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ワールドメイカー  作者: みたらし
第二章 滑稽な英雄譚
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英雄譚は続く

アクス王子が、床で寝入っていた父王にその姿を見せた直後は、深夜にも関わらず城中が大騒ぎになった。

初めは誰もが偽物と疑ったが、カイ王子とエフィルたちが逐一説明をした。一方、イーリスの陰謀もラズマたちの手によって、大臣たちに知られるところとなる。

一連の事件の真相が、果たして政治家や警備団、国民に知らされるかどうかはわからない。もしかしたら、上層で握り潰され隠蔽される可能性もある。

しかし、あくまでもエフィルたちの目的は「アクスの存在をフォーラス国の民に知らせ、カイ王子たちの陰謀を暴く」事。よそ者の自分たちがそこまで介入するわけにもいかず、ある程度事件の経緯を説明した後は、黙って手を引く事にしたのだった。




事情の説明に引っ張り回され、四人がやっと宿へ帰された時、すでに太陽が空高く昇っていた。

じりじりと焼け付くような暑さの中を、四人は半分眠った状態で戻って行く。

「しばらくは、この国から出させて貰えなそうだね…」

ラズマが、どこを見ているのかわからない虚ろな目で呟いた。

「事情聴取もそうだけど、アクス王子が名残惜しそうだったしさ」

「んもう…お礼はいらないって言ってるのに」

エフィルが、げんなりした表情でうなだれる。

「こんなに後始末が大変なら、いっそクリティスたちみたいにとんずらしてくれば良かったな」

イルファの今更な提案を聞いて、ウィミーネが思い出したように言った。

「そういえば、クリティスたちはどこに行っちゃったんだろうね」

「ふんっ、知らないわよ」

エフィルは寝不足でむくんだ頬を更に膨らませた。

「もう二度と会いたくないわ、あんな奴ら。

しかも警備団の連中に聞けば、あいつらの大半って…」

「まあまあ。でも、今まで助けてくれたのは事実じゃん。

わたしはまた会いたいなあ」

「難しいだろうな」

ウィミーネの願望をばっさり切り捨てたのは、イルファ。

「あの状況で逃げ出したんだ。彼女たちだって、それがどれだけ重大な事かわかってるはず。おめおめと俺達に会うような事はしないと思う。

もう、この国から出たかもしれないな」

「そっかあ…一言、お礼ぐらい言いたかったな」

残念そうに俯くウィミーネ。それに対抗するように、エフィルは両腰に手を当てそっぽを向いた。

「いなくなったって事は、お礼もいらないって事でしょう?それならそれでいいじゃない。

あんな奴ら、さっさと忘れて−−」


「わーっ!これすごい可愛いっ!」


真夏の日差しの真下にいるはずなのに、その瞬間、何故か空気が冷たく凍った気がした。

聞き覚えのある声だ。エフィルは、商店街に立ち並ぶ喫茶店のとある一軒へ、ゆっくりと顔を向けた。

「いいか、わかっているな?五千コイルまでだ」

「わかってるってー。

それより見て、これすごい!お菓子でフォーラス城を作って、それをケーキの上に…」

「はいはいはいはい。…全っ然聞いてねーよ、こいつ」

「うふふ。

でも、食べちゃうの、勿体ないわねー」

「…え、エフィル…おち、落ち着いて」

彼女たちの会話に混じって、ラズマの制止の声が聞こえる。しかしエフィルの堪忍袋の尾は、収まるどころか既に擦り切れていたのである。

逃げ出しておきながら、のうのうと喫茶店でティータイムをかましている彼女たちに向かって、エフィルは、大きく息を吸い。


「あんたらああああああ!!」


常夏の国の真っ青な空と太陽の下に、勇者の怒鳴り声が響き渡ったのだった。

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