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14.友達であり、妹のよう

「サラ、朝食どうする?」

「クレープ! リアのせいで口がクレープ」

「あー、分かったわ」


 朝食の会話をしながら、私たちはハントするのにオススメな草原へ向かう。

 てか、口がクレープって何?

 って、口端からヨダレ垂らしてるし、本当にこの子は……。


 数分後、サラの瞳までもがクレープなり始めた頃、やっとクレープ屋に到着。

 私はチョコバナナを頼み、サラはイチゴとカスタードマンゴ、焼きリンゴホイップの三個を頼んだ。

 朝からそんなに甘い物を食べて、気分が悪くならないんだろうか?


「一個持ってて。でも、食べちゃダメ」

「はいはい、本当によく食べるわね」


 三個頼んだけど、持てないからって私に持たせるなんて。

 全く、もう少し考えて行動してほしいわ。

 まぁそんな感情は表には出さないけど。


「美味しい! クレープはクレープのクレープだぁ」


 一体、どういう意味なんだろう。

 クレープしか言ってないんだけど。

 でも、サラってば幸せそうに食べるわね。

 その姿を見ているだけでほっこりするわ。


「チョコバナナも食べたい」


 ペロリとイチゴクレープを食べると私の手から持たせていた焼きリンゴホイップクレープを奪い、眩しい瞳をこちらに向けてくるサラ。

 これ、私の朝食なんだけど……。

 迷った末に物欲しそうな瞳に負け、「一口だけよ」と言い、サラの口元にチョコバナナクレープを持って行く。


「あーむっ! んぅ~、王道の味!」

「ちょ、一口大きすぎなんですけど!」


 私はむぅーと怒った表情を見せるが、クレープにしか目がないサラは完全にそれをスルー。

 思わずため息をこぼし、けど何だか悪くないと思いながら苦笑いを浮かべた。


 私にとってサラは初めての女友達だけど、何というか世話が焼けて、純粋無垢な感じを見てると妹みたいで可愛い。

 妹がいたらこんなのだったのかなぁーとか思いながら、この子と接してると案外楽しいものだ。


「ふわぁ~、美味しかった!」


 私がそんなことを思っているうちにサラの手からクレープが消えていた。

 その瞬間、私の神経が何かを察し、手に持っていたクレープを一気に食べる。


「ゆっくり食べればいいのに」


 ゆっくり食べていたら、サラが絶対に欲しがるでしょ!

 想像しかつかないわ。


 私がクレープを食べ終わると、サラが掌を出して口を開く。


「ゴミちょうだい。捨ててくる」


 私はサラの言葉に甘え、クレープを包んでいた紙を渡す。

 サラはそれを受け取ると、すぐ近くにあったゴミ箱に捨てに行った。


 意外とこういうところは真面目だ。

 ポイ捨てなどをするかと思っていたが、そういうことは一切しない。

 むしろ、ゴミ捨てを楽しそうにする。


「捨てて来た」

「ありがとう」


 それにしても、草原までは意外と遠い。

 前に草原からこの街に走ってきた時は一瞬だったのに。

 もしかしたら、サラと二人という状況に緊張してるのかも、否、不安に思っているの間違いかな。

 まぁ会話でもして気を紛らわせればいいか。


「その鞄、似合ってるわね」

「小さくていい。リアのそのリュックもいいと思う」

「でしょ! 可愛いでしょ!」


 ただサラに褒められただけなのに、なぜかテンションが上がってしまった。

 今まで褒められるという経験が少なかったからかな?

 でも、本当に嬉しい……えへへ。


 この鞄はゼロが奢ってくれた日に私、サラ、ゼロの三人で選んだもの。

 本当はみんなとお揃いにしたかったけど、思った以上にセンスが合わなくて、それぞれ似合う鞄を選んで買うことになった。


 私が買ったのは白色のミニリュック。

 あまり量は入らないけど、小さくて軽いから持ち歩きやすく、それに可愛い。


 サラが買ったの茶色の腰に付けるタイプの鞄。

 正直、私はこのような鞄のタイプはコスプレ、もしくは美容師のハサミ入れなどでしか見たことがなかった。でも、戦いに特化しているサラが付けると意外と様になっていてカッコイイ。

 サラ自身も使いやすいと絶賛していた。


 最後にゼロが買ったのは白黒のショルダーバッグ。

 とにかく身につけるものは白黒にするという謎のこだわりがあるらしく、唯一白黒の柄であったショルダーバッグにしたようだ。


 ゼロは服もパンツもパジャマも、髪の毛だって白黒だし、本当に特殊な趣味をしているというか、何というか。

 パンダかシマウマにでも育てられたとしか思えないぐらい白黒している。


「リア、あれ見て」


 少し沈黙が続いていたが、サラがそう言って何かを指差す。

 よーく見てみると、それは大量の人がこちらに向かって歩いて来ていた。

 恐らくこの街の人ではないだろう。


 言い忘れていたが、このIレイヤーには街がたくさんある。

 Iレイヤーの人口は約76億人、グループ数にすると約25億グループにという規格外の多さで、それに伴いIレイヤーの推定面積は地球で例えるなら、ロシアとヨーロッパを合わせたくらいだ。

 なので、街=国という感覚に近い。


 それよりこの大量の人の正体を私は知っている。

 これは全て『ゼロに会いに来た人』だ。

 想像以上で驚いているが、本当にゼロが行ったことの大きさを痛感させられる。


「上手くいったみたいね」

「これでクレープいっぱい食べれる」

「サラはご飯のことしか頭にないのね」

「うん」


 私は「全く……」と苦笑いしながら、「でも、本当にこれならいっぱい食べれそうね」と言った。

 まぁこれだけ人が集まったのは私のおかげだけどね。


 前に出会ったスキル『撮影』の男がIレイヤーで記事を書いてると聞き、Iレイヤー中に広まるように仕組んでいたのだ。

 我ながら、天才的な発想と行動力だったと思う。


 それにしても、ゼロ驚くだろうなぁ~。

 けど、絶対に疲れた表情で「死ぬ」とか言いそう。

 その時は頭よしよしと撫でてあげよう。

 照れて復活するはずだ。


「サラ、私たちもレベル上げ頑張らないとね!」

「うん、頑張る」


 私はそう言い、大量の人を横目に街をやっと出たのであった。

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