戴冠式〜オープニングは華やかに〜・前篇
「やだ」
「断る」
「ごめんなさいねー」
口々に拒否…いや、拒絶の言葉を放って、三人の娘たちは誘いを突っぱねた。
前方でへらへらした笑顔を浮かべていた赤髪の男が、一瞬呆然とした後、肩を落としてうなだれる。おもむろに連れの黒ずくめを見やると、「お前もなんか言ってくれよ…」とすがり始めた。
しかし彼はどうでもよさそうにエリスティアたちを見ただけで、あさっての方角を向いてしまう。この青年は、無理やり赤髪のナンパに付き合わされているだけのようだった。
「なっさけなーい。一人でナンパもできないわけ?」
「あ、エドルたち来ちゃったわー。それじゃあ、またねー」
「ふん」
エリスティアはまるでおもちゃに興味をなくした子供のように、リシェルアとクリティスはまるで何事もなかったかのように、その場を離れた。黒髪に無念そうに引きずられていくナンパ男になど目もくれず、三人は後ろから歩いてきた男性組二人を迎える。
「おーい。
…何やってたんだ?」
すでに遠く離れて見えなくなってしまった見知らぬ二人組を、目を凝らして捜しながら、開口一番にエドルが尋ねた。
「ただのナンパ。やっぱ、あたしって魅力的なんだねー」
「当人はリシェルアを狙っていたようだな。真っ先に声を掛けられていた」
「うふふ…すぐに断っちゃったけれどー」
「…こっちは炎天下の中、パシリを引き受けてやったっていうのに呑気なもんだな…」
先ほどからむっつりと黙りこんだままだったディオが、腕を組みこちらを睨む。
「創造主様のお使いができて光栄…の間違いでしょ?」
不機嫌なディオの顔を覗き込み、不敵に笑う「創造主様」。ディオはその肩を、うんざりだと腕で押し返すと、ポケットから五枚の紙切れを取り出した。
「おら、取ってきてやったぞ。
しかも、聞いて驚け。特等席だ」
「特等席?」
クリティスは、不審をあらわにした表情でディオの顔を覗いた。
「当日の、こんなギリギリの時間に、それほど良い場所が取れるとは思えないが」
「当たり前じゃねえか。なんと、最後列」
「えええええーっ?!」
当然と言えば当然だが、真っ先にエリスティアから不満が噴出した。
「そんなとこじゃ、見えないし!」
「今更文句言ったって、しょーがねーじゃん。
それに、どうせお前、式場内に出てくる屋台が本命なんだろうしな」
「う」
図星を突かれて、言葉に詰まるエリスティア。ディオは、諦観しきった顔で鼻を鳴らした。
「どうせ、そんなこったろうと思ったぜ。まあ、せいぜい背伸びでもして頑張れば?
お前の身長じゃ、それでも見えるかどうかだけど」
「ムカツクっ!馬鹿にすんなっ!」
毒づきながら、紙束に飛びつこうと手を伸ばしたエリスティアを、ディオは身長差を利用して素早く避ける。
「ちょっと!なんで渡してくんないの!」
「はん。これが欲しかったら土下座して、「今日から私はディオ様の召使いです」って三回繰り返せ」
「バカじゃないの、この変態ドS!」
エリスティアと睨み合うディオの背後から、クリティスが紙切れを五枚とも、無駄のない動きで取り上げた。ディオの鋭い視線が、エリスティアからこちらに向けられるが、もちろんそれは無視した。
「本当に神界に戻る気はあるのか?」
さりげなくチケットを一枚抜き取ってくる創造主にそう尋ねると、
「あるってば!
いいじゃん、ちょっとぐらい寄り道しても」
あると言ってはいるが、ふてぶてしく胸を張るその態度に反省の色は皆無だ。なんやかやと理由をつけて、帰省するのを遅らせる魂胆なのだろうか。皆に察知されている時点で、無駄な行為なのだが。
「一応今回は付き合ってやるけど…明日には、絶対この国を発つからな?」
「わかってるってばー」
チケットを眺めて鼻歌交じりに返事を返すエリスティアを、エドルも呆れ顔で見つめている。
しかし、こうしてチケットを手渡してしまった今、愚痴や文句を言っていても仕方がない。息抜きという名目で、こちらもそれなりに楽しむしかないなと割り切り、クリティスは連れと視線を合わせた。
「さて、そろそろ行くぞ。もうすぐ式が始まるだろう」
「…見えないんだけどっ!」
人ごみの中に埋もれて、エリスティアがこの上なく不機嫌に怒鳴った。
チケットに示されていた最後列の立見席は案じた通りの場所で、メンバー内で一番背の高いディオでも、前の人の頭の間から、フォーラス城のバルコニーがかろうじて見えるという状態のようだ。一番背の低いエリスティアから見えるものは、せいぜい人の背中ぐらいだろう。
おまけに城の前の特設舞台から遠すぎる上、同じ立見席で暇を持て余した他の見物客の話し声がやかましい。エルフ族である自分の長い耳を持ってしても、大臣、貴族たちの賛辞や宮廷楽団の演奏もほとんど聞こえないのだ。
一体、自分たちは何のためにこんな苦しい思いをして炎天下の中立ち続けているのかと、自問せずにはいられなかった。
「なあ…おれもう帰りたいんだけど…」
隣りから、憔悴した表情のエドルが力なく訴えた。
「同感だな」
「そうねえ」
頷くと、この息苦しさの中にいてまったく動じていないリシェルアも、やんわりと同意してくる。
先ほどから前の客の背中を一心に睨んだままのエリスティアを一斉に見やると、彼女は振り返ってさらに眉を寄せた。
「…何」
「これでは何の意味もないから、帰らないかという話になっているのだが」
「あたしは帰んないよっ」
何をムキになっているのか、ぷいっとそっぽを向いてしまったエリスティア。
「さっき、散々屋台回ったじゃねーか。もう満足だろ?」
「やーだーっ!まだ、戴冠の儀始まってないじゃん!」
「戴冠の儀が始まったって、お前の背じゃ見えねーだろ。
ったく、神界に帰るのを遅らせたいからって、こんな強引な…」
エリスティアは、驚いた顔でエドルを見た。
「ば…バレてたの…?!」
「バレてたの、じゃねえんだよバカ。バレたくなかったら、もっと頭使って俺らを足止めしろ」
ディオも、汗ばんだ額を前髪ごと拭いながら顔をしかめた。
舞台では、一通りの挨拶と賛辞が終わり、宮廷演奏家たちの見せ場が始まっていた。この後二、三の曲が披露されてから、メインイベントである次期フォーラス王の戴冠がある。
「神の一族の長に向かってバカとは何!?」
「うわっ、耳元ででかい声出すな!ちょっとは周りに配慮しろよ!」
「思うんだけど、あんたたちって、あたしのこと創造主だって意識してないよね?ってゆーか絶対信じてないでしょ!だからそーやって、あたしに対してガサツな扱いをするんでしょ!
マジあり得ないんだけど。あんたたちこそ、もっとあたしに配慮してよ!」
「「いやだ」」
「リシェルアー!男どもが寄ってたかってあたしのこといじめるー!」
「はいはい、静かにしてねー」
今度は、連れがやかましくなってきた。演奏中のためいくらか周囲が静かになり、彼女たちの声が余計に際立っている。見物客のうっとうしそうな視線も、あちらこちらから刺さり始めていた。
いっそのこと、他人のふりを決め込んでやろうかと真剣に考え始めた頃、
「おい、あそこ」
ディオが、こちらの袖を引いて特設舞台の少し左横を指差した。
だが、そこを見ても、待機している大臣たちや他国からの賓客、それから警備兵が立ち並んでいるだけだが…
「奥だよ、奥。あそこからなら、式がよく見えそうじゃね?」
要人たちの後ろには、城を囲む分厚い塀がそびえている。しかし、一角が崩れていて修復中らしく、木製の足場が組んであった。足場は、大きな壺と豪華な生け花が立ち並ぶ、舞台の裏側まで続いている。そこにうまく潜り込めば、壺や花が死角になって、舞台の上からも観客席からも自分たちの姿は見えないだろう。
ディオは、そこを陣取ろうと言いたいらしい。
「…できなくはなさそうだが、万一見つかったらどうするつもりだ」
「見つかったら見つかったで、蹴散らす」
「相変わらずの非道だな」
最初からクリティスの同意など必要ではなかったのか、彼はそのままエリスティアたち三人を呼んで、その思いつきを話してしまった。エリスティアはまず迷くことなく賛成し、渋っていたエドルとリシェルアも、この人ごみと炎天下に気力が尽きて来たのか、結局頷き合っている。
したり顔で振り返ったディオに、クリティスは大きくため息をつくしかなかった。
城の敷地内に侵入するのは、こいつらと出会ってから二度目になるか。そんなことを考えながら、クリティスは周囲を警戒しつつ、木の板の足場によじ登った。
どうせすぐに気付かれると思っていたが、壺と花が案外上手くこちらを隠してくれている。その合間から覗くと、舞台上の王族たちと、その下の見物人たちが一望できた。
「どう?見える?」
エリスティアが、足場に腰かけて目を細めた。じっと舞台の上を窺っていたが、急にぷうっと頬を膨らませるなり、
「…後ろ姿しか見えないじゃん」
「文句言うな。近くで見れるだけマシだと思え」
当の提案者は、彼女の不満を無責任に突っぱねた。
当然と言えば当然だが、舞台上の主役たちはこちらに背を向けている。戴冠の儀の際には横を向くだろうから良いとして、正面の見物人たちに挨拶を述べている今は、特に見ていても楽しい事はなさそうである。
ようやくフォーラス王の有難いお話が終わった頃には、クリティスもエリスティアもエドルもディオも、暇疲れしてぐったりと項垂れていた。リシェルアだけが絶えずにこにこと皆の様子を眺めていたが、内心は同じように疲れ切っているに違いない。
「あんな上っ面と定型文だけのセリフを、よくもまあ太陽の位置が変わるまで延々としゃべれるもんだ」
ディオが小さな声で、渾身の皮肉を吐き出した。こんなに傍にいるというのに聞かれてはまずいと思ったのか、エドルが慌ててその口を塞いでいる。
舞台上がせわしく動き始めた。戴冠の儀が始まるようだ。
舞台に並んでいるのは、二人の男性と一人の女性。厳つい顔つきの年配の男は、ここフォーラス王国の現国王。その隣に礼装で立っているのは、彼の嫡子であるカイ王子。
修道服姿の女性は、国教である亜魔界神信仰教会の大司祭だ。フォーラス王から王冠を受け取り、カイ王子に戴冠を行う役目なのだろう。
ディオが、「ん?」と不思議そうに声を上げた。
「どうした?」
「いや、俺の覚え違いなら別にいいんだが…
現フォーラス王の息子って、確か双子じゃなかったか?」
「そうなのー?」
解説を求めて、リシェルアが振り返ってきた。しかしクリティスといえど、あらゆる世界のあらゆる王族を片端から覚えているわけではない。誰もが知る大国や、近年大きな動きのある国などについてはそれなりに情報を集めているが、ここフォーラスはそれほど大きくもなく、比較的平和を謳歌している国である。クリティスにとってはあまり興味をそそる対象ではなかったし、今回も素通りするつもりだった国なので、ほとんど内情がわからない。
素直にそう告げると、ディオが難しい顔で口元に手を当てた。
「…そうか…嫌な予感がしないでもないな…」
「嫌な予感?」
クリティスが聞き返した時。
突如、舞台の向こう側にいる観客たちがざわめき始めた。
戴冠の儀はまだ始まっていない。しかしながら、気付かれたわけでもないらしい。人々は、舞台よりも上の方を見上げて、あるいは指を差して何か言い合っている。
(なんだ?)
クリティスも、つられて上空を見上げる。が、あるのは雲と太陽だけだ。ならば、もっと後ろの方かと、上半身を反転させた。
「待ちなさいっ、カイ・ヴォールナ・フォーラス王子!」
高らかな女声が、上方から聞こえた。
見ると、クリティスたちのいる足場よりやや離れた塀の上で、誰かが仁王立ちになっている。
まばゆい日差しを片手で遮りながら良く観察してみると、長い茶髪を風に流した二十歳前後の女だった。背が高めでプロポーションも良く、それなりに美人なのだが、背中に負った体格に不釣り合いな無骨な大剣が、それをいろいろと台無しにしている。
「誰?」
ぽかんとそれを眺めていると、後ろからエドルが身を乗り出してきた。彼の位置からは塀の上が見えないのか、ぐっと首を伸ばしてこちらに体重をかけてくる。脆い木の足場が、ギッ…と音を立てた。
「おい、見えねえんだよ馬鹿エドル。どけろ」
「押さないでよっ、狭いんだから…」
ディオがエドルの身体を横に押しのけ、その傍にいるエリスティアは迷惑そうに身体を揺する。彼らの動きで、さらに足場が悲鳴を上げている。
一人用に作られた足場に、五人も座っているのだ。薄い踏み板もそれを支える細い角材も、とっくに限界を超えているはずである。
「子供みたいな喧嘩をするんじゃない。それに、騒ぐと気付かれ…」
「あなたの悪行は全部バレてるのよ!大人しくしなさい!」
クリティスの忠告は、塀の上の女性の声にかき消されてしまった。舞台の上の王族たちと言い争いをしているようだが、今は連れの対応に精一杯で、聞いている余裕などない。
「危ねーなっ!二人して押すなよ!」
「あらあら、落ちついてー」
「あたしの方が危ないんだってば!押さないでって何回言えばわかんの?!」
「…いい加減に…」
再びクリティスが仲裁に入ろうとした、その途端。
「う、ひゃあっ?!」
「きゃあっ!」
とうとうエドルの下の板が、みしっ、と二つに裂けた。足場はそれを期に、けたたましい音と共に一気に崩れ落ちた。
彼はそのまま、後ろでその背中を押していたディオもろとも前のめりに倒れてくる。当然、その正面に座っていたクリティスも巻き込まれ、倒れて…
陶磁の壺が割れる甲高い音が、会場に響き渡った。生花と、壺の中に満たされていた水とが舞台の上に無残に飛散する。
ざわついていた会場は、一瞬にして沈黙した。
「わ、悪いクリティス…大丈夫か…?」
額をぶつけて痛いわ服は濡れるわ壺の破片で腕を軽く切るわ、はっきり言ってまったく無事ではないのだが、説教をするのは後だ。
「な………何なのよあんたたちっ?」
一番最初に一行に向かって声をかけたのは、あの茶髪の女だった。
「いきなり舞台裏から乱入してくるとか、何考えてるのよ」
彼女が人の事を言えた義理ではない。エドルが突っ込みを入れたそうに口を開きかけるのが見えたが、ディオの「逃げるぞ」の一言で、黙って踵を返した。
「くっ、貴様らもあの女の仲間か?!
捕えろ!」
まだ戴冠の済んでいないフォーラス王子が、こちらを指差し号令をかけた。舞台を取り巻いていた警備兵たちが、一行の両脇からなだれ込んでくる。追われるようにして、五人は塀の崩れている部分から、忍びこんで来た時に通ってきた城の敷地内へと引き返した。
上手くどこかに隠れてやり過ごすか、撒いて兵士たちが散ったところを個々に撃破すれば何とかなるだろう、と思っていたのだが。
「ウィミーネ!」
塀の上から、またもや茶髪の女性の声が鋭く響く。その声が消えるか否かの内に、上空をさっと黒い影が横切った。途端、大風が進行方向から吹きこんできて、身構える間もなかった五人はたたらを踏んでしまう。
その間に、空を飛んでいた影が前方に着地し、立ちふさがる。それは、金色の髪の少女だった。エドルと同じ翼人族の真っ白な翼が、大きく宙を煽ぐ。
「あんなところに居たっていうことは、今回の事件と何か関係があるんでしょ?
逃がさないわ。重要参考人として、大人しくしててもらうわよ!」
「舞台の裏に潜むとは…貴様らも、亡き王子の名を辱める、あの女の仲間だな?!」
茶髪の少女の怒鳴り声と、後ろから駆けてきた警備団長らしき男の声が重なった。どちらもややこしく勘違いをしているようだが、あんな場所に居た自分たちの方に非があるという事は、クリティスも重々承知している。
何とか誤解を解いて、穏便に切り抜けたいのだが…
「あたしら無関係の第三者だしっ!あんたたちの事情に巻き込まないでくれるっ?」
「ふざけるな!ますます信用できん!」
…穏便に…
「面倒くせえな…もういっそ、全員ぶちのめして…」
「本性を現したわね…!どうせ、ここに潜んであたしたちを殺そうと待ち構えていた、カイ王子の手先か何かでしょう?
ぶちのめせるもんならぶちのめしてみなさいよ!」
…穏便には、無理かもしれない。
クリティスは、平和的問題解決の可能性をあっという間に潰した二人の背中を睨みながら、頭を押さえた。
ディオが上着の裾の下に隠し持っていた銃を抜くと、塀の上の娘も警備兵たちも、それぞれの武器を取りだした。なぜ彼が、戴冠式の見物に愛銃を携えているのかなど、問いただす気も起こらなかった。
「あらまあ、どうしましょう?とてもお話を聞いてくれそうにないわねー」
「奴らが余計な事を言ったり、あまつさえ得物を抜いたりしなければ、誤解を助長せずに済んだものを…」
恨み事を吐いても、既に後の祭りである。
さて、ここからどう撤退するか。クリティスは俯き少し考えると、周りの様子をのんびり眺めている烈火に小声をかけた。
「お前の炎で、兵士たちをどれくらい足止めできる?」
「ありったけの魔力を使えば、燃料なしでも一時間ぐらい燃やし続けられるわよー」
「いや、さすがにそこまではしなくていい。
三十秒。その間に、後ろの翼人を突き飛ばして強行突破する」
「その後は?」
傍で聞き耳を立てていたエドルが、期待の視線を向けて促してきた。その深緑の瞳を真っ向から見据えると、クリティスはきっぱり言い捨ててやる。
「自由行動だ。それぞれ好きなように逃げ回って、せいぜい敵を撒いてくれ」
「はあ?!クリティス、まさかあたしたちのこと見捨てる気?!」
エリスティアが、あからさまに焦って怒鳴り散らした。エドルも、「お前、ホントはすげー怒ってるだろ…」と小さな声で言っている。
が、クリティスはすがるような皆の視線を、冷たく振り払うようにして顔を反らした。
「それでは、解散という事で。逃げのびる事が出来たら、宿に集合すること」
リシェルアが炎の魔法を放ったのを見届け、クリティスはすぐさま前方へと走りだした。不意を突かれて唖然としている翼人の少女を軽く突き飛ばして尻もちをつかせる。
「ちょ、ちょっとおお!」
遅れて動きだした四人の足音と、兵士たちの怒号を遠くに聞きながら、クリティスは後ろも省みずに敷地内を全速力で駆け抜けるのだった。




