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ネメシスシリーズ

ネメシスという聖女、そして狂った者達の話

作者: リィズ・ブランディシュカ




「私、何か間違ったことをしたかしら?」


「いいえ、ネメシス。あなたは正しいですよ」





 ネメシスは聖女でした。


 聖女は人を救う者。


 だからネメシスは、今日も可哀そうな人を救って、世界が少しでも幸せになるように努めます。





 とある主婦が、スランプに陥っている作家を見て呟きました。


「あの人、いつもぶつぶつ小言を喋ってるから怖いの」


 ネメシスは、趣味の悩みを解決してあげようと思いました。


 だから、すぐにその話を聞いた後、その作家へ注意をしにいきました。


「まわりの人が怯えるから、その癖を辞めなければなりませんよ。それは人の迷惑になっているのです。迷惑をかけるのは悪いことだと理解していますよね?何の関係もない人を怖がらせてはいけまん」






 とある男の子が、一人遊びをする少女を見てつぶやきました。


「いるはずのない友達としゃべってるなんて、気持ち悪い。そんな人間いないのに」


 ネメシスはその男の子の言葉を聞いて、女の子の状況を見てあげる事にしました。


 だからその話を聞いてすぐ、その少女とお話をします。


 少女は現実を見ていないので、ネメシスは優しく諭してあげる事にしました。


「目の前にある現実を大事にしてあげてくださいね。あなたが話しかけているそんな子は存在しないのですよ。だから現実にいる子たちと元気いっぱいに遊びなさい。皆、あなたを気に掛けてくれる良い子ばかりですかから」





 とある男性が奇行をくりかえす女性を見て、つぶやきました。


「爪を噛んだり、頭を掻きむしったして、気持ちが悪い。そんなことをしてるから人が寄りつかないんだよ」


 ネメシスはその男性の不安を払拭する事にしました。


 だからその話を聞いてすぐ、女性をたしなめにいきました。


「あなたが孤独になるのは、みんなとは違う行動をするからです。同じ行動を心がければ、自然と人がよってきますよ」


 とある老人が。

 ネメシスはその話を聞いて。


 とある旅人が。

 ネメシスはその話を聞いて。


 とある。

 ネメシスは。


 とある。

 そして。


 とある。

 次は。







 ネメシスが頑張った分、世界は優しく明るく、幸せになりました。

 たくさんの人の悩みが解決されたからです。


 ただし。

 そうならなかった者達もいます。


 ネメシスが声かけた、


 作家は、

 少女は、

 女性は、


 自分が自分であった事を微塵も残さず、その世界から死に絶えていましたから。


 ネメシスはそれを見て、不思議そうに首を傾げます。


「私、何か間違ったことをしたかしら」









 とある審判者が嘆きました。


「少しでも情報がほしい。私には事実を明らかにする義務があるのだ」


 ネメシスはその審判者の嘆きを聞いて、とある罪人の少女の元へ赴きました。


「あなたはなぜ喋らないのですか? あなたのせいで真実は誰の目にも明らかにならずに、眠ってしまうというのに」


「どうして何も喋れないのですか?理由を教えてください。そうすれば正しい対処をして差し上げましょう。あなたが口を開かないと何もわからないのですから。それに、何か事情があったとしても、あなたが喋らないと何もわかってあげられないのです」


 ネメシスの言葉を来た罪人の少女は口を開いて、たった一音だけを口にしました。


 それ以上は言葉を発する事ができなかったからです。


 罪人の体はたった一音を生んだ動作に耐え切れず、砂と化し消滅してしまいました。


 それを見たネメシスは、不思議そうに首を傾げます。


 心の底から、分からないというように。







「私、何か間違ったことをしたかしら?」


「いいえ、ネメシス。あなたは正しいですよ」




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