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第二話:TS勇者


「俺はこのアルヴァールの勇者ツナリだ!この世界の人間なら知らないはずがないだろう!!」


彼女はそう言うが、俺はこの世界の人間じゃないから知るよしもないのだが……


「なぁティエス。知ってたか?」


『ああ、無論知ってたさ』


なるほど、確信犯か。

いや策士と言うべきか。


「思い出したぜ……お前さっきからその肩に乗ってるやつにティエスと言っていたな。そしてこの性転換。つまりお前はアルヴァール十二神性転換のティエスだな!?」


思い出したと言う言葉が気になるがさすがは神。


『いかにも。我こそがティエスである。崇めるが良い』


俺の肩の上で腕を組みふんぞり変える。

神の威厳を見せるといったところか。


「誰が貴様らみたいな変態十二神を崇めるか!!」


ん?変態十二神?

おかしい……ティエスってアルヴァールを管理する神って言ってなかったか……?


『おい、口の利き方には気をつけろ人間。誰が変態十二神だ』


ティエスの額にはっきりと怒りマークが浮かび上がった。


「はっ!だってそうだろう?この世界に変態性癖を生み出した元凶と言われているじゃねぇか!お前らのせいで世界に数多くの変態が生み出されたんだろうが!!」


うわ、それは最低だな……


『何をぬかしおるかガキが……!いいだろう、その態度改めさせてやる。神の怒りを買うとどうなるか教えてやろうぞ!!』


俺の肩に乗るティエスがツナリに向けて手をかざす。

するとポンという音とともにどこからともなく現れた煙が彼女を覆った。


「けほっけほっ……私に何をした………のよ……あれ?」


煙がはれ、中から出てきたツナリは先ほどまで体に引っかかっていた男用の服がなくなり、その代わりに胸部を覆う鎧とヘソだしスタイル、スパッツの上に短いスカートといういかにも女性冒険者という格好になっていた。


「な、なな、なんて格好させるのよ!……ってなんか語尾もおかしいし!!」


そういえば喋り方が女性口調になっている。

つまり、ツナリは今完全にどこからどう見ても女になったということだ。


『はっはっは!!我の力でお前がどう喋ろうと必ず女口調になってしまう呪いをかけてやったわ!!どうだ?悔しかったら今までみたいに話してみろ!!』


ティエス……そんな力でいばってどうするのさ……


「くううう……!!……はぁ、もういい」


ツナリはティエスに敵わないと察したのか、肩の力を抜きうな垂れた。

そして天を見上げ、


「このまま女として生きていかないといけないなんて……私には耐えられない。だって私は勇者だもの。この世界で勇者になれるのは男だけ。築いてきた地位も名誉も全て無くして生きるくらいなら……」


そう呟いて、涙目でこっちを向くと


「お前らを殺して私も死んでやる!!」


腰に装備された剣を抜き、俺に飛びかかってきた。


「ちょっ!ちょっと待って!!俺はティエスに言われたことをしただけ!!それだけなんだ!!だから許して!!」


俺の心からの叫びを彼女は


「問答無用!!!」


と突っぱね振りかぶった剣を俺に向けて振り下ろし……振り下ろし……?下りてこない。

蹲った俺は少し視界を上に向けると、そこには確かに剣を天に掲げたツナリが立っている。

しかし彼女はその状態でプルプルと震えている。

そして次の瞬間、


「好きーーー!!!」


「はぁーー!?ってぐはっ」


ツナリが剣を捨て、叫びながら抱きついてきた。

しゃがんだ状態だった俺は、そのまま地面に倒され俺の上にツナリが馬乗り状態になった。


そして俺の顔を正面に固定し、少しずつ母を近づけてくる。

唇を尖らせて、、、


「ちょ!ちょっと待って!!」


状況が全く掴めず、手を上に上げバタバタとしていると、


「ん?……って何してんのよ!!」


バシンっ!!


「ぶっ!」


ツナリに顔面をビンタされた。


「なんで私あんたの上に馬乗りになってんのよ!!」


「知るか!!お前が急に抱きついてきてこうなんたんだろうが!!」


「はぁー?そんなわけないじゃない!!誰が男なんかに抱きつくもんですか!!」


などと押し問答を続けていると


『ふふふ……はっはっは!!効果は歴然だな!!』


とティエスが笑い始めた。


「またお前か!!私の体に何をした!?」


倒れた俺の肩の上にいるティエスに向けて訴える。


『なに、能力性転換の付随効果その一だ。この能力にかかった者は能力者に殺意を向けると逆の効果が働くようになるのだよ。つまり……』


「つまり?」


『テンカのことが好きで好きで堪らなくなるのだ!!』


「死ね!!」


バシンっ


「ぶっ!!」


ティエスに向けて放ったビンタは実体を持たないティエスをすり抜け、俺の頬にクリーンヒットした。

さすがは元勇者。

女になってもそれなりの威力がある。


「というか、ティエス!なんでビンタは普通に当たるんだよ!!」


殺意を持つと攻撃できないんだろ?

それだとさっきからビンタが当たるのはおかしいだろ!


『あー、別にビンタくらいはご褒美だろ?』


「いや!ご褒美じゃないけど!?」


こんなの威力のビンタを何回も食らってたら身体がもたんわ!


「ほー、ビンタは通るのか……ならば!!」


ツナリの顔に黒い影が落ち、口元がニヤリと動く。

そして右手を振りかぶり……


「これでもくらえ!!」


右手を振り下ろした。

回避しようにも体をガッチリとホールドされているため身動きが取れない。

俺はぐっと目をつむり、衝撃に備えた。

そして……右頬に手が触れた。

………すごく優しい……叩かれるというか……添えられたと言った方が正しいか。

そしてその後、俺の唇に何かが触れる。


そこで目を少し開けると、


ツナリが俺にキスしていた。


「んんんんん!!!」


しかもやたらと長い!!


体感で20秒。

ずっと動かずキスされ続けた。

………公衆の面前で。


「ぷはぁ」


とツナリが顔を上げる。

そして


「テンカー!好きー!」


と今度は俺の胸に顔を押し当てる。


あー、なるほど。

さっきのビンタは殺意判定されたわけね……

全く……基準がわからん。


「はっ!私は何を……ってうわあ!」


我に帰ったツナリは飛び上がり俺から距離を取った。

そして先ほどまでのことを思い出したみたいで……再び涙目で俺を睨みつけている。


「こんなの……こんなの私じゃない!!」


あーあ、ついに完全に泣き出してしまった。


「お、おいティエス。本当にどうにもならないのか……?なんか可哀想になってきたんだが……」


流石に目の前であれだけ泣かれると罪悪感が湧いてきた。


『どうにかって言われてもな……元に直す手段など考えてもないし、そもそもそうなる要因を作ったのは勇者だからな……』


「私が何したっていうのさ!」


『強者はいつでも弱者の気持ちを理解することはできないのだよ。お前は世界を救うために魔王軍と戦っていたのかもしれないが、どこでやっていた?さらにいえば何を犠牲にした?』


「それは……」


ツナリが口籠る。


『何もない平野や森の中ならよかっただろう。しかしお前は魔王軍を街の中に誘導し、民を襲っている間に魔王軍を討伐、さらに報酬をよこせというもんだ。その行いに正義を見出せるのか?』


民が苦しんでいる。

ティエスが転生前に語った言葉。

魔王軍の襲来。勇者の横暴。

確かにその通りだ。

そして今目の前にいるツナリもそれを否定しない。


「私が魔王軍と戦わなければ誰が戦うの?私は効率的に、そして当たり前なことをしていただけ。どんな犠牲が出ようとも、魔王軍との戦いの中でならそれは致し方ない事でしょう?それをとやかく言われる筋合いはない!!」


『たわけが!!』


「ひっ!」


ティエスが叫んだ。


『やはりお前は女にして正解だったわ。お前に勇者を語る資格などないわ!!』


神の威厳と言うのか、今のティエスは紛うことなき神に見える。

変態十二神と言われているとは思えない。


『テンカ、こいつに自分の愚かさを反省させてやれ』


「は?どうやって?」


『何でも良い。テンカの元いた世界の反省の方法で良いぞ』


ふむ。

急に言われても困るが、一つ思い出した。


俺はツナリを肩に担ぐ。


「な、何をするんだ!!」


「俺の世界ではな、小さい頃悪いことをするとこうやってな……」


俺は手を振りかぶり、


バシンっ!!


「あうっ!!」


「ほーれ、もう一発!」


バシンっ!!


顔の横にあるけつにむけて平手打ち、つまりお尻ぺんぺんを繰り返し行った。


「あうっ!!や、やめ!あうっ!やめろ!!あう……」


バシンバシンと刻みよくお尻を打ち続ける。

そしてしばらくした後……


「ごめ……ごめんなさい……ひっく」


俺の肩の上でツナリが泣き始めた。

すると


『勇者ツナリの調教度が1上昇しました』


とシステム音が流れた。


「調教度?ティエスこれは?」


『ああ、能力にかかった者は調教度という新たなすてーたすが付与されるんだ。この調教度が上がるにつれてテンカを好きで好きでたまらなくなるというわけだ。つまり5段階ある調教度が最大になると殺意を向けていなくても、常にあの状態になるというわけだな』


なるほど。

調教度を上げれば上がるほどいいというわけか。

となれば……


「早速続きといこうか、ツナ……「何をしているんだ君は!!女の子にそんなことするなんて、あぁ嘆かわしい!!」……は?」


尻叩きを継続しようとしていると、急にローブを見に纏った金髪のイケメンが叫びながら俺に接近してきた。





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