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2.バイナリーナンバーワールド(BNW)

「こ、ここは……」


 目が覚めるとそこには何もなかった。

 真っ白な空間が広がっているだけ。

 まるで、実験が行われるモルモットの部屋のよう。


「何がどうなっているのやら」


 そんな言葉を発し、小さくため息をつく。

 まぁでも、今の状況は大体予想はつく。

 間違いなく、父さんの仕業だ。

 言うことを聞かなかった息子を監禁したといったところか。


 ――ビビィ……ビ、ビビィー


 僕がそんなことを考えていると、変な音と共に目の前に少女が二人現れた。

 それも全く何もなかった場所にいきなりだ。

 地球上では、まだ瞬間移動の技術は開発されていない。

 ということは……。


「うわぁ~、真っ白!」


 一人の少女は青い瞳を輝かせながら、そう呟く。

 真っ白な肌に金色に輝く長く伸びた髪。

 それと服を着ていても大きいと分かる胸。細いが女性らしい柔らかさを感じさせる脚。

 地球では嘸かしモテただろう。

 それより困惑した様子がないことから、今の状況を理解しているとみていい。


「気持ち悪いところだ、ここは……」


 一方、もう一人の少女は目を細めて、苦手なものを見るように周りを見渡している。

 少し焼けた肌に短く切られた真っ白な髪。

 服はボロボロで、胸は成長途中なのか小さい。脚は男顔負けの筋肉がついており、地球上では運動が得意だったと感じられる。

 そしてこちらも焦りの様子がないことから、今の状況を理解しているとみていいだろう。

 

 しかし、本当に父さんはやってくれたようだな。

 僕を『クラウド上の世界』に送り込むなんて。

 実の息子を何だと思っているのか。

 いや、知っている。

 父さんは僕のことを『モルモット』としか思っていない。

 産まれてから今まで、間違いなくそうだと言える。


「やあやあ、人間たち。こんにちは、キュベレーです」


 声がする方を向くと、そこには服を着ていない人間の姿をした女のアンドロイドがいた。

 服を着ていないと言っても、色はスノーホワイトでマネキンのような感じである。

 人間の体のように胸に突起物はついていないし、下の方も複雑な形をしていない。

 

「キュベレーさん? あなたは誰なのですか?」


 えっと、名前が分からないから今は『巨乳』と呼んでおく。

 巨乳がキュベレーに聞く。

 すると、キュベレーは嬉しそうにこう答えた。


「この世界――バイナリーナンバーワールド。略してBNWの支配者です」


 バイナリーナンバーワールド(BNW)。

 僕たちが地球上にいた時、クラウド上の世界と言っていた世界のことを言うのだろう。

 それにしても、この世界を監視していた僕さえも知ることが出来なかったとは、この世界の支配者――キュベレーはかなりの賢いAIに間違いない。


「へー、お前が支配者か。なら、教えろ、この世界のこと」

「もちろんです。そのためにここに現れたのですから」


 えっと、名前が分からないから『貧乳』と呼んでおく。

 貧乳がそう言うと、キュベレーは笑みを浮かべて真っ白な空間に映像を出す。


「では早速、BNWについて話していきます」


 僕たちは黙り込み、キュベレーとその映像を見つめる。


「BNWでは人間の皆さんに、アバターという体で生きてもらいます。アバターは皆さんの記憶から皆さんと全く同じ体を再現させていたたきました。

 そのアバターは人間の体と同じものという扱いでいいと思います。

 食事、睡眠、排泄などはもちろん。病気にもなりますし、身体能力も地球上にいた時と同じに設定されています。ここまで言えば、分かると思いますがアバターは不老不死ではありません。これは『実力協力制度』によりこういう設定に変わりました。

 ですが、人間とアバターに決定的な違いがあります。

 それが『スキル』と『レベル』。

 アバターは地球上の『存在価値スコア』によって、あらゆるスキルを持っています。

 レベルは一から無限にあります。レベルを上げるとスキルが増えるので、レベル上げはこのBNWでは意外と大切です。


 では、次に『実力協力制度』について話させていただきます。

 実力協力制度とは、三人一組になり、このBNWでランキングトップになれば、BNWから地球上へ戻れるという制度です。

 ランキング方法は『Gスコア』というものを使います。

 これは三人一組のグループのスコアです。このスコアが高いほどランキングは上になります。しかし、Gスコアが0になった場合は強制的に意識が消えます。つまり、死にます。

 Gスコアの他に『Gポイント』というものがあります。これは地球上のお金と同じものという認識で良いと思います。

 このGポイントで食べ物、服、日常品などを手に入れることが可能です。お金と同じ扱いなので、これはグループ共有ではなく、個人的なものになります。


 次にBNWのルールについて話させていただきます。

 BNWのルールは世界の法律を基に作らています。なので、基本的には地球上で犯罪だったことはBNWでも犯罪となります。

 罪を犯した場合の例を今から説明します。

 盗難などの軽い罪はGポイントの半額没収。

 殺人などの重い罪は意識の消去。つまり、地球上でいう死刑ですね。

 先ほど言い忘れていましたが、グループの一人が死んだ場合、強制的に他の二人も意識を消します。

 BNWでは三人一組でしか、生きることを許していないので。


 長いですが、もう少し我慢してくださいね。

 次は『ランク』と『レイヤー(階層)』について話していきます。

 BNWではグループをAからIの九ランクに分けられています。ランクはGスコアの量によって変わり、Gスコアが高いほどAランクに近くなります。

 そしてBNWにはレイヤーが存在します。

 レイヤーはランクが上がることによって変わり、上のレイヤーに行くほど、環境は豪華になり、住みやすくなっております。


 最後に『Gスコア』&『Gポイント』の獲得方法について話していきます。

 Gスコア、Gポイントの獲得法はそれぞれ違います。

 Gスコアは三ヶ月に一度行われるイベントの結果によって得られます。

 Gポイントもイベント結果、それと自分の店を持ち、物を売ることによって獲得可能です。

 そしてGスコア、Gポイントを同時に獲得できる方法があります。

 それは『グループ戦』。これはいつでもどこでも行え、両グループの了承さえあれば、どんな方法で戦ってもいいです。

 ですが、グループ戦に敗れたグループはGスコア及びGポイントを全額、勝利グループに渡すことになります。つまり、グループ戦で負けた場合、死ぬということです。


 以上がBNWの説明です。何か質問ありますか?」


 説明長いな。

 これを覚えるだけでも大変だ。

 でも、当然か。

 ここは地球とは違う場所。これぐらいは普通なのかもしれない。


「じゃあ、あたしから質問いい?」

「はい、もちろんです」


 貧乳の方が質問する。

 それにしても、この貧乳は表情が怖い。


「スキルやGスコア、Gポイントはどこで確認するの?」

「それは耳たぶを指で二度タップしてください」


 僕を含め、三人はキュベレーが言ったことを試してみる。

 すると、目の前にゲームのメニューバーのようなものが現れた。


「それはメニューバーと言って、ゲームなどにあるものと同じと思ってください」


 名前はそのままメニューバーなのね。

 分かりやすくてありがたい。


「そのメニューバーは個人しか見れない仕様になっております」


 地球上の個人情報という扱いなのだろう。

 しかし、グループでも見れないのは意外だったな。


「メニューバーには『スキル』『Gスコア』『Gポイント』『ランク』『レイヤーのマップ』が見れるようになっております。それに加え、日付、時間、グループの一人一人の現在地。グループ内での連絡も可能になっております」


 このメニューバーさえあれば、ある程度のことが確認できるということか。

 グループのGPS機能と連絡機能は重要になりそうだ。


「これがあたしの『スキル』! フンッ……」

「私の『スキル』はこれなのね。意外といいかも!」


 何々? グループなのに発表し合わないの?

 どんなスキルか教えてくれよ。


 こういう時は自分のスキルから言って……


「……バグか……」

「いえ、それがゼロ様のスキルです」


 急に会話に入ってくるな、キュベレー。

 てか、これはスキルと言えるのか?


 そこに書かれていたのは……


 ――なし


 これって果物の「梨」? それともシンプルに「無し」?


「ゼロ様、後者でございます」


 心を読むな、キュベレー。

 まぁ、ということは、僕のスキルは『なし』か。

 って、納得できるか!

 何で僕だけスキルが無いんだ?


「それは説明したように、スキルは『存在価値スコア』によって決まるからです」


 だから、僕の心と会話しないでもらえるかな?

 巨乳と貧乳から変な目で見られてるから。

 てか、僕の『存在価値スコア』ってどうなってたんだよ……。 


「0です。ゼロ様だけに」


 0?

 存在価値スコアの5つの基準が全て0?

 僕が何したというのだ。

 いや、これは父さんの仕業とみて間違いない。

 僕がやった『課金』のようなものがそんなに許せなかったのか?

 まぁいいか。終わったことだ。


「ねぇ、いつ始めるの?」

「いつでもいいですよ。グループ三人が望むなら」


 貧乳が僕の方を睨んでくる。

 いや、喋れよ。


「僕はいつでもいいけど」

「私もいつでも構わないですよ」


 僕と巨乳がそう伝えると貧乳が口を開く。


「キュベレー、始めて」

「はい、喜んで! では、バイナリーナンバーワールドのIレイヤーへ転送します」


 そう言って、キュベレーは何かポチポチと自分のメニューバーらしきものをタップする。


「いってらっしゃい! そして……Aレイヤーで待ってますよ」


 その言葉を最後に僕たちの意識は飛んだのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく読ませていただきました。小説家になろうの作品はあまり得意ではないのですが、流石に評価の高い作品は違いますね。 主人公からはとっつきやすくも謎が多くミステリアスな雰囲気を感じ、先のお話…
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