また逢えるのか
幼い頃、僕はキミに恋をした。
それは僕にとって初恋だった。
けれど、キミは僕と同じ人間では無いから、みんなと同じ恋はできない。
それでも僕はキミと恋がしたかった。
それを知ってか知らずか、キミは毎日僕と文通をしてくれたよね。
本当は顔を見合わせて話したい。
でも、それを周りが許してはくれなかった。
だから、秘密でお手紙を書こうと思った。
まぁ、まずはキミの住所を知らないといけないから、周囲の人に気づかれないように十歳になったばかりの僕はキミの家探しを頑張った。
探し始めて2年後にやっとキミの家を知れた。
分かったから、このまま君の家に行き、会いたいとも思ったけれど、まだ僕は子供だし、君に見合う人になるまではお手紙を書き、我慢することにした。
最初は僕が一方的に手紙を送っていた。
けれど、送り始めて100通目辺りからだったかな?やっとキミからの手紙が来たのは。
キミからの手紙が来たときは本当に嬉しかったよ。
だって好きな人からの手紙だったからね。
その時の手紙の内容を今でも覚えてるよ。
『幼子の君へ 毎日毎日手紙を私に送ってきたけど、字が下手くそ過ぎて読めない。その読めない字をどうにかしたら? リャナンシーより』
いやぁ、幼い頃の僕も自分の字が汚いことは知ってたけど、読めないほどだとは思ってもなかったよ。
それに、今までのキミへの手紙の返事が字が汚いで済まされてしまって、ちょっと悲しかったね。
僕はキミのために自分の字をキレイにするべく頑張って字の練習をしたなぁ。
だから、1年くらいキミへの手紙を書いてなくて、キミから心配の手紙が来たね。
『汚い字の君へ 毎日来ていた手紙が突然来なくなったけど、なにかあったの?別に心配はしてないさ。だって、人の命を摂る私からすれば人間はすぐ居なくなるからね。まぁ、元気なら手紙の一つくらいは送ってもいいんじゃない? リャナンシーより』
僕は急いでキミへの手紙を書いて送った。
そして、その手紙の返事がすぐに返ってきたから、僕は驚いたよ。
だって、手紙書いてもすぐに手紙が来ることがなかったから。
そこからだったね、僕とキミとの文通が始まったのが。
その文通が始まってから十万通を超えたあたりから、僕はもう君に会いたくて仕方がなかった。
だから、もう、周りの目を気にしないで会うことにした。
手紙には明日キミの家の近くにある森の中の小さな公園で二人だけで出会いましょう。僕に才能をください。待ってます。と書いた。
もちろん返事でダメと断られたく無いから明日にした。
そして明日に日付が変わる頃には、その公園にいるようにしていた。
日付が変わってから少し時間が経ったくらいだろうか。
まだまだ深夜はこれからな時に暗闇の中から一人の女性が現れた。
僕が恋をした相手だ。
僕は駆け足で君のもとへ駆け寄った。
「やっと会えたね。」
僕は嬉しくて嬉しくて、すぐにでも、この想いを伝えたい。
「…なんで、なんで…、…お願いだから、やっぱり才能はいらないって今言って。」
キミはとても悲しいそうだったけど、僕の意思は変わらない。
「いいや、僕は才能が欲しい。僕がキミから才能を貰うことで、キミは僕の命が尽きるまで一緒に居ることができる。一緒に楽しく暮らせらから。手紙なんて書かなくてすむから。だから…ね。」
僕は泣きそうなキミを抱きしめた。
キミと始めて出会ったあの頃よりも大人になり、君の背を越えたことをこのとき実感した。
「キミにとっては人間はすぐに居なくなるのだろう?
だったらキミの記憶に僕が残るように僕が居なくなるまで、一時も離れずにキミと一緒にいたいんだ。」
「……わかったわ。」
人間側が才能を欲してる場合、リャナンシーは才能をあげないという選択は出来ないということを文通をする合間に僕は勉強して知った。
そして、その日を境に僕はキミの家で暮らすようになった。
その後僕は画家として才能を発揮して大儲けした。
もちろんそのお金はキミとの時間に費やしていった。
こんなにも幸せになれて僕はとっても幸せ者だ。
ずっとこのままこの幸せが続けば良いのに。
けれど終わりは来るものだ。
僕はヨボヨボのお爺さんになり、寝たきり状態になっていた。
認知症も激しかったが、キミのことは何も忘れなかった。
そりゃあ、この人生はキミのためにあったのだからね。
「…もう行ってしまうの?」
「そのようだねぇ。今まで僕に幸せをくれてありがとうな。」
「ちゃんと私の中に貴方が居るから、貴方が去っても覚えてるから、だから…」
キミは言葉を探していたけれど時間は待ってはくれない。
「もし、キミと次に会うときは、君と同じ時間が流れる生き物に生まれてくるから待っててな。」
「…うん。待ってる。」
そして、僕は眠りについた。
貴方は嘘をつかない人だと今まで一緒に過ごして、わかった、いや、文通をしている時から知っていた。
だけど、貴方が最後に行ったことはムリだろう。
長年生きてきた私だから分かる。
「最後の最後に私に嘘ついたね…ばか。」