閑話 ここ2日の余談 前編
上鍵舞奈視点――――――――――――――――――
今日もいつものように朝ご飯を作っておにいを起こしにいく。
「おにい、朝だよ。」
おにいは今日も幸せそうに寝ている。寝ていない時には1度も見た事はない。一体どんな夢をみているんだろう?…やっぱりおにいの母さんの夢とかなのかな?
でも今日は、いつもと違うように感じた。なんだかおにいが遠くに居なくなるような感じがした。
「起きてよ、おにい…おにい!おにい!」
別になんて事はなくおにいは起きて、ただの杞憂だった。そう思って先にダイニング戻って待ってたんだけど、しばらく待って来ないなってなんて思っていたら、おにいの何事かを叫ぶ声が聞こえ、私は心臓が止まりかけた。
私がおにいが声を荒げるのを見たのは過去に1度、あの日以来初めてだった。急いで駆けつけたんだけど、おにいはなんでもないってすぐ行かなくて悪かったって言うだけで何があったのかは教えてくれなかった。
朝ご飯を食べてる間もなんだか普段と違くて、でもむしろ楽しそうな感じで何がなんなのか分からなくなる。おにいに一体何があったの?
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昼ご飯が出来ておにいを呼びに行くとおにいが布団にくるまっていた。声をかけるとすぐに出てきたけど、その顔はなにか絶望したような表情をしていた。私と視線が合うとおにいは取り繕うようにいつも通りの笑みを浮かべた。
昼ご飯を食べてる時に聞いてみても、ちょっと頭が痛いだけってどうみてもそれだけじゃないのに…
「…え?」
おにいが廊下を歩いていくのが見えて思考が止まる。なんで外行きの服?なんで?おにいは自分からどこかに出かけようとした事なんて今まで無かったのに!?それに1人でなんて危険なのに!おにいがどこかに居なくなっちゃう!
急いでおにいを追いかける。 追いついたおにいに必死にしがみついた。
「おにい居なくならないで!…おにいが居なくなったら私…私…」
涙が溢れてきてうまく喋れなくなる。おにいはそんな私の頭を優しく撫でながら、
「いやちょっと買い物に行くだけだから、居なくなんてならないよ。」