第36話 病院
はい、遅刻ですすいません。
深山さんに送迎してもらい病院まで向かった。道中では何も話さない。重い沈黙が車の中を包んだ。
病院に着いて山名さんを車から下ろして連れて行く。幸い肩を貸すほどではない様子だが、まあ俺が信用ならないだけかもしれない。
病院の中はあまり人が居なくて閑散としていた。とりあえず受付に向かう。
「保険証の提示をお願いします。」
そういえば必要だったな。山名さんの方を向くと探してる感じなさげなので仕方ない。
「無いけど診てもらう、料金はもちろん払う。」
そう言ってあるカードを見せる。その家紋をみた受付が、一気に青ざめる。
「い、院長を呼んで参りますのでし、しばらくお待ちください。」
そう言って一目散に逃げていった。…まあ予想通りだから近くの待合椅子に山名さんを座らせて待つ。
すぐに院長らしき人が走ってくる。
「ハア…ハア…大変お待たせしました。こちらにどうぞ。」
院長に連れられ診察室に向かう。院長直々に見てくれるようだ。
「では、どうぞ座って下さい。」
「ああいや、この子を診てください。」
俺に席を勧める院長に対してそう返して診察室から離れる。…病院内もやっぱり男の俺は目立っているけど、診察室前の椅子に座って待つほかない。診察が終わるのを黙って待つのだった。




