第43話 公爵令嬢は地雷を踏みたくない
早速、木の根と枝の切断にかかる。どの枝を切れば良いか通訳として切断チームになった。腐った部分の木の根を確認すると、太い所もいくつかあった。切ってしまうことで枯れないかすごく心配になる。ドリアドに位置をしっかり聞き、ノコギリで刃を入れる。
「あぁん//痛い///痛いの///もうだめっ///」
多分、本当に痛いとは思うのだが、心配して損した気分である。ドリアドの意向により、切断チームがイケメンで構成された理由がよくわかる。本当にこんなんを神樹として祭っていて大丈夫なのだろうか。
ドリアドに見染められて木に連れ込まれた美青年は皆一皮向けてもっと良い男になるらしく、男性からはとても支持を得ている。今のオカマに連れ込まれたらどうなるのかとても興味が湧く。
夕刻になり、作業を中断する。だいたい半分くらい終わった。明日の午前中には、残りの少しの根と枝を切り落とし、汚染されていない土に入れ替えが完了するだろう。
客の間へ行くと村長達が先に飲み会を始めていた。こっちは現場仕事で働いていたというのに、このジジイ共は……。ドリアドは今日は疲れたので、サラマンディアにご飯をあげてと言い残し紋へ戻った。
「アンディーン、サラマンディア」
アンディーンとサラマンディアを呼び出して、村長達とお酒を呑む。サラマンディアは少し大きくなっていた。明日のことを考えると私は飲まない方が良いと思い断った。
「そういえば、皆さんはどちらに寝泊りするのですか」
「もちろんここじゃが?」
「おほほ。仲がよろしいのですね」
食事中に寝床を確認しておいてよかった。淑女が男性と同じ部屋で寝るのは絶対に無理。私は外で寝よう。外で寝たくはないが、背に腹はかえられない。
食事が終わった後は、村長達に食後の運動をすると伝え、泉へ向かって歩いた。
泉へ向かう途中、コディマが木の上から出てきた。野生児らしい動きだ。
「姉ちゃん、ドリアドは助かるのか」
親の仇と言っているものの、いなくなってほしいわけではないようだ。
「ええ。時間はかかるかもしれないけど、きっと元気になるわ」
「あっそ。てか姉ちゃんなんで夜にこんなとこいんの」
「今日は客間で寝れなさそうだから寝床を探してるの」
「ジジイ共と一緒は嫌だよな~。それならさ、俺の部屋で寝なよ!広めのベッドだし、シーツは絹の高級なやつなんだぜ」
「それはいいベッドね~!さすが村長の孫」
成人男性と同じ部屋に寝るのはアウトだが、子どもはセーフだろうか。絹のシーツに心が揺れて、少し悩む。
「俺、村長の孫じゃねーよ」
地雷を踏んでしまったのだろうか。5歳児の見た目なのに闇が深くて困ってしまう。
冷たい風がコディマと私の間を吹き抜ける。
「そんなことより、もう俺の部屋へ戻ろうぜ」
手を握られ、村の方へ引っ張られる。一瞬冷えた空気が手から暖かくなる。今日はコディマの部屋にお邪魔することにしよう。
村へ戻り、客間にいる村長達に寝る場所を伝える。
「今日はコディマ君と一緒に寝ます。私のことは気になさらずごゆっくり」
「ヒュー!ヒュー!」
アンディーンも村長達と一緒になって、囃し立ててきた。嫌がらせで紋に戻すか悩む。サラマンディアはなじめなかったのか、端で一人で飲んでいる。やはり大きい時はクールキャラなのだろうか。
「間違いは起きないのご安心を」
扉を勢いよく閉めて、コディマの部屋へ行く。
コディマの部屋は、質素だった。5歳という見た目なのにおもちゃや本が見当たらない。人の国ではあまり考えられない部屋だ。ベッドは室内の真ん中に置かれ、2人は余裕で寝れる広さだった。
「姉ちゃん、湯浴みする?」
「シャワーの魔道具あるの?」
「なにそれ?湯浴みするなら温めるよ」
コディマは家の裏へ行き、薪を燃やす。
木の国ではシャワーは無いが、湯舟はあるようだ。金属製の筒に水をいれ、沸騰させる。隣に置いてある木の桶に鉄の筒で繋いで、お湯を移動させるのだ。お湯が十分になったら、パイプの真ん中にある栓を閉める。光の国のお風呂とは全然違うお風呂だった。周りからは見えないように、湯舟は木の柵で囲われていた。
「姉ちゃん、先入ってていいよ」
お言葉に甘えて、先に湯舟へ入る。久しぶりのお湯はなかなか気持ちよかった。少しするとザブンという音を立ててコディマも入ってきた。一緒に入浴するなら先に言ってほしい。子どもだからまぁいっかと気を取り直して、肩までしっかりつかる。
「姉ちゃんは、母ちゃんみたいだ」
「うーん35歳の子どもを産んだ覚えはないんだけどな」
「村の人達は、俺と誰も目を合わせてくれない。でも姉ちゃんはちゃんと俺の目を見て話してくれる。だから姉ちゃんは村の奴らとは違うって思ったんだ」
「村長がいるじゃない」
「村長もいつからか目が変わったんだ。前はあんな目じゃなかった」
「そっか。村の人達はコディマ君との接し方がわからないのかもね」
「そんなんじゃねえ!!!村の奴らは現実と向き合ってないんだ!皆どこかで、神樹があれば大丈夫と思っていやがる。自分の力でちゃんと生きてないから、どいつもこいつも目が濁ってドリアドが見え無くなっちまったんだ。人の願いを勝手に聞いて、人を堕落させてしまうような神樹なんてホントは無い方がいいんだ!」
暗雲が月を隠し、静けさが際立つ。
「違う。言い過ぎた。ドリアドにいなくなってほしいなんて思ってないんだ。でも願いを叶える力は俺達には要らないってだけで。もし今のが聞こえてたら、ドリアドに謝っておいてほしい」
「今のは言い過ぎだったかもね。でもコディマ君の気持ちも分かってていつも接してると思うよ。お願いが自分の好きなタイミングで叶えてもらえたらいいのにね。叶える前に確認してほしいよね」
「そんな本の中に出てくる魔法のランプみたいなのあるわけないじゃん」
「えーあるかもよ?」
手で水を包み、勢いよく握る。簡易的な水鉄砲をコディマの顔にかける。
「うわー!やったな!」
お湯がぬるくなるまで、コディマと湯舟で楽しく遊んだ。
湯舟を出た後は、水球|≪ウォーターボール≫で洗濯する。コディマは魔法で洗濯するのを見て便利だなと目を輝かせていた。
ベッドに入り、手を繋ぎながら眠る。シーツはすごく柔らかく、肌触りが良かった。木の国に滞在している間はコディマと一緒に寝たいと思うほどだった。
「姉ちゃん、冒険者?っていうやつなんでしょ。強い敵とかと戦ったことある?」
「あるよ。水竜や火竜と戦ったよ」
「おおー!かっけぇー!その話きかせてよ!」
水竜の話が終わると、コディマは寝息をたてていた。コディマの部屋から見える夜空は星がキレイに見えた。
主人公所持金:15銀貨98銅貨




