第30話 公爵令嬢は仲良くしたい
ー翌日。
目を覚ますと、竜の模様が書かれた天井が目に入った。壊れた窓から吹き抜ける風は家屋をガタガタと揺らしている。
「知らない世界だ」
そう呟き、目を閉じる。いつの間にか知らない世界に迷い込んでいたようだ。
「妄想する元気があるから心配ないのお」
光の精霊タマが話しかけてきた。
「誰がタマじゃ!」
アンディーンは隣のベッドで、リオスはリュックの中で眠っていた。
「アンディーンが心配しておったぞお。ここまで運んだのはアンディーンに礼をしておくんじゃの」
話し声が聞こえたからか、アンディーンが目を覚ます。ゆっくり起き上がり、綺麗な水色の髪をなびかせる姿に思わず見惚れてしまった。私を見ると安堵な表情を浮かべ、笑みを浮かべた。
「無事そうだな」
アンディーンの笑顔に少し鼓動が早くなり、思わず目を背けてしまった。
「ありがとう。運んでくれて」
礼を伝えリオスを起こす。丁度リオスを起こしたタイミングで部屋のドアをノックされた。
「お目覚めですか。朝食を準備しました。1階でご用意してますのでお食べください」
身支度を整えてからリオスとアンディーンと共に1階へ行く。
1階へ行くと村長が座って待っていた。
「フィーナ様、大丈夫でしたか」
「昨日は倒れてしまいご迷惑をおかけしました」
「いいえ、こちらも魔力ポーションがあったのに気が回らず申し訳ない」
一心不乱に治療をしていたので、おそらく魔力を回復できるポーションがあっても飲まなかっただろう。
食事を終えた後、昨日と同じ部屋に来て欲しいとお願いされた。まだ何人か治療が残っているようだ。昨日の光景を思い出すと少し吐き気がしたが、英気を養うためにも、ご飯を残さず食べきった。
怪我人のいる部屋に行くと『聖女様!聖女様!』と出迎えられた。昨日の光景から一点して元気な人が増えていた。ほんとうに良かった。聖女様は他にいるが、他の国にいるので否定せずそのまま持ち上げられることにした。
「光治癒」
「聖女様、ありがとうございます」
この問答を何度か繰り返した後、怪我人が部屋からいなくなった。用意してもらった魔力ポーションを飲み干し、一息つく。
部屋の外からは瓦礫を取り除く音や、建物を修理する音が聞こえてきた。
他に治療する人がいないか確認するため、村長を探しているとリオス達が村の子どもと広場で遊んでいた。
「リオスー!水竜討伐ごっこしようぜ!アンディーンが水竜な!!」
村の少年達が水球≪ウォーターボール≫や水風船のようなものを、大精霊アンディーンに当てようとしている。
「貴様らの攻撃なぞ、当たらんわ」
アンディーンはテレポートのような俊敏さで、初級魔法を避けていく。なかなか当たらない的に子ども達も躍起になって途中からその場にあるものを手当たり次第に投げていた。リオスも一緒に水風船を投げて遊んでいる。水球がアンディーンに当たりそうになると体の一部を水に戻し丸い空洞をつくって避けていた。
「アンディーン、ずるいー!」
子どもたちがアンディーンに叫んでいた。全くその通りである。子ども相手に大人げない。子どもの視界に私が入ると『聖女様だー!』と駆け寄ってきた。聖なる力など持った覚えは無いのだが……。
「聖女様、聞いて。アンディーンがズルをするんだ!物があたったのに、あたってない振りをするんだ!」
「えー!そうなの?大人なのに大人げないね。よし!今度はお姉ちゃんが水竜になるね!」
子ども達と少し距離をとり、身構える。
「くらえ水竜!ウォーターボール!」
魔法の軌道を読み直進してくる魔法をウィンドボールで軌道をずらす。すると、子ども達は私を囲い込み一斉に水球や水風船を投げてきた。
「複合魔法撃てー!」
お父様の台詞と全く同じだった。咄嗟に魔法陣を取り出し木壁を自分の周りに出してしまった。べちゃっ、どん、と、とんと木に石や土や水があたる。音が鳴りやんだので、中級魔法を解除するとタイミングよく顔面に水球が飛んできた。
「あ、やば」
アンディーンが呟いた。犯人はどうやらアンディーンらしい。
「子どもかあああああ!ウォーターボール」
複数のウォーターボールをアンディーンに向かって撃ちこむが、全て華麗に避けられた。ぐぬう。アンディーンは髪の毛をかきあげ余裕さをアピールしてくる。何がなんでも当ててやる。連続してウォーターボールを投げ込むと、リオスや子ども達も真似をしてアンディーンに魔法や水で濡れた土を投げて遊び始めた。アンディーンに向かって投げた泥が私の背中にあたり、私が投げた水球は子ども達にあたった。もはや乱戦状態だ。
「そろそろご飯の時間ですよー」
おばちゃんに呼び止められたので、動きを止める。子ども達も『ご飯だー』と一目散におばちゃんに駆け寄る。
「ご飯の前にキレイにしましょうね。布で泥を吹きますよ」
おばちゃんが子どもの顔や腕などを布で拭く。
「アンディーンさんも、泥がついていますよ」
アンディーンは泥のついた布を避けると思ったが、しっかりと顔面で受け止めた。
「魔水竜カリブデス、ここに倒れたり!!!」
おばちゃんが叫ぶ。おばちゃんもしっかり参加していた。子ども達が『うおおおお』と叫んだ。美味しいところをおばちゃんに全部もっていかれるとは。
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