表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/94

4.初戦

「んぅ~! 美味しいぃ~!」


 頬に手を当てながら、クレープを食べるリア。

 まぁつまり、街までの競争に僕は負けたのだ。

 そして約束通り奢らされた。


「それは良かったが、結構な値段するな、クレープって」

「ん? 奢りなので私には関係のない話ですね」


 いや、あるだろ。

 一応、本当に一応、グループなんだからさ。

 グループ全員のGポイントが無くなれば、生活が出来なくなるんだぞ。


 先ほど確認したところ、初期に渡されるGポイントは一人10万ポイント。

 地球上のお金で考えると10万円といったところか。

 そして現在、一個1000ポイントのクレープを二個買ったから2000ポイントも使ったことになる。

 はぁ……これからの生活を考えてくれよ。


 そう言えば、初期のGポイントは10万ポイントに対し、初期のGスコアは30スコア。

 メニューバーを見る限り、Gスコアが300スコアまで増えると今のランクが上がり、次のレイヤーに行けるようだ。

 単純計算で九グループを倒せばいいということになる。だが、それは三人一組のグループを九グループ=27人を殺さなければいけないということだ。


 もちろん、イベントでGスコアを増やすなら話は別だがな。

 そういう方針を早くグループ内で決めたいのだが、僕とリアはクレープを堪能してるし、貧乳の方は未だに合流できていない。


「なぁ、これ食べたら貧乳のところに行くのか?」

「え、もう奢ってくれないんですか?」

「何でまだ奢らなくちゃいけないんだよ。僕はリアのATMじゃないぞ?」

「パパが『男は女のATMになることこそが、立派な男になった証なんだ』って言っていましたよ?」


 どういう教育なんだよ、それ。

 リアの父親は妻に洗脳でもされていたのか。

 流石にリアを見る僕の目も自然と冷たくなる。


「じょ、冗談ですよ。だから、止めてください、その目」

「そうか」


 そう一言告げてから僕はチョコバナナクレープを口に頬張る。

 これ、意外に美味いな。

 僕にとって食事というものは珍しすぎて、ちゃんと味覚が反応するのか心配だったが大丈夫のようだ。

 これが甘味か。そして酸味か。

 食事とは意外と悪くないものなのかもしれない。


『<情報>グループ戦が開始されました。

 相手:ビギナーズキラー

 内容:ババ抜き

 制限時間:無限

 場所:アルコールライフ』


 なんだこれは?

 いきなりメニューバーが目の前に表示され、アンドロイドの声が脳内に響き渡る。


「リアじゃないよな? グループ戦してるのって?」

「私、ゼロの横でクレープ食べてただけですよ」

「だよな。じゃあ、これって?」

「貧乳ちゃんじゃないですか?」


 普通に考えてそうなるよな。

 って、こいつ何で焦った顔一つ見せないんだ?

 今の状況ってかなり危ない気がするんだが。


「負けたら僕たち死ぬよな?」

「え? そうなんですか!?」


 話を聞いていなかったのかい!

 本当に突っ込んでいる場合じゃないんだけどね。


「グループ戦で負けたら、僕たち三人とも死ぬ」

「貧乳ちゃんの戦いなのに?」

「貧乳が戦っているだけで、グループ戦だからな」

「それはヤバくないですか?」


 え、本当に今更ですか?

 クレープなんか悠長に食べてる場合じゃないんだよ?

 美味しかったけど。1000ポイントの価値あったと思っちゃったけど。


「だから、急いで貧乳のもとに向かわないとな」

「えっと、先ほど私たちが走った距離で十分ぐらいでしたから、貧乳ちゃんの場所まで走って三分ぐらいですかね?」


 三分か。

 ルール上、制限時間は無限だけど、ババ抜きなんて三分もあれば決着がつく。

 これは間に合うか、間に合わないか、ギリギリかもな。


「とにかく向かおう。ババ抜きなんて一瞬だ」

「ですね」


 リアはそう言うと、残りのクレープをペロリと食べ、ゴミを僕に渡してくる。


「ん?」

「ゴミです」

「分かっているが……」

「ゴミはゴミ箱に捨てないと」


 なんか正しいこと言ってるみたいな目で見てくるんですけど。

 そしてなんか無理矢理、僕の手にゴミを握らせてきたんですけど。

 僕っていつからゴミ捨て担当になったの?

 それともリアは僕のことゴミ箱扱い?


「……」


 僕は黙ってポケットにゴミを入れ、重いため息を一つ。

 リアはそんな僕を見て、ニヤニヤと笑みを浮かべている。だが、その表情はいつまでも続くことはない。だって、僕が壊すのだから。


「貧乳のもとまで競争だ。負けたら晩飯奢りで」

「ちょ、そんないきなり言われても……って、待ってくださいぃ~!」


 僕は振り返ることなく、真剣に先ほどのやり返しを行うのであった。

 晩飯は出来るだけ高いものにするかぁ~。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ