表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/94

27.洞窟

 僕たちが動き出してから五時間以上が経ち、現在は川の近くにある洞窟にいる。

 外はもう真っ暗で頼れるものは星光りとサラが生成したマッチで火を付けた木の枝のみ。

 こういう時、サラの生成はやはり役に立つ。


 夕食の方は何とか無事に手に入れ、料理なんか出来ないので、ただ焼いたものを食べた。

 でも、量的には充分と言える。

 食べられそうな山菜や木の実。サラの狩った鹿や兎、狐などの肉。

 昨晩のエリカの料理に比べれば、それは廃棄物に近いが、今の僕たちにとってはご馳走であった。


 サラは「懐かしい」とか言って笑っていたし、地球上ではこのようなものを食べていたのだろう。

 リアの方は少し嫌そうな顔で口に運んでいたが、まぁ当然か。

 四日間ずっとこの料理、いや、こんな食べ物だと思えば、そらそんな表情にもなる。


 僕は食べ物ならある程度のものは食べられるし、夕食はそれほど苦ではなかった。

 というか、現在進行で僕は苦を味わっているので、むしろそっちをどうにかしたいと思っている。


 川に向かう時、夕食の調達、食事中、そして今。

 リアはほとんど喋ることなく、覇気のない表情をしている。

 一度、保留したからと言って、心から完全に消えるわけでもないので仕方いのだが、とても気まずく、このテンションのリアを見ていると罪悪感しか感じられない。


 そろそろどうにかしなければ、明日も明後日もこれではイベントどころじゃない。

 間違いなく僕たちのグループは死ぬだろう。

 そのような状況にしたのは僕だが、どう説明しようか迷っていた。

 もちろん、一族のことは言えない。

 しかし、そうなるとグループ戦を受けた理由の答えがなくなる。

 嘘をつくのも考えたが、もうこれ以上は嘘をつきたくはない。

 だって、リアのこんな顔は見たくないからな。


 とにかく話をして前に進むしかないか。


「なぁ――」

「えっと――」

「「はっ!?」」


 僕とリアの声が重なる。

 思わず僕たちは顔を見合わせて、目が合うと下に逸らしてしまった。

 まさか同じタイミングで、話し出すなんて思ってもいなかったからな。


「リ、リア、先にいいぞ?」

「いや、ゼロから話しなよ……」


 おいおい、僕は話し出しただけで、話す内容を考えていないんだ。

 出来れば、リアから話してもらいたいのだが、こういう時はどうしたらいいんだろうか?

 それにまた変な空気になったし……。


 ――ポツッ!


「キャッ! な、何!?」


 洞窟の奥から不思議な音がしたせいで、リアが驚いて僕に抱きついてきた。

 その手、足、体、声はビクビクと震えていて、高速で動く鼓動の音さえも僕の皮膚から伝わってくる。

 パニック状態に近いので、とにかく安心させるために、いつも通りテンションで口を開いた。


「す、水滴じゃないのか?」

「ふぅ~、そ、そうだよね!」

「それよりも――」

「あ、ごめん……」


 僕がこの状況を目で訴えるとすぐにリアは離れた。


「別に謝ることじゃない。リアは元々ビビりだから仕方ないよ」

「なっ! ビ、ビビりじゃないし! それに今のはたまたま体が動いたと言うか! それだけだし!」


 何で強がっているんだよ、リアのやつ。

 昨晩はあんな弱音を吐いていたのに。

 全く、よく分からないやつだ。


 それより何はともあれ会話を始めることに成功した。

 このチャンスを逃すわけにはいかない。

 というわけで、沈黙になる前に仕掛ける。


「そうか……それよりごめんな、グループ戦の件黙ってて」


 僕はまず謝罪の言葉を送った。

 どういう反応をさせるかドキドキしながら、リアの言葉を待つ。

 正直、謝っても許してくれなかったら、まぁ謝り続けるしか選択はないのだが、すぐには許してくれない気がする。

 あんなに顔をぐちゃぐちゃにして、怒ってきていたからな……。


 そして数秒後、リアが顔上げてゆっくりと口を開いた。


「あー、うん。もういいよ、今更どうしようもないし」

「あ、え、ああ……うん」


 僕の考えを裏切るかのように、意外とあっさりと許してもらい、ホッとしたが驚いてしまった。


「本当はね、グループ戦はすぐに仕方ないと思えたの。でも、ゼロに隠し事をされていたことが許せなくて。グループは何でも話し合える仲だと思っていたから」

「それは……ごめん」

「ううん、いいの。正直、私もゼロたちに話せないことはあるし、それにまだ三ヶ月も一緒に過ごしてないのに、隠し事を全て言える仲になるなんて無理だなーって思ったし」


 リアはずっと心の中で考えていたのか。

 そして納得したからさっき話しかけてきたのだろう。


「まぁだからね、隠し事は言える時になったら言えばいいと思う。けど、やっぱりグループ戦とか重要なことは言うようにしてほしい。こ、心の準備とかあるし」

「だよな、次からグループ戦の件はすぐに相談するよ」

「うん、お願いね」


 リアは話が終わると「ふぅ~、スッキリしたぁ~」と笑顔で天を見上げた。

 これで一件落着といったところか。

 まぁリアが理解の早いやつで良かった。

 イベント時間は限られているからな。


「それよりグループ戦ってイベントの順位で競い合うんだよね?」

「ああ。だから、間接的なグループ戦になる」


 間接的なグループ戦と聞き、リアはホッと顔の筋肉が柔らかくなる。

 直接的なグループ戦より間接的なグループ戦の方が恐怖心はマシなはずだからな。

 グループ戦の内容がイベントの順位戦で救われたって感じか。


「で、グループ戦の相手はどんなグループなの?」

「Iレイヤー最強とか言ってたな」

「え、ちょ、Iレイヤー最強って……」


 まぁそら驚くよな。

 さっきの話をする前に話していたら、更に追い打ちをかけるところだった。

 いや、少し恐怖心を抱かしてしまったかもしれないが、ここで嘘をつけば油断する可能性があるので仕方ない。


「ほら、イベントランキング一位にサタンってあるだろ?」

「うわっ、本当だ! しかも、もうイベントポイントが365ポイントだし」

「僕たちはまだ30ポイントだしな」


 鹿は20ポイント。兎、狐は5ポイント。

 この三匹からある程度は大きさを見れば、生き物のポイントは予想できそうだ。


 それよりハンスのグループの強さは桁違いである。

 二位でも155ポイント。

 倍の差をつけている。


 これは強さを見誤った気もするが、こちらがまだまともに狩りをしてないということもある。

 明日の晩にどれだけ差が埋まっているかにもよるが、考えを改め直す必要があるかもな。


「こんなのに勝てるの? グループ戦に負ければ死ぬのよ?」

「今のままでは勝ち目はまずない。だが、まだイベントが始まって半日。こちらにはサラがいるんだ。様子を見ながら今後の対策を考えていこう」

「まぁ焦ってもどうしようもないしね。ゼロの指示に従うわ」


 リアは恐怖という恐怖に畳み掛けられたせいか、もうある程度のことには耐性が付いたようだ。

 先ほどまでの恐怖心がほとんどない。

 もうイベントとグループ戦に集中しているといったところか。

 こういう切り替えの早さには有り難さを感じる。


「むぅ~! 二人ともイチャイチャしすぎ!」


 サラが頬をハリセンボンのように膨らませ、こちらを睨んで来た。

 確かにサラそっちのけで話していたからな。

 まぁイチャイチャは一切してないが。


「イ、イチャイチャなんかしてないわよ!」

「そうだぞ。サラをほっといていたのは悪かったが、そう怒らないでくれ」


 てか、何で怒ってるんだよ。

 やっぱりこいつも寂しいとか思うのか?


「まぁいいけど。それよりお菓子!」

「ないわよ!」

「リアのポケットになら入ってる」

「私のポケットを何だと思っているのよ! ゼロでも舐めときなさい!」


 何でそうなるんだよ、リア。

 僕の体は飴じゃないぞ?


「べーろんっ! 塩の味がする! 塩飴?」

「違うよ! そんなことより舐めるなっ!」

「リアが舐めろって」

「舐めません。人を舐めていいのは犬ぐらいだ!」


 全く、犬の方が賢いんじゃないか?

 サラはまだまだ常識がないな。

 戦場では教育者の一人もいなかったのだろうか?

 いたならその教育者の常識がぶっ飛んでいたとしか言いようがない。


「はぁ……もう寝よう。今日は疲れた」

「そうね」

「でも、どこで寝る?」

「「あ……」」


 サラの質問に思わずリアと反応が被る。

 よく被る日だな、今日は。


「じ、地面しかなくないか?」

「枕がないと寝られないわ!」

「あたしも枕は必須」


 いや、枕とかないし。

 せいぜい鞄が枕の代わりになるぐらいだ。

 と思っていると、二人が僕の腕を物欲しそうに見て来る。


「ん?」

「腕枕してほしいなぁ~」

「腕枕! 腕枕!」


 やめろ、そんな表情をするのは。

 腕枕ってかなり負担がかかるんだぞ。

 明日、腕が上がらなくなったらどうする気だ。


「はぁ……分かったよ!」

「サラ、イエーイ!」

「いえーい」


 僕はあの二人の瞳に負け、腕枕を承諾してしまった。

 満面の笑みでハイタッチしている二人を見ると、まぁ良かったのかなと思うけど、明日の腕が心配で仕方がない。


 僕が寝転び、二人が僕の腕に頭を乗せる。

 思った以上に軽くて驚いたが距離が近い。


 ――グゥー!


「サラってば、さっき食べたのにもうお腹減ったの?」

「あたしじゃない。ゼロ」

「違うって。それより寝るぞ」


 僕のその言葉に「おやすみ」と二人と眠りの挨拶を交わし、目を瞑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ