一、少年と死
初めて載せてみました。一応3話完結で2週間ずつ書いていこうと思います。誤字脱字あるかと思いますが楽しく読んで頂けると嬉しいです。感想、ブクマよろしくお願いします。
一、死と少年
——街明かり光る都内某ビル屋上
聞こえる、彼の心臓の鼓動……聞こえる、彼の声……感じる彼の感情。泣いてる、彼が……そして今二人は……
——二〇XX年、東京
会社員として働いていた山井翔は何処となく平凡な日々を過ごしていた。だが彼に取ってはそれが良かったのだ。それは、彼の過去と関係があるからだ。
そんなある日の帰り道、いつものように仕事を終え一人帰路を歩いていると、、、ビルの上に人が立っていた。見た目からして十歳くらいだろうか?。しかし様子がおかしい、、まさか自、、と次の瞬間、翔は全力で走り出した。そう、少年は落ちたのだ……
『間に合え!……』
そう願いながらビルの真下に来た次の瞬間、意識はそこで消える。
目を覚ますと、翔は病室にいた。体の何箇所か骨折しているようだったが命に別状は無かった。一方の少年は意識が戻っておらず寝たきりだった。けれど、翔はひとまず安心したのだった。なんせ、少年は死のうとしていたのだから。しかし、人助けは全てが善であるとは限らない。
数週間後、無事に退院した翔は仕事にも復帰しまた平凡な日常が訪れると思っていた……
「にたい……」
「え?誰だ」
「死にたい、死ななきゃいけない」
聞こえて来る謎の声。
「僕なんか……」
『はっ!』と自宅で翔は目を覚ました。
時計は二〇XX年五月十四日、午前六時。
「なんだ、今の夢は」
少し考え込んだ翔は、いつも通り出勤する。
——地下鉄東京メトロ線電車内
『朝の満員電車はホント人が嫌いになりそうだ。孤独……』
すると次の瞬間、翔に大きな衝撃が走った。それは、まるで何かの鼓動の音。そしてどこか幼い感覚。頭の整理がつかず翔は被汗をかいた。しばらくして、その衝撃は消えた。
『な、何なんだ今のは……』
電車を降りた翔は足早と会社へ向かった。
——都内某病院
数日後、翔は自殺未遂した少年の見舞いに来ていた。受付をして、病室へ向かうと少年は意識を取り戻し起きていた。
「おーす。起きたか。もう大丈夫なのか?……というより初めましてだよな(笑)」
「……」
「まあ、知らない人だし話したくないよな」
そこへ、看護師が入ってくる。
「あら、よかったね。ご両親の方来られて、点滴交換しますね」
「いや、僕はただ助けただけで親族ではないです」
「そうなんですか。ごめんなさい。この子目を覚してからずっと無口で……」
「あ〜そうなんですか。いつ目を覚したんですか?」
「五月十四日だったかな?」
「十四……」
「どうしました?」
「いえ、何も」
すると少年は翔をじっと見つめていた。
「そ、そろそろ帰ります。元気になっていてよかったです」
そう言って、病院を後にした翔。何かを感じたのだろうか。いや、それとも……
それからというもの翔は何度もあの現象を繰り返した。そんなある日の帰りに彼はまたビルの屋上に立つ少年を見つける。
「あいつ、また!」
だが以前とは様子がおかしい。飛び降りる気配が無いのだ。これなら止められる、そう思った翔はビル階段を登った。そして……
「おい!そこで何してる!」
今にも落ちそうなビルの端で夜の街明かりを眺める少年に強く彼は言った。
「落ち着いてさ、こっち来て話そう」
「Tie Chain……」
「え?」
「結ばれた鎖」
「どういうこと?」
少年静かに微笑んで言った。
「おかしいと、思わないの?」
「ん?」
「あの日、僕を助けた君は……僕とリンクしたんだ」
「意味がわからないんだけど?」
「五月十四日からずっと君が聞いた声、そして衝撃それは全て僕だ」
「なんでそれ……」
「だから、Tie Chain。リンクしたんだ。僕らは」
「君の頭の中の考えている事、今この状況が理解できない事も見えるし、聞こえる。そして君も同じように」
翔は、混乱した。この少年は何を言ってるのか、そしてあの現象。
何者なのか……
「僕が誰なのか気になるみたいだね」
「!」
「僕は十年前、ある女性を君と同じようにこのビルから飛び降りようとするのを止めた。その際、手を掴んだ。その瞬間Tie Chainが起き僕と女性はリンクした」
「なんだそれ。呪いなのか?」
「呪いのようで、病でもあるよ」
「病……」
「そして女性は、僕に言った。『運がない子ね。私を助けたその瞬間から君は私とリンクした。そして、私の思いままでの自殺者の思いを背負うことになるわ』てね」
「いままでの自殺者?」
「ああ。Tie Chainがいつから始まったのかわからないが、過去の人の思いを持ちつつ次は自分が自殺者になる。だから呪われた病だ」
『呪われた病か……』
「そして君は、それを引き継いでしまった。そして僕は本当に心をなくし、ここで死ななくてはいけない。もっとも、Tie Chainが起きてからはそうなったも同然だが」
「それは、俺が病んでしまうという事か?」
「リンクしたその瞬間から、君の心は死に向かっているんだ。そして運命も……」
沈黙が流れた。しばらくして少年が切り出した。
「僕はこれを伝えるため、君が引き継ぐために待っていた。ここに来る事はわかってた。そして役目を終えた僕はさよならさ」
少年は、飛び降りようとした。その瞬間——
ガシッ!
「!?」
「お前、今……」
本来、リンクした二人は基本的にお互いが何を考えているのか分かるため、行動も読める。しかし、この時翔は自然と行動が先に出たのだった。
「わからない。わからないさ、今の話も君が死のうとしてる事も」
「っ……何を——」
「でも!多分死んじゃだめなんだ……」
「これは、呪われ——」
「死んじゃダメだ!」
「……」
翔から伝わる視線を感じた少年はニヤっと笑った。
「ふふ、一つ言い忘れてたね。三十日以内に用済みとなった方、つまり僕は死なないと、死までリンクしてしまうんだぞ。これがどういう事か流石に分かるだろ?」
「なら、二人生きればいい。終わらせるんだ。この連鎖を」
「やめた方がいい。自分を滅ぼすことに……」
「うるさい!後がどうこうより今君が生きるか死ぬかなんだ」
少年は少しびっくりした。その感覚はリンクして翔へ伝わった。
「俺と……」
「え?」
「俺と共同生活しよう」