★第36話 公爵令嬢は訂正したい
イラスト注意
アンディーンの体から水分が抜け、しわしわになった。
「やめ……ろ…」
断末魔のような声を残してアンディーンは紋に戻っていった。
アンディーンに飛びついた千歳緑の髪の女性は逆にツヤツヤとしていた。全体的にふんわりとさせ毛先を遊ばせたロングヘアに、ツルや葉の刺繍が入った服を着ている。艶やかなシルク生地のアワーグレスドレスは大きな胸やウエストの細さを強調させ魅力的な大人の色気を演出していた。
「アンディーンどこー?どこー?」
「俺はここにいるぜ!ドリアド」
小さなサラマンディアがドリアドと呼ばれた女性の胸に目掛けて飛び込もうとする。
「キレイな肌が焼けちゃうじゃない!!木よ、我が手足となり、力となれ、木肢」
泉の下から手の形をした木が生え、サラマンディアを掴み遠くへ投げる。人が使える木の魔法は三種類だけだ。聞いたことがない魔法を使うドリアドはどうやら木の精霊らしい。
「うわああああ」
サラマンディアはかませ犬のような声をあげて、遥か彼方へ飛んで行った。
「ドリアドさんは、木の精霊なんですか」
「ふふ。そうよ。やっぱり分かっちゃう?」
「木属性の初・中・上級でもない魔法だったので、そうかな?と思いました」
「その通り。改めまして、木の精霊ドリアド。フィナリーヌちゃんにお願いがって、泉の水精霊にお願いして呼んじゃった」
「精霊はお願いを聞く側で、する側ではないのでは!?」
「普通はそうなんだけどねぇ、私もう少しで死んじゃいそうなの。だから助けてほしくて、、、。私の依り代である木の根がなぜか枯れかけてて、その原因を突き止めてほしいのぉ。お礼は体で支払うわ」
木の精霊ドリアドの体つきが変化し、丸みのある姿から肩幅が広がり筋肉質な姿に変わる。シルクのスカートは腰から下に巻きつけられ、小説の世界に出てくるミロのヴィーナスみたいになっている。髪型は変わらないが目つきや顔の骨格が変わり男らしい姿に変わった。
「フィナリーヌちゃんはイケメンが好きなんでしょ?私もイケメン好きだから分かる~!」
特にイケメンが好きというわけではないと訂正しようと思ったが、変わりようの方が気になってしまった。声も女性らしい声からオカマみたいな声に変わっている。
「ドリアドさんは、男だったんですか!!??」
「何言ってるの!どの精霊にも性別なんて無いわよ。基本的には女性の格好して、イケメン見つけ次第、木の中に誘い込んでたら女性が板についただけよ~」
「神話のドリュアデスみたいですね」
「別の国では、そう呼ばれているわ」
本人だった。
「そんなことより契約しましょ」
右手の新しい紋が刻まれ、光る。
「召喚も何もしてないのに、契約って出来るんですか。小説の世界だと口づけとか、手の甲にキスとかするのに!!」
「サラマンディアもアンディーンともキスとか何もしてないでしょ。契約するかどうか精霊側で決めて勝手にできるのよ。属性の適正が高ければだいたい出来るわ」
召喚したから契約が出来ていたと思っていたが、とんだ勘違いだった。
「じゃあ依頼料は体で先払いしたことだし、木を枯らす犯人を探しに行きましょっか」
「枯らしてるのって人なんですか?そこまで分かってて誰がやったか分からないんですか?」
「人っていうかエルフ?多分誰かが腐らせる液体を周辺の土にバラまいてるのかなって。私以外の木は枯れてなくて健康なのよ」
話を聞くと、木の国ことエルフの国の原初樹木として崇められ、毎日いろいろな人の祈りや願いを聞いている。その時にキレイな水をかけるのが儀式の通例となっていて、誰がが除草剤を混ぜているのかは分からないらしい。
以前まで村長や適正の強いエルフ達がドリアドの姿を見ることができていた。しかし枯らされ、少しずつ力を失い、今はほとんど誰にも見えなくなってしまい、頼れる人がいないのだと言う。
「見て!私の姿、もう足先は透明になってるのよ」
ドリアドに言われて視線を落として足先を見る。たしかに透明になっていた。
「分かりました。ただ木の国って結界ありますよね?人嫌いのエルフ達は数百年前から鎖国状態だったはずですが、どうやって入るんです?」
「それは大丈夫。もう木の国の中だから!」
どうやら先程までいた光の国の泉と木の国の泉は繋がっていたようだ。歩き出すドリアドを追いかけて歩く。
「エルフさん、見たこと無いので楽しみです」
ドリアドと一緒に原初樹木まで向かうべく、森へ入った。
主人公所持金:15銀貨98銅貨




