★第34話 公爵令嬢は助けたい
イラスト注意
ブレスの攻撃を真正面からくらったリオスにウィンドボールで近づこうとする。
「とと様!僕が勝手に出ていっただけなの!人間は悪くないから攻撃するのをやめて!!!」
リオスの体には傷一つなかった。強者である。リオスの言葉で魔炎竜レイスが動きを止める。
「今だー!!!撃てー!!!」
光の国の誰かが叫んだ。その号令に合わせて、複合魔法の火弾や水弾が魔炎竜レイスに打ち込まれる。
「とと様、もうお家に」
レイスに向かって放たれた水弾の一つが話そうとしていたリオスの体を貫く。火に対しては無敵だったが、水はやはり弱いようだ。
「『『『リオスー!!!!!!!!』』』」
魔炎竜レイス、アンディーン、光の精霊と私の声が同時に響く。リオスの体は地面へ落ちていった。
「アアアアアアアアアアアアアアアア」
魔炎竜レイスは大きな咆哮をあげ、火山が噴火した。
「人間ども、死ねええええ!!!」
レイスは人の顔サイズの火の玉を口から何度も何度も吐き出して、そこらじゅうにばら撒いた。人々に被害を出すまいとウィンドボールで軌道をずらしているが、もう魔力が限界だ。人々はレイスから少しでも遠くに行こうと逃げていく。
「フィーナ、一か八じゃが、レイスに『リオスを助けることが出来る』と叫べ」
魔炎竜レイスの気がこちらに向くよう、小さな水球を顔面に当てる。レイスの視線がこちらに向く。
「炎竜リオスを助けることが出来ます。だから攻撃をやめて!!!」
「嘘をつくなああああ」
再度、魔炎竜の口に魔力が集まってきた。リオスの次は光の精霊が魔炎竜の攻撃の斜線上に現れる。
「わしの光治癒で治す」
光の精霊の言葉でレイスの口に集めた魔力が霧散していった。どうやら賭けに成功したようだ。一目散にリオスに駆け寄る。
「お姉ちゃん、とと様…」
まだ息はあるが衰弱している。
「光よ、癒す力となれ《ライトヒーリング》」
光魔法で傷を治すが、衰弱が治せない。
「熱いところに連れていかなくちゃ」
レイスの吐いたたくさんの火の玉で周辺は火の海となっていた。炎竜を火の中にいれると少し楽そうな顔になったが、ぐったりとしていて今にも力尽きそうだ。
「とと様、フィーナはとっても優しかったよ。人間は悪い奴なんかじゃなかったよ」
「いい、いいんだ。喋るな。そんな言葉聞きたくない」
「フィーナ、ありがとう。とっても楽しかった……」
「い、嫌。嫌よ。リオスっ!!元気だして!リオス!!」
手や服の袖が焼けていたが、なぜか全く痛くなかった。それよりもリオスの弱った姿に心が痛み、涙が出る。私がもっと早く昔話を知っていたら。もっと早く家に届けていれば。もっと早く火の国人に相談していれば。思い返すとキリがない。
「まだ諦めるんじゃない!サラマンディアを呼ぶんじゃ」
光の精霊が叫ぶ。悲しみで思考がまとまらず泣きながら嗚咽で返事をする。
「うっえっあー、うっうっ」
「何も考えるな。いいから復唱するんじゃ。魂の声を聞け。我の魂に呼応する火の精霊よ。我が呼びかけに応じ、姿を現せ」
「『魂の声を聞け。我の魂に呼応する火の精霊よ。我が呼びかけに応じ、姿を現せ』」
なぜか弱っていたリオスも一緒に復唱していた。その健気な姿を見て、さらに生きてほしいと強く願った。
右手に新しい紋が刻まれ、リオスの体を温めている火から精霊が姿を現した。アンディーンと同じくらいの大きさの人型精霊だ。
「俺を呼んだのは君か。願いはなんだ?」
赤い前髪をセンターで分けて横に流し、耳まで髪がかかっている。熱い火とは反対に冷静な口調で話しかけてくる。
「リオスっ!リオスを助けて!!」
泣きながら縋り付くように叫ぶ。
サラマンディアは無言で頷き、詠唱する。
「火よ、命を吹き込み、燃え上がれ。炎蘇生」
火の精霊は不死鳥の姿になり、リオスと同化する。暫くするとリオスの体から強い火が燃え上がった。
火の精霊はリオスの体から離れ、小さな姿となり紋へ戻っていった。
リオスは衰弱した様子は無く、気持ち良さそうに眠りについている。いつも通りの大きい寝息を立てていた。
その姿に安堵し、尻もちをつくと急に顔や腕が痛くなってきた。全身火傷の状態だったので光治癒をかけた。
「人の子フィーナよ。ありがとう。我が子を助けてくれて」
レイスは人の姿に変身し、フィーナにお礼を言う。戦いが落ち着いたからか、お母さん炎竜もやってきた。大きなお腹をした炎竜だった。
「ありがとう。戦いを止めてくれて」
お母さん炎竜は、竜の姿のままだったが、羽を広げ頭を下げた。本当にリオスを心配していたのが伝わる。
「リオスを温かいところで寝かせたいから、住処へ移動するけれど、あなたも一緒にどう?お礼にたっぷりご馳走を振舞うわ」
お母さん炎竜に誘われたが、50度を超えそうな住処に言ったら、帰ってこれなくなりそうなので断った。
魔炎竜レイスがリオスを抱き上げる。
「お別れだね。リオス」
リオスは大きな寝息を立てている。
「ちゃんと挨拶をさせてやれなくてすまない」
「いいえ。お誘いを断ったのは私ですから。思い出として、この鞄をリオス君に差しあげます。目が覚めたら渡してください」
マウナロア火山へ帰る炎竜達の姿が見えなくなるまでずっと見届けた。
主人公所持金:15銀貨98銅貨




