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二話

ダイズは、はち切れん計りの勢いで両手を突き出し、地面スレスレ、まさに間一髪の所で、ズッシリと抱きかかえ、赤子の呼吸を耳を近づけ、「ふぅーー」「間に合った」冷や汗を手でぬぐい取る。

 その時

 ダイズは、背中より殺気を感じ取る  この辺りの空気が一気に一変する。 


 「おいおい、厄介な事になりそうだな」しかしその姿は見えない、「陰の者だな」「奴らは、赤子の命まで奪うのかよ」


 するとそこに一人の武士らしいき男がゆっくりとすり足で、徐々に徐々にと、間合いを詰め寄り「その子を置いて去れ、さすればお主の命は、取らぬ故」そう言い放ち、手に持つ日本刀を、下段の構えとり、鋭い眼光で、ダイズを睨みつける。

 鳥鬼の首領ダイズは、臆する事など無く「笑われるな武人よ、我が手にしたこの命、そう易々と手渡すと思うか」そう言い放ち武人を睨み付ける。

 この武人からは、魔力といった物は、全くを持って感じられない、つまりは、魔力や術といった物が有効に飛び交う裏側の戦記の中、剣技のみで、生死を分ける戦いを、幾度と無く繰り返して来た証で有った。

 出来るなこの武人・・・

ジリ、ジリと武人は、ダイズに詰め寄りニヤリと笑い、圧倒的なスピードと、柔軟な身のこなしで、ダイズに詰め寄り、勢いそのままにして、地面すれすれを走らせる日本刀の、剣先を振り上げる。


 その剣先は、空気を切り裂き、うなりを上げ、ダイズに襲いかかる。


 ダイズは、その太刀筋を読み、一歩後退しながら、右手に持つ杖を振り下ろし、それを受け止める。

 キン 金属と金属がぶつかり合う音と共に、激しく火花が飛び散りちる。



 武人は、その手を休める事無く怒涛(どとう)事く攻撃を繰り出し、次第にその音と、火花は激しさを増し始める。

 

 この武人の剣先には、迷いなど微塵も無く、ダイズに襲い掛かる。


 これに対してダイズは、鬼の赤子を腕に抱え、不利な状況の中、右手に持っ杖で、必死に武士の振り下ろす、一太刀、一太刀を、交わしていたが、防戦一方の戦いを、強いられていた。


 「流石は、鳥鬼の首領」「俺の太刀筋を読み受け流すとはな」「だが、次の太刀で終わりだ」


 

 剣を極めし武人はそう言い放ち、下段の構えより中段の構えに変更し、ぐっと腰を落とし、ダイズの首元目指し渾身の力を込め突き始める。

 ダイズは、この攻撃をまるで待っていたかの様に、鬼の赤子を天に向かい放り投げ、一気に武人の懐に詰め寄り、魔力を秘める杖で、胴を叩き付け、落下する赤子をヒョイと掴み取り、片腕に抱いていた。



「しばらく寝ていろ」


 しかし、ダイズと陰の者との戦いは、これで終わりでは無く、むしろ始まりを告げる合図の様な物だった。



ダイズと、陰の者の武人が戦った、この地は、東西方向に、山に囲まれている谷底で、月の光すら届かない闇の中、新たなる陰の者が、その東西の山より、まるで、秋口に吹く、きび嵐の様に、ダイズの元に迫っていた。

 「陰の者いったい何人いる」

 「東より一人、ん、西からも一人この動き、忍びの者か」

 「陰の者、二人同時は、流石に厳しそうだな」

 ダイズは、大きく翼を広げ、飛び出すが、忍びの者達は、吹き矢を吹き、ダイズの足を確実に捕らえる。

 その吹き矢の針の先端には、巨大な鬼すら三分と持たない程の、眠り薬が塗り込まれていたが、鳥鬼足には、羽に覆われていた為、筋肉までその針が、到達する事無く、ダイズは無事に舞い上がる。

 これを見て、西いた忍びの者が、呪文を唱え、手裏剣に魔力を吹き込み、投げると、ダイズを追いかけ始め、ダイズは空中の曲芸師の様に逃げ回るり、急上昇し、急下降すると手裏剣は、少し軌道がずれる「良し、交わした」そう思った瞬間手裏剣は、ススリの肩を掠め取る。

 そう、忍びの者が投げた手裏剣は、ダイズを狙った物では無く、元よりススリに焦点を合わせた物だった。

 

 「おいおい、有り得ないだろ普通、この赤子、おそらく普通の鬼じゃない、陰の者達の真剣さが、ヒシヒシと伝わってくる、異常極まり無い」

「何が有るか、わからんが、こうなると本気で潰しに、行くしか無い」

 

 ダイズは、呪文を唱え杖を空中に突き出し、「オリャーー」魔力を解き放つ、「イケーー」すると、眩いばかりの稲光り共に、イナズマが発生し、西側の忍びの者に向かい烈火の如く勢いで足を貫く


 「ダイズ、呪文を放った後に、隙を見せすぎじゃないか」

 ダイズの背後より声を掛けたのは、ササゲと言う者で、ダイズと同じ年の、才気あふれる鳥鬼で、天才の中の天才で、文献神の中で、その名を馳せており、ササゲを知らぬ者などいない、魔術や飛行術は元より、剣術の達人でも有り、腰には日本刀を携え、息子の亜豆が生まれて間も無く、鳥鬼達が共同生活をする寝ぐらより、姿を消し行方不明となっていた、そんな彼も又、陰の者だった。


 「いつまでも(どうぐ)などに、頼りっているから、こうなる。」

 

 それは、一瞬の出来事だった、ダイズが、背後に気配を感じる間も無く、左の翼を、切り落とされていた。

  ガサッバキバキバキバキ ドサ

 地上数十メートルより落下したその衝撃は非常に強く、ダイズは、軽い脳震とうを起こし直ぐには立つ事が出来ず、更に強固に鍛え抜かれたダイズの肉体に、無数の切り傷や打撲の後が、見て取れた。


 落下しながらも、必死に右手に抱えた赤子(ススリ)を確認し

 「お前大物になるな、この状況でまだ寝てるか」

 ダイズが、落下した場所は、木々が鬱蒼生え茂り、地上より上空を見渡す事が出来ず、ササゲの位置を確認する事は、困難で、この状況は、ササゲも同じで上空を旋回し、地上の様子を伺っていた。


 しかしそこに、東にいた、もう一人の忍びの者が、迫って来る、その者の名は、クノイチのモミジだった。

 モミジは、呪文を唱えながら、ゆっくりと、ダイズに近すぎ右手を、差し上げその魔力を解き放ち、辺り一面に土ぼこりが、舞い上がり、するとまるで、争いが目の前で、行なっているかの様に、二つの土ぼこりが、移動し始める。


 モミジは、「ダイズ様お久しぶりです」そう言うと、深々と頭を下げ「この術は、害をもたらす物では無く」「目をくらます為の物です」


 それは、モミジの言葉通り、上空にいるササゲの目には、土ぼこりを上げながら、戦っているかの様に、見えていた。


 「良く聞いて下さい、ダイズ様の抱きし、その赤子、ある特殊な魔力を秘めし者、故に今始末する必要が有ります」「貴方は、正しき行いをし、時代を背負うお方、ここでその命、奪いたく無いのです」「お願いです、その子を置き立ち去って欲しいのダイズ様」


 その言葉を聞いたダイズは、怒りに満ちた顔を見せ

 「ふざけるなモミジ」「何か他にも方法が、無いのか」


 モミジは、少し渋い顔し、「方法は、一つだけ有ります」「それは、私の故郷で糸切りの里に、#赤子(ススリ)と同じ波動の魔力を秘める、若い夫婦がいます、この二人ならば、鬼の本心を抑え、赤子(ススリ)は、人として生きる事が、出来るやもしれません、」

 「しかし、もし失敗し、鬼の気性が、少しでも、にじみ出る様な事が有れば、容赦なく封印し、浄化します」

 モミジは、ササゲに、気付かれぬ様細工を施し、「シゲ様によろしくとお伝え下さい」

 「解った、モミジ感謝する」

 「久しぶりに、戦友の顔でも、拝みに行くか」


 ダイズは、ササゲに気付かれる事無く一昼夜かけ、なんとか糸切りの里に到着し、以前より、(ひた)しき中だったシゲに、これまでの経緯を話すと、シゲは快く受け入れ、#赤子__すすり__#同じ波動の魔力を持つ、ホオズキとアザミと言う若い夫婦は、赤子(ススリ)に呪文を吹き込み、生粋の鬼の特徴で有る赤い目、ツノ、更には、気性までも、完全に封印し、ユリカと名付け、本当親子の様に、育てる事をダイズに約束すると、ダイズは少しほっとした顔見せ、滅多に出さない、感謝の気持ちを声に出し「ありがとう」するとアザミが、「貴方の常日頃の行いに比べられば、大した事では無いですよ、夫と共に、感銘受けているの、だから引き受けたのよ、私達の方こそ、貴方に感謝してます」「ありがとう」


 内戦が絶えず行なわれている、戦国の世において、如何(いか)にしても、戦争孤児といった者達の存在は、付き物で、その者達は、周りの人々が協力し、一人前になる迄見守っていたが、中には不運にも、奴隷の様に扱われる子供もいた。

 ダイズは、上空からその様子伺い、余りにも、酷い扱いを受ける子供達を、自分達の家路に連れて帰り、食事を与える事は勿論(もちろん)の事、身の回りの世話、武術の稽古など、多岐に渡り世話をし、十五歳の誕生日を迎えるまでと言う条件で、百人以上の戦争孤児の面倒を、行なっている。

 この行いに、ホオズキとアザミの二人は、感銘受け、この先、陰の者と、関わりを持つ可能性が有るにも関わらず、赤子を自分の子供とし、とても良い環境を整え、優しく、育てて行く事となる。


 シゲも又ダイズに、約束をする、「この子十五歳の成人の儀式までは、ここで暮らし」「その後は、幾ら特殊な魔力を秘めて居ても、他の者達と同様に、束縛はしない」ダイズは、その言葉を聞き、軽く頭を下げ、家路へ向かった。


 一方モミジは、ダイズを逃した()ちにササゲにより、後ろ髪を切り落とされていた。

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