第38話 公爵令嬢は調査したい
ドリアドから木を見てほしいと言われ、村へ来たことを伝えたら、村長はすんなり入れてくれた。村人のエルフ達は反対していたが、村長は新しい風を取り入れることは大事という考え方らしい。さすが現役を自称するだけのことはある。村の建物は全て木材で出来ており、2階建ての家が点在していた。木を祭る木の国らしい質素な村だった。
早速、村から少し離れたところにある原初樹木の場所まで案内してもらった。
原初樹木は、とても幻想的だった。力強い大きな幹、どこまでも広がっていきそうな樹幹。樹幹についている木の葉達は、太陽の光を受けて輝いていた。枝葉の隙間から漏れた日差しは辺り一帯を照らしエメラルド色に染めていた。神聖なその空間には足を踏み入れないよう、原初樹木の周りには注連縄が四角形に飾られていた。注連縄の外から原初樹木を見る限りでは枯れそうな気配はなかった。
「この~木、なんの木~、気になる、気になる。名前も知らない木ですから!名前もしらな~い実がなるでしょ~」
人が感慨に浸っていたら、ぶちこわしソングを光の精霊が歌ってきた。怒った表情のドリアドが光の精霊の前に立ちはだかる。
「ヒタチノグループです」
「いや乗るんかいっ」
ドリアドの予想外の言動についツッコミをいれてしまった。
村へ戻ると黄昏時になっていた。村長から客間へ通される。木の国には宿屋が無く、寝泊りできる場所は客間しかないらしい。客間は1階建ての広い平屋で、部屋の中は畳が敷かれていた。部屋の隅には座布団が重ねられている。
鎖国している為、人の出入りは第1村から第5村の人達だけで、基本的に村長会議の時以外は客間を使わないそうだ。お腹がすいたので、食堂の場所を聞くと客間のすぐ隣だった。気づけば朝から何もご飯を食べていない。
早速、隣の食堂へ行きメニューを注文する。
【メニュー】
・木の実・・・8アワー
・草の実・・・9アワー
・豆の腐・・・9アワー
・穀(稲)・・・5アワー
・穀(栗)・・・5アワー
木の国の料理は肉や魚がメインではなく、木の実や植物がメインだった。
「アンディーンが『私は木の実を食べるぞおお』と言っておる」
紋に戻っていたアンディーンが光の精霊を通じて注文をしてきた。
「私は~、うーん、やっぱり草の実かな!」
「姉ちゃん、稲もよろ」
オカマも食べるらしい。ん?3人目は誰だ?後ろを振り返るとコディマがいた。
「コディマ君は村長と食べたほうがいいんじゃない?」
しゃがんでコディマと視線を合わせ話しかける。
「嫌だよ!毎日粟だもん!たまには違うの食べたい!」
育ち盛りに毎日同じものでは大変そうだと思い、コディマの分も注文する。
「稲、草の実、豆の腐、木の実をお願いします」
エプロンを着た三つ編み一本結びの女性エルフへ注文をする。
「28アワーです」
銀貨と銅貨を並べ、支払いできるか聞いてみる。
「これはなんですか?」
火、土、風、光、水の国は全て共通通貨だが、木の国は通貨すらも違うようだ。
「すみません。アワーってどんなお金ですか。持ち合わせが銀貨と銅貨しかなくて」
「お金?アワーは、あそこにも生えている粟1束のことですよ~」
このご時世に物々交換!?鎖国の影響はすごくあるようだ。
「姉ちゃん、大人の癖にアワー一つも持ってないのー?しけてんなー。折角、粟以外の食べ物にありつけると思ったのにー」
「すみません。またコディマがいなくなったのですが知りませんか」
村長が食堂の扉をあける。
「ここにいますよ」
コディマを脇の下から持ち上げる。
「コディマー、粟煮ができたから帰って食べようや」
コディマはそのまま連れていかれた。
さて、一日食べていないのでかなりお腹がすいている。しかし日も落ちたので粟を採取するのも難しい。どうしたものか。
「あのー、もしアワーが無いのであれば、その銀色のと交換でどうでしょうか」
エルフの三つ編みお姉さんが気を使ってくれた。銀貨1枚で36束分の粟と交換はちょっと割に合わないが、優しいエルフのお姉さんにとっては銀貨は銅貨1枚にもならないことを考えるとお姉さんの優しさに震えた。
「ありがとうございます。交換でお願いします」
栗、稲、草の実、豆の腐、木の実がテーブルの上に置かれ、精霊達とシェアをして食べる。食べたことのない赤い三角の草の実や豆を腐らせ作られた白い物体、オレンジ色の木の実などは、とても美味しかった。食べ終わった後は、隣の客間に戻った。
寝る前に、精霊達を呼び出す。寝静まった頃に除草剤を蒔いている可能性もあるため、精霊達に原初樹木の近くで、怪しい人がいないか見張ってもらうことにした。
窓からはキレイな満月が見えた。布団を敷いて満月を見ながら眠りについた。
主人公所持金:15銀貨98銅貨




