表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/94

60.グループ戦よりナンパ?

 グループ戦が始まってから数時間。

 僕たちはサラに会うという予定を変更し、Gレイヤーの街中を歩いていた。


「ちょ、本当こんなにダラダラしていて大丈夫なの?」

「大丈夫だって言っただろ。それにその説明もしたはずだ」

「そ、そうだけど……」


 リアは不安そうにそう言いながらも、舌で棒のアイスをペロペロと舐めている。

 何故かアイスを舐めているだけだというのに、謎のエロスを感じるその光景。

 そのエロスに追い打ちをかけるようにリアの棒のアイスが溶け、上乳に落ち「キャッ!」というリアの色気を感じさせる声と共に底なしの谷間を滑るように流れていく。

 本当に狙ってやっているのかと思うレベルだが、これが素で行えるのがリアである。

 もう周りの視線はリアのたわわに実った胸に一直線。

 これは酷い。男性をダメにするエロ兵器だ。


 エロ兵器を止めるため、僕は口を開く。


「リア、上着か何か持ってきていないのか?」

「一応あるけど何で?」

「いや……何でもないです」


 何も上手い言葉が思いつかなかった僕は渋々そう言うと、リアは不思議そうに首を傾げながら、アイスが垂れないないように喉の奥まで突っ込んでアイスを上下しながら食べ始める。

 もう隣にいるのが嫌になりそうだが、リアに聞こえない程度のため息をつき、僕はエロ兵器ことリアから視線を逸らした。

 全く、この綺麗な水の街を鼻血の街に変える気だろうか?

 本当に公共の場では自分の行動に責任を持ってもらいたい。


 まぁそんなことはどうでもよくて、それよりも現在に至るまでの話を少しする。

 グループ戦が始まった直後、僕はすぐにメニューバーを確認した。

 理由は三ヶ所の位置情報を知るためである。

 確認した結果、ある一ヶ所の小屋を除き、他の小屋は僕たちの現在地からあからさまに遠く設定されていた。

 一ヶ所目は僕たちの現在地から一番近い海からも街からも離れた小屋。

 二ヶ所目は一ヶ所目の真逆にあるショッピングモール近くの小屋。

 三ヶ所目は一ヶ所目と二ヶ所目からも離れた水族館近くの小屋。

 パッと見は適当な配置だが、三ヶ所を点として線で繋ぐと正三角形ができあがる。


 正直、それがどうしたと思う人が多数だと思うが、この配置にはちゃんとした意味が存在する。

 その意味とは、三ヶ所の移動距離を計算して移動時間を出した結果、僕たちはこの三ヶ所のうち一ヶ所にしか行くことが出来ないようになっているということだ。

 つまり、二十四時間という期間で僕たちは一ヶ所を選ばなければならない。

 ということで、まず僕たちはグループ戦の相手であるダックスについて街を歩きながら聞き取り調査しているのだ。


「ダックスって何者なんだろうね」

「さぁーな、嫌われ者には間違いないが」


 街中で聞き取り調査を軽くした結果、ダックスという存在は避けられている。

 本当にダックスの名を聞くだけで嫌な顔もされたし、可哀想なものを見る目でも見られた。

 そんなこんなで、ダックスのことを喋ってくれた人は数少なく、喋ってくれたと思えば「変態集団」や「盗難集団」、「詐欺師」、「モンスタークレーマー」など全て回答が異なっていた。

 何かの噂がダックスというグループにそういうマイナスイメージをもたらしたのか。

 それとも全て事実なのか。

 それは分からないがどちらにしても、面倒な相手だということに変わりはない。


「次はここで聞き取り調査しましょう!」


 リアがアイスの棒を近くにあったゴミ箱に捨て、ニコニコとした表情をこちらに向けながら指でその店を差す。


「リアが食べたいだけだろ……寿司」

「えへへ、そんなことないよぉ~」


 いや、そんなのろけた表情で言われても説得力皆無だから。

 てか、さっきからずっと食べてるけど大丈夫?

 どこにそんな大きな胃袋があるの?

 リアのこのウエストの細さからは想像がつかない。

 って、まさかサラの大食いがうつったとか?

 ……ないな。

 サラならもっと食べているに違いないからな。


 そんなことを考えていると、リアが僕の視界から姿を消そうと動き出す。


「って、勝手に入るなよ」


 そんな言葉を無視し、リアは寿司屋の店内へ。

 僕は仕方なく後を追うことに。


「じゃあ、マグロとサーモンをお願いします」

「はい、分かりました。少々お待ちください」


 リアのやつ満足気な表情でもうなんか頼んでやがる。

 しかも、この寿司屋って回転寿司じゃなくて高級系のカウンター席の寿司屋じゃん。

 ネットの情報によると、回転寿司より倍以上の値段がするとか……。

 おいおい、今日の聞き取り調査……と言う名の食べ歩きでリアの奴いくら使わす気だ。

 もう少し限度を考えて食事は取ってほしい。

 太って後悔しろ!


「ゼロは頼まないの?」

「おい、完全に目的を忘れてるよな」

「そんなことないよ。この時間にサラとお寿司を食べる予定だったし」

「勝手に予定を立てるな。それとサラを救う予定をスルーして寿司を食べる予定だけ決行するなよ」

「だって、ゼロが聞き取り調査するって言うからじゃない!」


 え? これ僕のせいなの?

 何で僕が怒られているの?

 おかしくない?

 敵の聞き取り調査をすることは普通だよね?

 勝手に寿司屋に入って寿司を食べるやつの方がおかしいよね?

 おかしいよな!


「まぁいい。聞き取り調査はここで切り上げだ。それとココには悪いが夕食もここで食べていくことにしようか」

「おー、なんかノリがいいね!」

「いや、時間的にも頃合いだからな。それに明日が本番だ。無理に行動する気はない」

「なんか優しすぎて怖い」


 何が怖いんだよ。

 ずっと僕はリアに優しいだろ?

 優しいよな?


「はい! マグロとサーモン!」

「ありがとうございます! じゃあ、お先にいただきます」


 リアは元気な声でそう言い、マグロとサーモンに軽く醬油をかけて手で豪快に食べる。

 相当美味かったのか、リアは頬に手を添えていつも以上に幸せそうな表情を見せた。


「ん~! 美味しいっ! 次はハマチとタイ、イクラ!」

「じゃあ、僕も同じのお願いします」


 寿司屋の店主は「はいよ」と言い、素早く目の前で寿司ネタを作っていく。

 シャリを整え、包丁で太く切った切り身をそのシャリに乗せ、もう一度綺麗に寿司を整える。

 その手さばきは流石プロ。

 今の一連の動作を機械並みの速さでやっていく。

 そしていつの間にか頼んだ寿司が乗った皿が目の前に置かれていた。


 すぐさまハマチに醬油をかけ、僕も手で豪快に口に入れる。


「美味い……」


 シャリの絶妙な感触、ハマチのしっかりとした弾力、そして無駄な油を一切感じさせない口触りの良い味。

 その二つが口の中で絡み合い、『インパクト』と『優しさ』という異なるハーモニーを奏でいる。

 ハマチの味が口の中で踊っているというか何と言うか。

 本当に口の中に楽しさを感じる。

 これが寿司……というものなのか。

 海鮮丼とは似て非なるもの。

 このサイズ感も食べやすくてとても良い。


「これは無限に食べられそうだな」

「本当にね! じゃあ、どんどん頼もう~!」

「だな!」


 一時間後。


「無限には食えないわ」

「私もそろそろ限界……」

「二人で三十九皿は食べた方だろ」

「そうだね」


 最初は美味しさのあまり手が止まらなかったのだが、途中から喉を通らなくなった。

 最終的には僕が十六皿、リアが二十三皿、計三十九皿。

 そこそこ食べた方じゃないだろうか。

 平均が分からないので何とも言えないが。


「確かによく食べた方だね」

「平均はどれくらいなんですか?」


 リアがそう尋ねると店主は「ん~?」と言いながら、手を顎に添えて少し考える仕草を見せる。

 数秒後「まぁ大体だけど……」と言って口を開いた。


「一人十皿から十五皿ぐらいかな?」


 それを聞くと僕たちはやはり普通よりかは食べた方である。

 だが、その店主は「でも」と言って話を続ける。


「昨日、一人の女の子が七十八皿も食べてたけどね!」

「は!? 私たち二人の倍?」


 リアはその店主の言葉に驚き、目をパチパチしながらバカの子みたいに口を開けている。


 それにしても、七十八皿は凄いな。

 大食いの選手とかそこらへんの類だろうか。

 でも、よくこんな高級な寿司屋でそんなに食べようと思ったものだ。

 相当ポイントを貯め込んでいるやつだったのだろう。


「まぁ連れの男三人は泣いて頭を抱えていたけどね」


 面白そうに笑いながらそう言う店主。

 だが、僕はその言葉に少し違和感を感じ、店主に話しかける。


「へー、それはつまりその人たちは四人で来ていたんですか?」

「そうそう。多分ナンパじゃないかな? 連れの男たちとは顔見知りでね。よく女の子を連れてこの店に来てくれるから」


 この世界にもナンパというものが存在していたのか。


 それよりも男三人のグループが一人の女の子をナンパ。

 ナンパされた女の子は寿司を七十八皿も食べた大食い。

 しかも、高級な寿司屋なのに容赦なし。

 それとその出来事は昨日のこと。


 ――ん?


「「サラ?」」


 僕とリアの言葉が重なる。

 続いて顔が合い、目が合う。

 そして何かを察したように二人で頷き、リアが口を開いた。


「その女の子はサラって名前じゃなかったですか?」

「あー、そんな名前だった気がするな」

「じゃあ、連れの男はダックスというグループじゃ……」

「そう! 良く知ってるね! あの子たちは女好きでよくナンパはするけど、昔からよくここに来てくれているイイ子たちだよ!」


 その店主の「イイ子」という言葉に、僕とリアの顔は軽く歪む。

 こんな反応になるのも無理はないだろう。

 だって、街の人たちから聞いた意見と真逆だったのだから。


 店主は話を続ける。


「でも、なんか街では変な噂をされて嫌われてるみたいだけどね。本当に可哀想だよ」


 アレは噂か。

 確かに異なる意見が多すぎたからな。

 恐らくだが、ナンパした女があまりダックスを気に入らなかったのか、嫌ってそんなデマカセを流したといったところだろう。

 その結果、街の嫌われ者になったと考えれば筋が通る。


 そうなれば、色々と話は変わってくる。

 ここからは僕が店主と話すとしよう。


「店主はダックスとは長い付き合いと言っていましたが、ダックスはグループ戦を頻繫に行っているんですか?」

「ダックスがグループ戦? ないない!」


 苦笑いしながら、首と右手を左右に振る店主。

 そのまま言葉を続ける。


「だって、ダックスはナンパがしやすいという理由でここに三年もいるからね。グループ戦よりあの子たちはナンパ。ナンパをするために貧乏暮らしをしているって聞いたよ」


 店主は軽く声をあげながら笑い、面白そうにそう言った。

 確かにこれだけナンパに執着していると聞くと笑いたくもなるものだ。

 店主の話を聞く限り、ダックスはナンパに命をかけてると言っても過言ではない。

 サラに高級な寿司屋の寿司を七十八皿も食べさせたという行動を先ほど聞いているからこそ、ダックスがグループ戦よりナンパを優先している理由も納得ができる。


 じゃあ、何で僕たちにグループ戦なんて仕掛けて来たんだろうか?

 サラに七十八皿もの高級寿司を食べさせたことから予想するに、昨日のこの店で食事をしていた時点では恐らくグループ戦をするつもりなどなかったと思われる。

 その時点でグループ戦を考えているなら、次の日に戦う敵に対してバカほどGポイントを使うはずがないからな。

 つまり、この店を出た後に何かあったに違いない。


 ――嫌な予感がする。


 まぁいい。

 今日は最後の最後で大きな情報を得られた。

 その代わりに……


「あ、いらっしゃい! お客さんが来たから話は終わりだ。じゃあ、お会計は128000ポイントね!」


 大量のポイントが飛んでいったがそれは仕方ない。

 味も良かったし、別に文句はない。

 だが、僕の奢りという点は気に食わないがな。


 リア、ニヤニヤとした表情でこっちを見るな。

 無駄にムカつく。


「ありがとうございました! また来てね!」

「はーい!」


 もう来ない。絶対に。

 サラを連れて来たら、破産することが分かったしな。

 それを教えてくれたダックスには感謝だ。

 ありがとうと心の中で言っておく。


 外に出ると、空は茜色に染まり、闇が訪れようとしていた。

 時刻は午後五時過ぎ。

 そろそろココの宿に戻るとするか。


「リア、何笑っているんだ?」

「べ、別に! ただ私のおかげで情報が手に入ったなーって、ね!」

「はいはい。ありがとうありがとう」

「何よ、その棒読み! まぁいいわ。奢りでチャラにしてあげる」

「奢りの方が高いわ!」


 そんなツッコミを入れながら、僕たちは足で水を切ってココの宿に戻るのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ