第11話 公爵令嬢は空を飛びたい
カクヨムにも掲載
桜師匠は『ウィンドボール』と唱えると突風のように森を進んだ。
ウィンドボールで体を包み持ち上げる。上空から桜師匠と荷車の様子を見る。
近づいて分かったが、魔物は目の赤い狼だった。
狼の生息地は人里離れたところにある。普段は人前には姿を現さないのに、なぜ人通りの多い馬車道に現れたのか。桜師匠が剣を抜いて魔狼へ切りかかる。
「真夢想流 虧月之太刀」
新月を描いた剣の軌跡が魔狼に当たる。とても綺麗な剣術に見惚れてしまった。
師匠に追いつき、荷車を押していた人に事情を聞くと、護衛として雇っていたDランク冒険者は魔狼を見ると逃げ出してしまったらしい。狼は群れをなして行動するため、一匹ではない可能性が高いと思ったようだ。
逃げ遅れた商人は、狼から目を離すことができず、立ち竦んでしまったということだった。
商人を隣町へ送り届ける途中で薬草採取を済ませ、Dランク冒険者が貰う予定だった護衛の報酬と魔狼素材の報酬を師匠が受け取った。
私も薬草10束と魔木1本を隣町の冒険者ギルドで換金し、40銅貨を受け取った。
「Fランクの依頼を一定数達成しました。Eランクへ昇格されますか?」
換金後に受付嬢からランク昇格を案内された。
「昇格お願いしますわ」
「かしこまりました。魔法使いの昇格試験を行います。初級魔法を狙ったところに打ち込むことができれば合格ですので、力を入れすぎないよう気を付けてくださいね。よろしいですか」
登録試験の情報が届いているからだろうか……。受付嬢の圧がすごくて唾をのむ。
同じ失敗を繰り返さないために、事前に試験の内容を確認した。
三つの岩に何でもよいので魔法を当てれば良いということだった。
登録試験では魔法が使えればOKで、Eランク昇格試験ではコントロールが課題のようだ。風魔法で移動する練習をしたいので、試験では風の初級魔法を使うことにした。
「それではEランク昇格試験を始める。受験者は入れ」
教官らしき男の声が響く。試験会場に移動すると今日こそは合格するぞ!と意気込む人やこれに合格しなかったら魔法使いから剣使いに職業を変更すると話している人もいた。貴族では子どものころから魔法のコントロールを練習するが庶民はそうではないようだ。
「次、フィーナ前へ」
「風球」
初級魔法のウィンドボールを唱え、全身を包み込み持ち上げる。
ゆっくりと目標の岩へ向かい、周りが分かりやすいようにタッチして地面に降りる。
周り『初級魔法で飛、飛んでるだと…!?。馬鹿な…。』とざわついている。
驚く気持ちも分かる。私も午前に知ったばかりだから。
風魔法に適正のある人が真似をしようとしていたが、自身の体重を持ち上げられるほどの魔力を持っていないようだった。
三つの岩にウィンドボール(風球)をあてて、無事合格した。
「師匠。Eランクになりましたわ!」
「おめでとう。冒険者登録をした翌日にランク昇格とはさすがとしか言いようがないよ。ただ人前で師匠はやめてほしい。剣使いなのに魔法使いの師匠と思われたくないからね」
「分かりましたわ。桜さんとお呼びしますわね」
「ああ。それで頼む。敬語もいらない」
「基本的に人と話すときは敬語でしたので、難しいですが、がんばりますわ」
「換金も終わったことだし、夜ごはん食べに行こうか」
「はい!」
主人公所持金:49銅貨




