第一章 エピローグ
城を出ると、天空王が直々に見送りに出てきてくれた。
変人と広く謳われているが、彼を慕う者は多い。やはり、どこか憎めない人格とその度量は、天空界という大きな一つの世界を治めるにふさわしいものなのかもしれない。
なにはともあれ、再び五人は旅の空に出る事になってしまったのだった。
護衛対象の創造主は、王都銘菓を山ほど土産にもらって、大満足で鼻歌を歌っている。
彼女はまだまだ謎の多い存在だが、これまで創造主だとは考えもしなかったほどに、そこらの村娘となんら変わりはないようなので、普通に接している分には問題ないだろう。
「…天空王も食えないけど、お前も相当だな」
「そう?」
さっそく土産の箱を開いて、中の菓子を食べ始めている彼女を見やって、ディオが言う。
「俺たちを利用して、今回の事件を解決させようって腹だったんだろ?
あの封印の本のことだって、殺し屋に攫われたところから既に、お前の策の内じゃねえかって疑うね」
「ふふふん」
彼女は、意味深な笑顔を浮かべたまま、曖昧な相槌を返すだけ。
「実際のところ」
クリティスが、いつもの無表情で尋ねた。
「どこからがお前の策略の内だった?
私たちを、天空城に誘導したあたりからか?」
「策略だなんて。あたしはただ、誘拐事件を解決するにはどうしたらいいか悩んでるときに…」
創造主エリスティアは、それは愉快に笑い声を立てた。
天高く昇った真昼の太陽も、かくやといわんばかりの笑顔が眩しい。
「腕のいいトレジャーハンターたちが樹海に入ったまま出て来ないっていう噂を、魔界の村で偶然聞いただけだもーん」