公爵令嬢は森に死す ─婚約破棄の代償─
沢山の評価、ブクマありがとうございます。
誤字報告も有難いです。
推敲したつもりが結構抜けてるものですね…。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
9/20 「小説家になろうラジオ大賞」にノミネートしていただきました。
読んで頂いた方のおかげです。
どうもありがとうございます。
王都から北に位置する魔獣の森を、馬車は進む。
魔獣の気配を感じた私は、そっと馬車に結界を張った。
この世界には魔獣が棲み、人を襲う。
そして魔法が存在し、王族をはじめ貴族の多くが、魔力を持つ。
高位貴族ほどその魔力の量は多く、公爵令嬢の私も、膨大な魔力を有して生まれてきた。
そして、魔力を持つ者は国立魔法学園で魔法に関する学問を修めなくてはならない。
当然魔法学園で学んでいた私だが、今朝登校するなり、王太子の命のもと、この質素な馬車に押し込まれ、半日以上揺られ続けて今に至る。
──そろそろ婚約破棄かと思ってたけど、まさかね。
私は高位貴族の定石通り、膨大な魔力、正確には王家を凌ぐほどの魔力を有している。
高い身分と膨大な魔力、そして丁度良い年齢。
2歳年上の王太子との婚約は、ごく当然のことだった。
そしてその婚約者、王太子の命で魔獣の棲む北の森へ連れ出されているということは…。
王太子には、学園で出会った恋人がいる。
平民ながら膨大な魔力を持った彼女は、入学当初こそ小さくなっていたが、いつの間にか王太子と親密になり、学園生活の殆どを共に過ごしていた。
その様子から、王太子が私との婚約を破棄し、彼女との婚姻を望んでいるだろうことは明白だった。
だからいずれは告げられると思ってはいたが、魔獣が跋扈する森へ捨てられるとは…。
──それならそれでいいけどね。
ガタリと馬車が止まる。
乱暴にドアが開き、腕を掴んで引きずり出される。
「痛っ!」
「降りろ」
腕をつかむ痛みに抗議すると、冷たい声がそれを遮った。
はて、と顔をあげると小さな生け贄の村。
──罪人村
北の森には魔獣が多い。
その魔獣の気を逸らせるために、罪人を集めて収容している村。
「なら、これはいらないわ」
私は教本が詰まった鞄と学生証を馬車の座席に投げ捨てる。
ドアを閉めるが早いか馬車は走り出す。
あと数分もすれば馬車に張っていた結界も解ける。
いつまで耐えられるかしら?
暫くして、どかん、と馬車が倒れる音が響いた。
馬車は魔獣の餌食になっただろう。
戻らない馬車を心配して捜索にくれば、魔獣に襲われた馬車に残された私の学生証が良い仕事をしてくれるはずだ。
「もう守る義理もないわ」
私の魔力は膨大だった。
それこそ王都全体に魔獣から守る結界を張っても余るくらいに。
その結界も私が居なくなれば、3日と持たないだろう。
「お望み通り、魔獣に喰われてしまったのよ」
公爵令嬢は死んだのだ。