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取り巻き令嬢たちのメタモルフォーゼ

取り巻き令嬢マルグリットの変身と幸せ

作者: 城壁ミラノ
掲載日:2022/10/20

 ああ、大変ですわ。


 今日は、ハルド・グリーン伯爵のお茶会にお呼ばれ。


 私は、とりまきの一人として参加。


 皆様と同じ流行りのドレスを着て、皆様と同じほどよい笑顔と声のトーンで。


 ここまでは、いつもと同じなのだけど。


 お屋敷のお庭に到着すると、伯爵を取り囲む前に皆様と一度輪になって顔を見合わせた。


「皆様、取乱さずに、いつも通り振る舞いましょうね」


 とりまきの中でも古株の、陰で「エキスパート」と称されている方の号令に皆様と共にうなずく。


 そこへ、グリーン伯爵がご登場。


「ようこそ、皆さん」


 皆様も私も、何事もなかったような笑顔に瞬時に変えて、


「今日は、素敵なお茶会にお招きいただき光栄ですわ〜」


「こちらこそ、来てくれて光栄ですよ」


 伯爵の笑顔、お綺麗ですわ〜。


 ここまでは、いいのですけど。


 ――問題の方が、お見えになりましたわ。


「あっはっはっ! 皆さん! ごきげんよう!!」


 黒マントをバサァ! っと広げて現れたのは、


 クロード・アマデウス辺境伯。


 皆様の間で、変人と囁かれている方……


 一瞬にして、皆様の笑顔は困惑したものになりましたわぁ。


 私の笑顔もついうっかり。


 それでも、先程示し合わせたおかげで私達とりまきの困惑は一瞬で済み、


「アマデウス辺境伯、ごきげんよう〜」


 いつもの調子で、お返事を返すことができましたわ。


「ああ〜皆さん、ご機嫌麗しいようで結構だ。ワッハッハ!」


 また、バサァ! とマントをはためかせる辺境伯。

 辺境伯もご機嫌のようですわ〜。

 いえ、いつもこんな風だけど……いつにも増しているようですわ~。


 かきあげた黒髪に、切れ長の黒い目、ニッと歯を見せて笑うどこかミステリアスで野生的な美貌の方。

 黒スーツと黒マントに隠された体は逞しさが伺えて頼もしいですわ。

 それだけに、性格さえこうでなければと皆様おっしゃるけれど――


 私は、好きですわ。


 辺境伯の変わったところ。


「皆さん、さっそく、今日のお茶会の目的を説明しよう!」


 目が離せないでいると、辺境伯が腰に手を当てておっしゃって、


「目的?」


 目を丸くする私達を、辺境伯はギラつく目で一人づつ見ていきますわ。


 な、なんですの?


「今日のお茶会の目的は、私の婚約者を探すためのものだ!!」


「え!?」


「ヒッ」


 な、なんですって!? アマデウス様の婚約者!


 皆様驚いたり怯えたりして体が揺れて、私の体もつられて揺れてしまいますわ。


「フッフッフ、驚いたかね?」


 震える私達を、辺境伯は嬉しそうでいて怪しい笑顔で眺めていき、


「知っての通り、私の屋敷は辺境の地にあるのでね。そこへ皆さんをお呼びするわけにもいかず、こうしてグリーン伯爵の庭を借りて見合いの場を提供してもらったのだよ」


 グイッと伯爵の肩を抱き寄せる辺境伯。


 伯爵はまだ困惑気味の笑顔ですが、辺境伯と親しげで羨ましいですわ。


「皆さん、楽しくお茶を飲みながら、クロード・アマデウス辺境伯のことを知ってください」


 伯爵のにこやかな顔、心が落ち着いてきますわ。


 それを真似て同じ、にこやかな顔をしてみせる辺境伯。

 その笑顔だと、ほどよいですわ。


 場もほどよい空気を取り戻したと思ったら、辺境伯は急に真顔になり考えるように空を睨むと、


「いや、場を用意してもらってなんだが、お茶を飲みながらでは私の良さは伝えられないな! 次回の舞踏会がいい!! 誰か舞踏会で踊ってくださらないか?」


 私達の輪の真ん中に差し出された手。


 皆様、その手を凝視していますわ。


 私も。


 ……この手を取りたい……


 震える手をなんとか、出したい。


 でも――


 皆様、動かないから。私も動けませんわ……


「……………そうか、残念だ。大人しくお茶を飲もう」


 辺境伯はマントをひらめかせることもなく、後ろを向いてしまい。

 そのお背中がとても寂しそうで……


 その後のお茶会では、気を利かせた伯爵が私達との仲介をしてくださり辺境伯に話しかけたけど、


「言っただろう。お茶を飲んでいる時の私には取り立てて魅力などないんだ」


 そう言い放って、辺境伯は長椅子に寝たまま。


 残念だけど、皆様のあきれたようなお顔から察するに辺境伯は “変人でいて偏屈” という評価は変わらないまま、お茶会は終わり。


 辺境伯にとってもですが、私にとっても無念ですわ。


 ――皆様に合わせずに、差し出された手を取っていれば。


 後悔の気持ちで、その日からあまり眠れなくなってしまった。




 ああ、憂鬱ですわ。


 今日は、アイル・シルバード伯爵のお茶会にお呼ばれ。


 お断りしようかと思ったけど、気分転換になるし。


 綺麗なお庭に到着すると、伯爵ご登場前にまた輪が出来て、


「この間は驚きましたわね。アマデウス辺境伯が急に婚約者を探すなんて言い出して」


 さっそく、辺境伯のお話。

 憂鬱な気分がぶり返して、お返事できずにいるなか皆様はお話を続け、


「本当に、驚きましたわね~。いきなり舞踏会に誘われるとは思いませんでしたわ」


「ええ、それに、断った後の不貞腐れた態度。伯爵も困りきっていましたわね」


「あんな方と結婚したら、どんな目に遭うかわかりませんわ」


「ね~」


 “どんな目に遭うかわからない” そこに魅力を感じる私も変人なのでしょうか?


 それにしても、悪評に憂鬱が増していきますわぁ……


 そこへ、シルバード伯爵がご登場。


「皆さん、ようこそ」


 落ち着いた魅力に溢れる微笑みに、心が癒され落ち着きますわ。そのおかげで、


「今日は、素敵なお茶会にお招きいただき光栄ですわ〜」


 いつも通りに笑顔で言えましたわ。


 ……見覚えのあるマントの方が、伯爵の後ろから近づいてきますわ。


「え?」


「ヒッ」


「ワッハッハ! 皆さん、ごきげんよう!! この前のグリーン伯爵のお茶会以来だね!」


 現れたのは、まぎれもなくアマデウス辺境伯!


 黒マントをまたバサァ! っと広げて。

 怪しくて得意げな笑みも健在ですわ~。


 驚いて前と同じく震えが伝染していく私達を、辺境伯は一人一人見てから神妙な顔つきになられて、


「この間は、冷めたお茶会にしてしまってすまなかったね。グリーン伯爵にも申し訳なかった。あの後考えたんだが、君達は突然舞踏会に誘われて困惑していた。じっくり考える時間が必要だと思い日を置いて、こうして今回はシルバード伯爵のお茶会にお邪魔して返事を聞きに来たというわけだ」


 辺境伯はいつものように、ニッと歯を見せて笑った。


「あ、あの、私達から選ばなくとも、侯爵家などのご令嬢でどなたか相応しい方がいらっしゃいませんの?」


 一人いち早く冷静になったご令嬢の問いかけ。


 辺境伯はほがらかに笑われて、


「ここにいない、ご令嬢達か。残念だが気が合わないんだ。私はこうして私を取り囲んで笑ってくれる君達の方が微笑ましくていい」


 高位のご令嬢達を差し置いて、私達への思わぬ高評価に皆様の辺境伯を見る目が明らかに変わりましたわ。


 そんな私達に、辺境伯は前回と同じく手を差し出し、


「私と舞踏会に行ってくれる人はいるかね?」


 皆様また、手をじっと見つめていますが……


 その顔に困惑はなくて真剣なご様子。


 お茶会の不貞腐れた態度を反省していたことでも、評価が変わったのだわ。

 それに、めげずに誘ってくるのも心が揺れるには充分。


 誰かが手を差し伸べる前に、動かないと!


 思い切りがよすぎて勢いよくあげてしまった手を、辺境伯は素早く掴んで私を輪の中から引っ張りだしてくださった。


「ありがとう」


 胸に響く感動に溢れた声。


 それに、目の前で見る笑顔はとても嬉しそう。


 こちらまで、嬉しくなりますわ~!


「では、さっそく、舞踏会の打ち合わせをしたい。私達はこれで失礼しよう」

「はい」


 辺境伯に手を引かれ去っていく私を見る皆様は、また困惑顔に戻られていた。


 あの輪にはもう戻れない。


 そう確信したけど、後悔はありませんわ。


 皆様、さようなら。




 それから、私はアマデウス様の馬車に乗った。


 アマデウス様はいきなり肩を抱き寄せてきたけど、それがとても嬉しいですわ。


「舞踏会はいつ開かれるかわからない。それまで待てないから、もう婚約してしまいたい。いいかな?」

「はい!」


 心は驚き衝撃を受けている、でも、もう抗えませんわ。


 次の日には、アマデウス様は私の家に婚約の挨拶にいらした。


 突然の報告に、特にお母様は取り乱してしまい、正式な返事は保留としてアマデウス様には帰っていただくことになってしまった。


「ああ! やっぱり、噂通りの変人だったわ!」


 お母様は、カラスに襲われた小鳥のように両手をパタつかせて客間を歩き回った。


「落ち着きなさい」


 お父様がお母様を受け止めた。


「お母様、失礼ですわ」


 抗議の目を向けると、お母様に睨み返されてしまった。


「マルグリット、どうしてあんな方からの婚約を承知したの!? 私達一族まで、変人呼ばわりされることになるかもしれないのよ!」

「やめて、お母様。クロード様は、変人なんかじゃないわ」


 登場はいつもの通り、マントをバサァ! っとひらめかせていたけど、


「挨拶の内容と態度は貴族として、申し分なかったはずです」


 睨み合う私達の間に、お父様が入ってきた。


「ふたりとも落ち着きなさい。アマデウス辺境伯の一族といえば、東のバシレウス、西のアマデウスといわれるほど代々誉れ高い一族だよ。それは、クロード君は変わり者で通っているがね。最初は辺境伯を継いだプレッシャーでおかしくなっているのだと思われていたが、どうやらああいう性格らしい。しかし、彼だけだよ。一族皆が変人であり、そう見られているわけではない」


 お父様は私達の婚約に賛成のご様子、お母様は今度はお父様を睨んでからそのまま私を見た。


「どうして、よりによって彼と婚約するの?」

「私は、クロード様のご性格も全てお慕いしています。婚約は絶対にしますから」


 私とお母様は対立したまま、夜になってしまった。


 眠れずに椅子に腰かけて窓を見ていると、お母様がいらした。


 そのお顔は落ち着いていて、


「あなたは小さい頃から、ピエロとか旅芸人とか魔術師とか、そんな変わった人が好きだったわね」


 お声も微笑みも優しかった。


「お母様、私、変わった人が好きなのではなく、楽しい人が好きなのですわ」


 微笑み返すと、心も打ち解けることができたのがわかった。


「そう、好きな方と結婚できるなら止めません」

「ありがとうございます。お母様!」

「ですが、辺境の地ではなにがあるかわからないし、辺境伯は戦いに赴くこともあるかもしれませんから、楽しいことばかりではないわ。心して行くんですよ」

「はい」


 立ち上がり、まっすぐ向かい合ってうなずいた。




 婚約をお受けできると知らせを聞いたクロード様は、すぐに家に来てくださった。

 そして、玄関を出た帰り際、


「今は落ち着いているが、最初の挨拶の時にお母様が酷く動揺していたのが気になるな。ここは安心していただくためにも、君の嫁入りの支度を盛大にしよう!」

「クロード様が派手好きで盛大にしたいのが大部分、ですわね?」

「正解だ!」


 笑う私にクロード様は、


「君もまんざらでもなさそうだ」


 そう、嬉しそうに笑ってくれたけど、


「ええ、でも、あまり浪費なさらない方が……」

「大丈夫、こんな時くらいしか金の使い道はない。辺境暮らしは君が思う以上に質素かもしれないがいいか?」

「はい」


 質素でも、クロード様となら楽しそうだもの。


 結婚の支度はクロード様のお好きなようにしてもらった結果、私は最上級の純白のドレスを着て、大粒の宝石で飾られたティアラをつけて、白と金の特製馬車に乗ってお嫁入りした。


 お母様も私と一緒に感激して「大切にしてくれそうね」と喜んで見送ってくださった。


町の人々も驚き興奮して祝福してくれた。


幸せですわぁ〜〜!



 到着した石造りのお屋敷は頑丈そうで、辺境伯の立場を教えてくれて緊張してきた。

 けれど、屋敷の中は豪華さは一段と上だけど実家の様子とそう変わらず、始まった暮らしも楽しいものだった。


 使用人達の中には、


「旦那様を抑制して行動を変えられる夫人が来ると思っていました」


 そう言う者もいたけど、クロード様といる私の様子を知ると、


「ますます屋敷が明るくなりましたよ」


 と言ってくれた。


 それから、


「旦那様は、いざ! という時は頼りになる方だから安心ですよ」


 とも教えてくれた。


 そんな様子は、屋敷の中や庭で体を鍛える姿から伺える。


 そして、ある時は銀に輝く鎧を身に着けて居間に現れた。


「えっ、クロード様?」

「そうだ」


 兜で顔まで隠れて、声でしかわかりませんわ。


「あの、なぜ、鎧姿なの!?」

「バシレウス辺境伯との会議があるからだ。迎える支度はしてくれているだろう?」

「はい……鎧姿でお話するのですか?」

「これは改良を重ねた鎧でね、毎回バシレウスに見せて意見を聞いているのだよ」

「意味がありましたのね〜」


 意味がなくてもクロード様ならいいけど。

 驚きで腰が抜けてしまいましたわ。


「この鎧はとても軽いんだ!」


 長椅子にへたりこむ私の前で、クロード様は鎧をガシャガシャ鳴らしながらぴょんぴょん飛び跳ねてみせた。


 こんなこともあるけれど。


 普段のクロード様は常に今まで見てきた通りだから、暮らしには笑いが絶えない。


「一緒にいるだけで、笑ってしまいますわ~」


 思わず本音をもらすとクロード様は、


「この辺境の地に生まれ育って今まで寂しかった! だから、できるだけ一人でも楽しくなるようにしてきたし、こんな私と一緒に楽しんでくれる妻がほしかったんだ。君という伴侶ができて最高に幸せだよ!!」


 そう言って笑いながら、私を抱き上げてくださった。


「私も幸せですわぁ……!」


 いきなり高々と抱え上げられて、ちょっと怖いけど。


 こんな調子でも、お茶の時間のクロード様はいつかのお茶会のように静かになる。

 理由はそのまま。お茶の時間くらい落ち着いていたいから、声のトーンも話し方も周りの殿方と変わらない。 これはこれで、魅力がないとは思いませんわ。


 私もゆっくりとお茶を楽しんでいると、執事が手紙を運んできた。


 それは待ちわびた、お城からの舞踏会の招待状。

 私達はさっそく衣装部屋に向かい、舞踏会に着ていく服を着合わせてみた。


 クロード様は新調した黒いスーツと赤いスカーフに、黒マント。

 鏡に向かい、角度を変えて何度もマントをひらめかせる。


「ご登場の際は、いつもそうなさいますわね。そもそも、なぜマントをつけていますの?」


 他に、一年中マントをつけている方なんていないような。


「いつ、敵と戦うことになるかわからない。そう思うと、常に体を大きく威圧感を与えるように見せていたくてね」


 クロード様は両手を広げて、マントをひるがえして見せた。


「言われてみると、大きく見えるし威圧感がありますわぁ。意味があったのですね〜。なくても、クロード様ならお似合いだからいいですけど」

「フフ、ありがとう。まぁ、後は癖だな。マントをつけたのは少年の頃だが、一度始めると中々抜けたいものだよ」

「一生、抜けそうにありませんわね」


 笑う私を、クロード様はグイッと抱き寄せた。


「君はそんな私に相応しい妻だ。ドレスも似合っている」


 ドレスは黒い立て襟が特徴の、赤地に黒いレースをあしらったもの。

 濃いめの化粧と赤い口紅とよく合っている。

 少し禍々しいというか毒々しいというか。

 小さい頃に絵本で見た、お姫様を苦しめる悪い王妃に似ている気がするけど。


「美しさのなかに、威圧感がある。素晴らしいよ」

「ええ、私もそう思いますわ」


 私は鏡に向かって、ニッと笑うのをやめられなかった。




 舞踏会の夜。

 マントとスカートをひらめかせて登場した私達は、会場中の方々の目を引いた。


「素晴らしいご入場でした。では、マントはここでお預かりします」

「ありがとう、頼む」


 マントは入口で従者にお預かりされてしまったけど、それでも私達はお似合いですわ。


 クロード様と親しい方は、


「アマデウス、ついに素晴らしい伴侶を得たな。結婚したと聞いた時は、相手の令嬢を辺境伯の手に落ちたスミレの乙女のように哀れに思ったが、マルグリット夫人は素晴らしい薔薇の女王だ」


 驚きながらも喜んでくださり、


「変わりましたわね……」


 とりまきをしていた仲間は、ただただ驚きの目で私を見つめてきた。


「ええ――」


 私は懐かしさに遠い目になって、皆様を見つめ返した。


 今は、淡い色合いのドレスが流行っていますのね。


 皆様の中にはもう戻れない。


 そう、もう一度思っても、後悔はありませんわ!


「私、このほうが合っているようですの。オホホ」


 笑ってみると、快感が湧きあがってきましたわ〜。


「アッハッハ!」


 呼応するようにクロード様が笑い、


「さぁ、行こう! 挨拶回りは早く済ませて、ダンスでは真ん中を陣取らねば!」

「ええ!」


 クロード様の腕に腕を絡めて、私は皆様に背を向けると新しい道を歩き始めた。


 どこまでも続く、アマデウス辺境伯夫人の道を! 


 オーッホッホッホッホ〜〜!!




 華麗なる社交界デビューから幾日過ぎたでしょうか。

 今日は、クロード様の御友人方が屋敷に集まっていますわ。お茶会と聞き参加したかったけれど、


「この茶会は私たちだけのものなんだ。すまない」


 クロード様に苦笑いで止められてしまった。


 待っているしかありませんが、さみしくないですわ。

 それどころか、嬉しいですわ!

 だって、御友人の一人についていらっしゃった奥様がかつて一緒に、とりまきをしていた方!


「ラスカ様〜! お久しぶりですわぁ〜」

「マルグリット様〜」


 ひとしきり抱き合って喜びをわかちあうと、


「さぁ、私たちも。お茶会をいたしましょう」


 さっそく、居間にティーセットを用意。


「おすすめの茶葉とケーキですわぁ。どうぞ、召し上がれ」

「ありがとうございます〜……んーおいしいですわぁ」


 幸せな時間ですわぁ〜。


「来てくださって本当に嬉しいですわぁ。私ったら、クロード様と一緒に変人と呼ばれ始めたようですからぁ、他のとりまき仲間だった方々は来てくれていませんの……」


 平気と思って話しだしたけど、さみしくなってしまった。


 笑顔をなくしてしまった私と同じく、ラスカ様も笑顔を消してしまった。その上、真剣な顔つきになってこちらを見つめてくる……?


「マルグリット様……クロード様はただの変人辺境伯様ではありませんわ」

「え?」


 ただの変人じゃなかった?


「それは一体……?」

「クロード様は……秘密結社の一員なのですわ!」

「ひみつ!?」


 秘密結社……?


「それは一体?」

「私の夫もですわ。今、この屋敷に集まっている方皆様そうですわ。お茶会と称して、秘密結社に関する話し合いをしているのですわ」


 ただのお茶会じゃなかった?


「クロード様が、秘密結社、どんな話を?」

「それは、わかりませんわ。秘密結社ですから」

「からかっていらっしゃるの? ラスカ様もそういう話が好きな面白い方と結婚なさったのかしら〜?」

「違いますわ」


 厳しい顔つきで、否定されてしまった……


「では、本当に本当?」

「ええ。クロード様に聞いてみるとよろしいですわ。ただ」

「ただ?」

「聞いてしまえば、秘密結社の一員ですわよ」

「え?」

「まぁ、組織があることを知っている程度。深く関わる必要はないようですけど。秘密は厳守しなければなりませんわよ」

「秘密……」


 私は覚悟を呑むように、ゴクリと喉を鳴らしていた。


「今まで通り、変人辺境伯様の変人夫人として見られることに変わりありませんし。まぁっ、私ったら変人変人と大変失礼なことを申しましたわぁ〜!」


 いつものラスカ様に戻って慌てふためいていますわ。


「構いませんわ」

「マルグリット様……」


 全てを悟ったようで。ラスカ様は目を丸くした。


「これからも、お茶会に来てくださいね。御夫婦で」

「ええ。私たちも秘密のお茶会を続けましょう」


 気持ち怪しげに笑いあい、私たちはカップをかかげた。



 皆様が帰られた後。

 自室に入ったクロード様を訪ねた。


「クロード様、よろしいですか?」

「マルグリット、どうしたんだい?」


 ニッといつもの笑みで迎えてくれましたが。


 私のこわばった顔に気づいて、笑みが消えた。

 さぁ、聞きますわよ。


「クロード様。お聞きしたいことがありますわ」

「なんだね?」

「秘密結社」


 そう口にしただけで、クロード様は目を見開かれ。


 そのまま、迫ってきますわ。凄い威圧感で。

 に、逃げたほうがいいの!?

 わ、笑った?


「ラスカ様に聞いたのか?」


 穏やかに聞いてきた……


「はい」

「そうか――」


 クロード様は少し口をとがらせて考えると、


「ならば、マルグリット。君にも結社の一員になってもらい誓いを立ててもらわねばならないよ」

「は、はい」

「もう覚悟ができていたか。さすが、我が妻だ! ワッハハ」


 クロード様は嬉しそうに高笑いなさってから。


「では、誓いを立てる準備をしよう」


 背中を向けてしまった。


「誓いって? どんな秘密結社ですの?」

「誓いは簡単なものだ。それに、どんな結社か。秘密結社だよ」

「秘密結社なのは知ってますわ。どんな秘密ですの?」

「それは秘密だ」

「えぇ〜、からかっていますの?」


 クロード様は若干からかっているように笑うと、


「そうだな。もう少し時が経ち一員として馴染んだら話せるだろう」


 淡々としていて、隙がないですわ。


「そうですか」

「それまで、秘密だ」


 今度は優しく笑ってくれた。


「はい。楽しみにしていますわ」

「ああ、楽しいことだといいんだが――」


 謎の含みを残されてしまいましたわ。


 変人夫に神秘性も加わった。

 私も変人夫人に秘密結社の一員という立場になり。

 なんだかよくわかりませんが。

 クロード様との人生がますます刺激的で――


 楽しくなりそうですわぁ〜〜!!


ありがとうございました!

モブ令嬢が華麗に変身してヒロインになるお話でした。

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