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長年の想いを  作者: 叶山 慶太郎
9/9

告白

誰のだろうね

「好きです!付き合ってください!」


「え」


とある日の校舎裏にて、私の幼馴染兼恋人である樋田明人が私の知らない人に告白されていた。


(ええええええええええええええ!?)


心の中で絶叫した。こんなことなら後をつけなければよかった。











今日の放課後にて


「カナ、今日はちょっと用あるから先帰っててくれないか?」


「その用ってどれくらい時間かかるの?そんなにかからないなら待つよ」


「さぁ?」


「さぁ?ってわからないの?」


「わからん。長く待たせることになると悪いから先に帰ってほしい」


「そっか。うんわかったよ」









そして部活後、香菜子は玄関からでて帰路につこうとしていると


(あ、アキだ)


偶然にも明人を見つけた。声をかけようと思ったが、校舎の角を曲がっていき姿が見えなくなったので止めた。


(校舎裏?あんなところで何の用があるんだろ?)


香菜子は気になって明人の追った。そして角を曲がった先を見ると


「好きです!付き合ってください!」


そして現在に至る。








「えっと・・・・ごめん俺彼女いるから」


当然明人は断った。それを聞いた香菜子も胸を撫で下ろす。


「ひょっとして浅田さん?」


「ああ、よくわかったな」


「うん。仲いいって聞いた」


「周知の事実なのかよ・・・」


広めるつもりは全く二人にはなく、知れ渡っていることに明人はうんざりし、香菜子は羞恥を覚えた。明人がこの反応なのはもともとあれこれ言われていることを知っていたからである。


「でも付き合ってないんじゃ・・・・」


「あー・・・・まぁその、付き合い始めた」


「・・・・そうなんだ」


少し照れ臭そうに頬を掻きながら答えた明人を見て、告白した女子生徒は察した。

しかし、彼女はタフだった。


「でも諦めないよ。どんどんアピールして浅田さんより好きになってもらうんだから」


ここまで盗み聞きをしていた香菜子は逃げるようにその場から立ち去った。


(明人が誰か他の人を好きになっちゃうかもしれないなんて考えたこと全然なかったな・・・・・)


帰り道、不安が頭を埋め尽くしていく。






(私よりいい人なんていっぱいいるよね・・・・)








翌日の朝、いつものように明人は学校へ向かうため家を出た。香菜子と付き合い初めてからは朝練のない日を除いて毎日一緒に登校している。


「おはよ」


「え、あ、お、おはよう・・・・」


同じ時間に家から出てきた香菜子に明人は挨拶するが、どうも様子がおかしかった。


「?・・・どうかしたか?」


「い、いやなんでもない!あっ、私朝練あるから先行くね」


「あ、おいっ!」


その呼び声に止まることなく彼女はその場を去っていった。


(今日は朝練ない日のはず・・・・)


これは付き合う前から知っている。偶然を装って朝練のない日に時間を合わせて一緒に登校したこともあるほどに明人は熟知している。


(そもそもこの時間から朝練あるわけないだろ)


明人は時間ギリギリに登校するタイプだ。教室に辿り着いて間もなく予鈴が鳴る。そんなわずかな時間で何をするというのか。


(・・・・俺何かしたっけ?)













(どうしよう、逃げちゃった・・・・)


香菜子は一足先に学校についていた。もちろんその傍らにいるはずの明人はいない。


(クラスが別でよかった。同じクラスだったら問い詰められてるだろうなあ・・・・・アキは何も悪くない。私が勝手に気まずくなってるだけ)


はぁ~っと深いため息が吐かれた。


「どったの?」


「あ、恭子」


隣の席の恭子がそれを見て話しかける。


「まぁ、ちょっとね」


「樋田?」


「え!?い、いや」


「あ、やっぱそうなんだ」


「うう・・・・」


あっという間に看破されてしまう。


「で、ケンカ?」


「ケンカではないんだけど、私が一方的に避けてるんだよね」


「なんで?」


「・・・・・・あんまり言いふらしていいことじゃないんだけど」










「ふ~ん。それで?」


「いやそれでって・・・」


「だってちゃんと断ってたんでしょ?」


「う、うん」


「だったら何が不満なの?他の女に色気使ってんじゃねぇよ!とかそういう感じ?」


「違うよ!その、私でいいのかなとか、アキにとって、もっといい人がいるんじゃないかなとか思っちゃって」


「っはぁぁぁぁぁぁ~~~」


「え、な、何?」


「あんたいつも単純なのにこういうときは面倒臭いんだね」


「酷くない!?」


「じゃあ聞くけど、別れたいの?」


「別れたくないよ、当たり前じゃん!」


「ならそれでいんじゃないの?」


「・・・・・そうかな」


「まぁ、好きなようにすりゃいいさ」


「・・・・・うん」











(結局アキと話さずに帰っちゃった・・・・。一度避けちゃったらどうやって話しかけたらいいかわかんなくなった)


気がつけば放課後、下校を終えていた。いつもは下校時に待ち合わせるのだが香菜子は一人で帰った。先に帰って、と連絡した場合待ち伏せされる可能性があるので、敢えて先に帰ると連絡し明人が帰ったのを見計らってから帰路につくという姑息な手段まで使った。


「はぁ・・・・」


(ここまですることないよね。ていうか別に喧嘩してる訳でもないんだけどなぁ。・・・・会いたいな)


コンコンとノックが響いた。窓からではなく部屋の扉からだ。


「お母さん?どうしたの?」


「残念ながら俺だ」


いつものように窓からではなく扉から明人は入ってきた。


「え、ど、どうして」


「窓ノックしても返事無かったからこっちから来た。ていうかおばさんから聞いたけど今帰ってきたんだって?嘘ついてまでなんでそんな避けんの?」


「えっと、それは・・・・」


「俺がなんかしたなら謝る。正直避けられんのはかなりきつい」


「っ・・・・ごめん!アキは何も悪くないの。実は告白されていとこ見ちゃって・・・」


「え!?ちょ、ちょっと待て。いつから?どこまで見た?」


「・・・?諦めないとか言ってる当たりまでだけど」


「そ、そうか。ならいいんだ。で、それでなんで避けるようになったんだ?俺ちゃんと断ったぞ?」


「えっとなんていうか、私なんかでいいのかなとか考えちゃって・・・」


「お前じゃなきゃ嫌なんだけど」


「!?い、いやもっといい人が見つかるもしれないじゃん」


「お前以上の女がいんの?」


「いるよ!絶対いるよ!さっきから何言ってんの!?なんか暴走してるよ!」


「言ってるこっちも恥ずかしいけどさ、イマイチ俺がどれくらいお前のこと好きか伝わってないから言うしかないだろ」


「ふざけてたりしてない?」


「いやなんでだよ・・・・言っても伝わらないのかよ」


そう言うと明人は香菜子に近づき抱き締めた。


「ちょ、ちよっとアキ!?」


「言葉で伝わらないみたいだから行動で示してる」


回した腕に少し力を入れる。動けなくなるぐらいに、それでいて痛くないくらいの力加減で。


「カナは俺のことどれくらい好き?」


「・・・・・・」


香菜子は何も言わず明人と同じように少し強めにぎゅっと抱き締めた。


「そうかそうかそんなに好きか・・・いててててっ」


香菜子は抱き締めるのと同様に少し強めに明人の背中をつねった。それが照れ隠しなのだとわかっているから明人は笑みを浮かべる。


「ねぇ」


「ん?」


「あの娘誰なの?」


「あの娘?・・・あぁ告白のか。どうした急に。やきもち?いたたたたっ、ちょっもうやめて」


たまらず明人は香菜子から離れた。


「悪い?」


「え?」


「ちょっとぐらい妬いてもいいんじゃん・・・・」


唇を尖らせ、恥ずかしそうに斜め下を向く。


「お、おう。そうだな・・・・」


そんな表情に明人は動揺してしまう。いや、動揺より高揚の方が正しいのかもしれない。


「で?」


「あ、あぁ。卓球部のやつだ。学年は同じでクラスは別」


「何したの?」


「何したのってなんだよ」


「好きになったきっかけとか」


「うーん、まぁ一つだけ心当たりがある」


「何したの?」


「なんか浮気調査みたいになってないか?」


「いいからほら」


「えっと・・・・」










新人戦の時、大会の会場に電車て行ったんだけどめちゃくちゃ混んでてさ。みんな一緒に乗ったんだけど段々バラバラになってった。て言っても何人かずつのグループでバラバラになったんだけど彼女と俺は一人だったんだ。まぁそこそこ近いとこにいたんだけどな。で痴漢されているのも見えたんだ。正確には後ろでニヤニヤしてるおっさんと嫌な顔してる彼女が見えただけなんだけど。そんで停車したときに揺れるだろ。それ利用して思いっきりおっさんにぶつかったんだ。


「なんだてめぇ!」


「すいません。揺れに耐えきれなくて」


「嘘つけ!わざとだろ!」


「はぁ、チクらなかっただけありがたく思って欲しいんですけど」


「っ!・・・・ちっ」


おっさんは舌打ちして強引に奥に入っていった。


「大丈夫か?」


「う、うん。ありがとう」


「後ろには俺がいるから安心しろ」


「・・・・うん」











「てな感じ」


「・・・・・・誑し」


「なんでだよ」


「俺がいるから安心しろ、とかカッコつけすぎ」


「後ろには、な。もう触られることはないって言いたかっただけ」


「そういうのは・・・・・わ、私だけに言えばいいから」


「・・・・・・殴らない?」


「最近は殴ってないよ!」


「さっきつねったじゃん」


「そ、それは・・・」


「冗談だよ。からかっただけだ」


「もう!」


「ごめんごめん」


「あ、そう言えば私が去った後でなんかあったの?」


「うん?」


「いやほら、どこまで見たか、とか聞いてきたじゃん。で、途中で帰ったって言ったらならよかったって」


「・・・・いや別になんもないけど」


「・・・・・怪しい」


「疑われることはなにもない」


「疑われないなにかはあったの?」


「・・・・・・いつか言うわ。もっといいシチュエーションで」


「・・・・・?どういうこと?」


「もう俺戻るわ。じゃあな」


「え、あ、うん」


明人は靴があるため、窓からではなく普通に玄関から帰っていった。







(言えねぇよなぁ)







『でも諦めないよ。どんどんアピールして浅田さんより好きになってもらうんだから』


『・・・・それは無理だな』


『え?』


『俺はあいつ以外を異性として意識したことはないし、あいつのことが好きでたまらない。それに


世界で一番愛してるって自信もって言える』







(完全にプロポーズじゃねぇか)













三宅 恵子 女子卓球部 明人とも香菜子とも別のクラス

多分これ以上出番ない。たがらこれ以上細かい設定もない。ごめんな。

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