第42話 公爵令嬢は探偵したい
ー翌日。
「村長ー!村長ー!村長ー!」
エルフ達の声が窓から聞こえる。走り去る音が聞こえ、ゆっくり瞼を開ける。部屋の天井の隅にコディマが両手両足を伸ばして張り付いていた。幻覚だと思い、起き上がり窓から外の様子を伺う。どうやら朝っぱらから誰かが尋ねてきたようだ。ホームレスを引っ張って、村の入り口までエルフ達が運んでいる。
「わしは何もしとらんぞ!離せ」
エルフ達に連行されているホームレスは、投獄されると勘違いしているようだ。
「姉ちゃん、降りれなくなった」
後ろを振り返るが誰もいない。
「さっき、目合ったよね!俺と目合ってたよね!」
「風よ、いでよ。風球|≪ウィンドボール≫」
風球で包みこみ、床におろす。
「ホームレスさんが、大変なことになってるから行ってきてあげて」
ホームレスのお爺さんは、4人の身なりが整ったエルフ達に囲まれて、あれやこれやと言われていた。身なりの整ったエルフ達はお爺さんの周りをぐるぐると歩きながら話しているため、カゴメカゴメをしているみたいだ。
「村長違うだろーがー!」
コディマが入っていき、ホームレスを連れ出しちゃんとした村長を連れてくる。人の見分けもつかなくなるとは年は取りたくないものである。
村長達の話を盗み聞きし、話をまとめると人間を勝手に招き入れ、神樹の注連縄の中に入らせたことを怒っていた。『神樹に危機が迫っていることも報告しないとは何事か!?』と第1村の村長としての責任を追及されていた。たしかに木の国の者として、それを教えて貰えないのは怒られても仕方がないと思う。何よりなぜ報告をしなかったのか。ボケて報連相が素早く出来ないのかもしれない。
村長が走って客間に向かってくる。ちょっと来ないで欲しいと思ってしまった。
「フィーナさん、すみません。お客様が見えておりまして、少しばかり外で待機して頂いてもいいでしょうか」
言われるがまま、外へ出る。各村の村長と思われるエルフ達が客間に入っていった。
「当事者である、人の子にも参加してもらおう」
私は巻き込まれただけの被害者である。当事者ではない。そう探偵は当事者ではないのだ。俺は中高生探偵、工藤伸一。ドリアドは黒づくめの男に毒薬を飲まされ、目が覚めたら……体が透明になってしまっていた。
(妄想してないで、はよいけ)
客間の中を見ると、5人とも座ってこちらを見ていた。そんな痛い子を見るような目で見ないで。
「さて、お嬢さんから直接話を聞こうか。隠し事なしで全て話して貰おう」
神樹が枯れそうなこと、原因がエルフの誰かの手によるものである可能性が高いことを伝える。
「まさか、エルフの中に神樹を徒なす者がいるとは思えん」
「しかし、私達の村の者もドリアド様が見えなくなった者は多い。神樹の力が弱まっている証拠じゃないのか?」
話を聞いたエルフ達が会議を始めた。話の流れを見守る。
「全ての村で力を合わせて、犯人を突き止めるべきだ」
「犯人捜しを始めたら、毒をまくのを止めてしまい、見つからないのでは?」
「だからといって、毒をまいてるかもしれないエルフに儀式させては、神樹が枯れてしまうぞ」
「儀式そのものを暫く中止にするのはどうか」
「どちらにせよ犯人が身を潜めるだろう」
「犯人の狙いは神樹を腐らせることですよね?それでは皆で神樹を再生させるのはどうでしょう?儀式に使う水は、水球|≪ウォーターボール≫限定にして、使う盃は儀式が終わる度に毎回チェックするというのはどうでしょう。こうすることで、犯人がなりを潜めたとしても再生していく神樹に焦って必ず行動を起こすはずです。1日中、各村の人達が交代で見張れば犯人も儀式以外で迂闊に近づけないと思います」
村長達の話を聞いた上で、犯人を炙り出す方法を提案してみた。
「それは妙案だな!それで行こう」
村長達が見張り要員、水球を使える者、盃をチェックする者など決めていく。盃をチェックする者は絶対に犯人ではない人がやらなければならないという理由で、なかなか決まらなかった。
「フィーナ殿、昼~夕方まで盃のチェックをお願いを出来ないだろうか。チェックした者が毒を塗っている場合、絶対に見つからないのだ」
たしかにその通りだ。
「分かりました。アンディーンは水の精霊なんです。アンディーンに盃に残った水滴に毒が含まれていないか確認させます」
(アンディーン使いがどんどん荒くなっておるな)
「おお!水の精霊様とは心強い」
こうして犯人逮捕の道筋が決まった。村長達は、村の人を呼びつけ、見張り要員を各村から5人用意するように伝える。
指示出しが終わった後、客間に豪勢な食事が運ばれてきた。村長会議を行う時は肉・魚・米など複数の食事が用意されるようだ。
(アンディーンが食べたいと言っておるぞぉ)
「アンディーン、聞いていたかもしれないけど、盃のチェックこれからお願いね」
「ふん。ちゃんと3食用意するなら考えてやらなくもない」
突然、アンディーンが現れたので村長達は驚く表情を見せた。
「神樹を助ける手伝いをしていただくのです。フィーナ様とアンディーン様にはきちんと食事を用意させて頂きます」
(ドリアドが『私もぉー!!』と言っておるぞ)
「す、すみません。2人分ではなくて3人分お願いしてもいいですか」
普段ならお願いしないが、木の国の神が所望しているのだ。エルフの人達に食事の用意をしてもらっても良いだろう。
「分かりました。手配しましょう」
食事を終えた後は、神樹の再生作業にかかった。
「ドリアド、何かしてほしいことある」
紋が光り、ドリアドが出てくる。私には見えているが、エルフ達は本当に見えなくなったようで全く気づいていない。
「そうね。枯れた根の切断と、幹にまずは栄養が届くように、木の枝を切ってもらおうかな。大変だけど土を少し掘り起こして、健康な土と入れ替えもしてほしいかも」
ドリアドに言われたことをそのままエルフ達に伝える。切断チーム、土を運ぶチームでまずは別れることになった。
主人公所持金:15銀貨98銅貨




