第44話 公爵令嬢は辿りたい
ー翌日。
窓から入る朝日で目が覚めた。横を見るとコディマはいなかった。先に起きたようだ。1階へ下りるとコディマが村長に水をかけ介抱していた。
「起きろ酔っ払い!朝ごはんどうするんだ!」
二日酔いの村長は起きる気配がなかった。風球で持ち上げ、村長の部屋まで運ぶ。
「客間で朝ご飯を用意してもらってるから、一緒に食べよっか」
客間に移動して、酔っ払いを部屋の隅に置き、朝食を済ませた。第1村の村長ヤドナシ分はコディマが食べた。
食べ終わった後は、原初樹木へ移動し、若い男性エルフ達と昨夜の続きをする。全ての腐った木の根を切り落としたら、ドリアドはげっそりしていた。小枝を切れば、切断作業は終わりだ。掘り起こした土を移動させ、肥えた土を根に被せる。
「フィーナ様、他にすることはありますか」
切断チームは一通り終わったので、もう無いだろう。
「大丈夫です。作業は終わりました」
「これで元気になるといいんですが」
「たくさんの人が願い、祈ればそれが力になると言っています。沢山祈りましょう」
「分かりました。巫女様の仰せの通りに」
なんだか本当に宗教の巫女のようなことをしていると思ってしまった。こういうのは今後、御免こうむりたい。私は転生者としてチートし崇められたいのだ。これはちょっと違う。そう本当にやりたかったのは、本の知識かゲームの知識か未来予知の知識で犯人をズバリ当てて、ドヤ顔したいのだ。今の私はもちろん犯人が誰かなんて全く分からないが。
昼過ぎには、作業が終わり切断チームも土を運ぶチームも引き上げていた。最後に水球を土に染み込ませ、客間へ向かう。
少し遅い昼ご飯を食べよう思い、村へ戻るとエルフの視線が冷たい気がした。気のせいだと思いそのまま客間へ向かい、昼ご飯を食べた。
食べ終わると、村長達が険しい表情で入ってきた。
「フィーナ殿、少々お時間よろしいかな」
食事が下げられ、村長達が座る。
「フィーナ殿、あなたには神樹ドリアド様、謀殺未遂の嫌疑がかかっております」
「はい?え?」
意味が分からない。枯れ始めたのは、私が来る前からだし、枯れた根とか枝とか切り落として、毒のチェックをしてるのもアンディーンなのになぜ。
「昨夜コディマと共謀し神樹を害する計画を立てていたと村の者が噂しておってのお、わしはそんなわけないと諫めたのじゃが噂がどんどん広がってしまってのお」
コディマにも嫌疑がかかっているからか、第1村長ヤドナシが擁護する。昨日、湯浴みをしているときに話いた内容が誰かの耳に入り、尾ひれがついたようだ。
「私達もフィーナ殿がそんなことをするわけが無いと分かっております。しかし、各村の代表としてその噂を放置することが出来ない」
「フィーナ殿、コディマ殿としばらく第1村長の家で謹慎して頂けないだろうか。そして身辺警護をさせてほしい」
身辺警護と言えば聞こえは良いが、要するに監禁だ。監禁されるくらいなら光の国へ帰らせて欲しいがそんなことを言える空気ではない。このタイミングで私がいなくなったらコディマが濡れ衣を着せられそうだ。それを放置することは出来ない。
「分かりました。皆さんの気が済むまでコディマと一緒に過ごし、外出は控えます」
「ご協力、感謝します」
コディマの部屋へ移動すると、コディマは布団の中でくるまっていた。悔しくて泣いているようだ。いつも自由奔放に村を駆け回っているので、自由を奪われたのが辛いのだろう。布団の上から背中をさすり、慰める。暫くすると嗚咽が聞こえなくなり、コディマは寝たようだ。
(今回の件、犯人にとって都合が良すぎる)
「そうね。誰が噂を流したのか聞き込みが出来れば、犯人を辿れるかもしれない」
(あぁ、わしが村長どもに聞き込みするよう依頼してこようか?)
「そうね。ダメ元でお願いしてみましょう」
(あと盃のチェックをしているアンディーンに、噂を誰から聞いたのか聞き込みするよう伝えておく。女性エルフはだいたい答えるじゃろ)
「ありがとう。お願いするわ」
光の精霊は窓から外へ出ていった。
太陽が傾き沈み始めた頃、コディマが目を覚ます。
「姉ちゃん……」
「おはよ。もう夕方だけど」
コディマは起きてすぐ、ベッドの隣に座っていた私に抱き着いてきた。
「姉ちゃんに話したいことがあるんだ……」
少し怯えたような小さな声だ。手を少し震わせている。
「フィナリーヌ!邪魔するぞ」
コディマの部屋に盃チェックを終えたアンディーンが入ってきた。
「噂の元を辿ったら、、、」
コディマの顔を見て、アンディーンが話すのをやめる。
「やっぱりそうか」
アンディーンの表情を見て、コディマが呟く。
「ジジイが噂を流した張本人なんだろ?俺、今日の朝聞いちまったんだ。『あと少しで枯らすことが出来たのに』ってジジイがうなされながら言ったんだ。聞き間違いかと思って聞き流したんだが、いきなり村の奴らに捕まえられて、この部屋から出るなって言われたから、聞き間違いなんかじゃないって思ったけど、俺が何を言っても村の奴らは信じないし、何も出来なくて」
涙目のコディマを抱きしめ、背中をさする。布団の中にいたのは涙を見られたくないのと悔しさで泣いていたみたいだ。小説の中の狼少年の話を思い出す。
「大丈夫。私は信じるよ」
「フィーナ。客間へ来い。噂を最初に流した女2人が客間で尋問を受けている。フィーナを呼んで事実確認をしたいそうだ」
光の精霊が窓から入ってきた。部屋のドアからノックの音がする。村の使いの者が呼びに来たらしい。コディマ達と一緒に客間へ向かう。
客間に入ると村長達と噂を流したと思われるエルフ達がいた。
主人公所持金:15銀貨98銅貨




