロの衣服にやせ細った傷だらけの体となっていてもっと早く見つけられなかったのかと、涙が止まらなかった。


 木の国に入れなくてもかまわん。結界の近くで一緒に住もうと約束し、孫と一緒に木の国へ行くことにした。しかしその願いも叶わなかった。

 移動中に奴隷を集めている盗賊に襲われ、必死に抵抗したが、結界に守られ戦う方を忘れた我らエルフに、戦いなれた人間にかなうはずがなかったのだ。わしが殺されそうになった時、わしの前に孫が飛び出し、孫の体に大きな剣が貫かれて視界が真っ赤になったんじゃ。

 老いぼれジジイは売れないと盗賊達に捨て置かれたわしは、叫ぶことしか出来なかった。


 虚ろになりながらも、木の国へ帰った。


 木の国に帰るとな、誰もエルフが無力であることに気づかずに皆平和に過ごしているんだ。結界に守られ、当たり前のように平和を享受している。そんなエルフ達の体たらくに怒りで体が震えた。いや違う、何も守れなかった自分の無力さが一番憎かった。


 木の国の結界はな、わしが願い張ったものなんだ。わしが神樹にお願いし叶えてもらった。叶えてもらった願いで娘も孫も失うことになるとは思ってもいなかった。


 その日から頭の隅で、新樹の力がなければ、娘は……。と考えてしまう自分がいた。しかし神樹を枯らしたいとか、無くなったほうが良いとは思ってなかった。この国にとって大事な神樹であることは重々承知していた。


 ある日、湖のほとりにいくと、黒い人影が映った。誰にも話せなかった今の話をすると、黒い影は言ったんだ。『木が無ければ、奥さんも子どもも無事だったのに』と。なぜかその言葉がすごく正しいことのように思え、神樹を無くさなければと思うようになってしまった。


すまない。ドリアド様」



村長はそう呟いて、神樹に火をくべる。小さな火が一気に神樹へ広がる。すぐ燃えるよう動物油を撒いていたようだ。


「アーーー!!!!」


ドリアドの悲痛の叫びが響き、ドリアドの姿が消え始める。


「水よ。出でよ。水球ウォーターボール


新樹の火を消すために水球ウォーターボールをかける。火が消え、光治癒ライトヒーリングを使ってもドリアドの姿は戻らない。


「ドリアド、どうすればいい?どうすれば助けられる?」


「私はもう助からない。周りの子達に火が移らないようにしてくれる?」


「サラマンディア、光の精霊、何か方法はないの!?」


「すまない。誰かの命を救う力は今はない。あったとしても、火の力をドリアドには使えない」


光治癒ライトヒーリングで治せるのは人だけだ」


サラマンディアも光の精霊も打つ手がないようだ。


「ハハハハハハ。わしはやり遂げたぞ!これで、この国は元の姿に戻る」


村長は高らかに笑う。後から到着したエルフ達に連行されていった。


「おい、ドリアド!死ぬな!!」


駆けつけたコディマが叫ぶ。


「ふふ。これで願いは叶えられるわね」


「俺が倒さないと意味がないだろ!俺がやっつけるまで死ぬなよ!!ドリアドおおお!!」


「あぁ……。死にたくないな……」


最後にそう呟いて、ドリアドは目を閉じて消えていった。

主人公所持金:15銀貨98銅貨

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