13.ハントへ
四月二十三日。BNWに来て四日目。
一つのベッドに三人で寝る生活にも慣れ、熟睡できるようになった。
時刻は午前八時。Iレイヤーのみんなもうとっくに動き出している。
そんな時間に私は起きた。
私の名前はリア。
グループ名――ラックの一人である。
可憐で美しい顔と天から与えられた女性の理想的なスタイルの持ち主。
え? 自分で言うなって?
別に事実なんだし、いいでしょ?
と言っても、私はまだ18歳。
大人に囲まれて育ったせいで、大人ぽい性格だが子供の心を忘れたわけではない。
本当は甘えたいし、ワガママも言いたい。
でも、最近はそんな願いが、少しだが叶っている。
BNWに来て、ゼロとサラという年の近い人に出会ってからは、そんな子供の心が時々出たりすることがある。だから、最近は意外と幸せ。
「ちょ、また触ってる!?」
「ん……?」
私の隣にいるゼロがまた私の大きなおっぱいを触っている。でも、今回は寝ているようなので、無意識みたいだ。
だからといって、触っていいことにはならないけどね!
「ゼロの……おっぱい大好き星人! 変態!」
「朝から何だよ? え……あ、柔らかい」
「揉むな! はぁ……」
私はため息をつき、ゼロの手を払ってベッドから降りる。
二人はまだ寝ている。先ほどのゼロの言葉は寝言だ。
昨晩も楽しく、間食をしながら話し込んでいたから仕方ないだろう。
今日からは私とサラがハント。ゼロが商売をすることになっている。
ゼロの商売はこの部屋で午前九時に始まるから、私とサラは一時間後にはここを出なければならない。
そういうわけで私はベッドの死角で先に着替えることにした。
ハントは動物を狩るらしいので、今日は動きやすい、ノースリーブの薄ピンクのシャツに下はデニムの短パン。それとくるぶしまでの靴下という格好。
これで着替えは完了。
最後に部屋の鏡でチェックする。
「うんっ! やっぱり私は何着ても似合う!」
「ナルシストかよ」
「わっ! って、ちょ、着替え覗いてたの?」
「いや、今きたから見てない」
ゼロは欠伸をしながらそう言う。
本当だろうか?
ゼロを弄るために、下着をチラ見せしたり、エッチな言葉や言い回しをするのは、何というか楽しいから恥ずかしくないんだけど、不意に見られたりするのはなぜか恥ずかしい。
私も一応、否、完全な女の子だし、それも思春期真っ只中。
これが普通だよね。
サラがゼロの視線を全く意識せずに着替えているのを見ると、何というか感覚が狂う。
戦場で着替えを隠す暇なんてなかったのは分かるけど、ここは戦場ではないし、サラはもう少し気にするべきだと思う。
「サラは寝てるの?」
「ああ、あいつは寝ることか食うことしか、頭にないからな」
「確かにその二つの光景しか見た記憶ないわね」
「だろ。まぁ今日から昼間は別行動だし、色々と頼むぞ」
「うん、頑張るわ」
私はサラと二人っきりになることを思い浮かべ、不安になりながらも表ではそう言った。
その後、自然と私とゼロは着替えを交代。
私はサラを起こすためにベッドへ。
「ねぇ、サラ! サラってば!」
「もぉ~、食べられないよぉ~」
夢の中でも食べているのか、この子は。
てか、食べられないなら食べるな!
お・き・ろ!
「あ、こんなところにクレープが――」
「ど、どこ! ク、クレープは?」
「そんなのないわよ。それより起きたなら着替えて」
残念そうに肩を落として、鞄のもとへ歩いていくサラ。
それにしても、ちょろい。
餌に群がるマグロよりちょろいわ。
しかし、夢の中でお腹いっぱいだったのに、現実に来るとお腹が空くのね。
あんなに早く起きれる人、初めてみたわ。
流石、地球では戦場にいただけあるわね。
「動きやすい服装にするのよ」
「ん、分かってる」
そう言って、適当に鞄から服を取り出し、着替えるサラ。
当たり前のように着替えを隠すことはない。
可愛らしい花柄の下着が見え、真っ白な肌が窓からの日差しを浴び、輝いている。
「朝食はどうする? 別々か?」
着替えが終わったのか、自然と現れるゼロ。
もうサラの着替え姿には慣れたのか、一度目に入れたがすぐに視線を私に向けた。
「そうね、今日はもう時間もないし。そうしましょうか」
「分かった。あ、無駄遣いするなよ」
「しないわよ。ゼロの奢りじゃないんだから」
頬を緩ませて、そう言うとゼロは「僕の奢りだと無駄遣いするのかよ」と朝から相変わらずのツッコミを入れてくる。なんか楽しい。
こういう普通の会話が私にとっての幸せ。
学校とか行っていたら、友達とこんな感じだったのかしら。
「用意できた」
その声が聞こえる方を見るとサラが鞄を持ち、いけるとアピールしていた。
確かに私は動きやすい服装と言ったけど、もう少し服装は考えてほしい。
サラの服装は上は可愛いクマが描かれたヨレヨレのTシャツ。何で買ったばかりなのに、ヨレヨレなのとツッコミを入れたい。
下は緑色のガウチョパンツ。まぁ下は許そう。
「じゃあ、行きましょうか」
「うん」
そう言い、私たちは自分の鞄を持ち、ゼロの「頑張れ~」という棒読みの言葉を聞き、部屋を出るのであった。




