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長年の想いを  作者: 叶山 慶太郎
7/9

アゲインを狙って

とりあえず昔から書きたいなーって思ってた別の話をいくつか書き始めたけど全然書けない。ちょっと息抜きにってこの作品の話書き始めたら割りとすぐ書けた。なぜだ

「それは『てむ』『なむ』『つべし』『ぬべし』の『てむ』だから強意だよ」


「あーなんかそんなんあったな」


「あれなんでanじゃなくてaなんだろ」


「文字じゃなくて発音で変わるからだろ。uは『う』じゃなくて『ゆ』で発音するときによく引っ掛かる」


「そっかそっか」


あれから数日。定番の勉強会は付き合ってからも続いている。付き合ってから二人に大きな変化はない。強いて言えばたまに一緒に帰っていたのが必ず一緒に帰るようになったくらいだろうか。


「ふう」


「とりあえず一段落だな」


香菜子が一息つき明人がペンを置きゆっくり立ち上がった。


「お茶とジュース、どっちがいい?」


「あ、じゃあお茶で」


「わかった」


明人が部屋から出ていった。香菜子は軽く延びをしてはっと気付く。


(なんかデジャブ)


つい最近似たようなことがあった。そして前回香菜子はぐっすりと寝てしまったのだ。そしてその後のことも思い出して香菜子はあるひとつの案を思い付く。


(寝たフリしてたらお姫様抱っこしてもらえるんじゃ)


残念ながら前回は寝ていたため記憶がない。気が付いたらベッドの上だったのだから。お姫様抱っこは乙女の夢の一つである。


(されたい!そりゃもうされたいよ!)


思い立ったがなんとやらで香菜子はすぐさま机に伏した。今度は寝ないように気を付ける。とはいっても今の香菜子はドキドキというか興奮状態のため眠気など皆無なのだが。


「お待たせ・・・・・またか」


(キター!)


「ったく、気を付けろって言ったのに」


(・・・・・ごめんなさい)


香菜子は伏しているため明人の様子が見えない。足音やふくの擦れる音でなんとなく察することしかできない。


(あれ?こっちに来ない)


明人が部屋の別のところに歩いていくのを感じとる。止まったかと思えばタンスの引き出しを開け閉めする音が鳴る。すると今度こそ香菜子のもとへ足音が近づいていく。


(・・・・ん?)


香菜子の体が持ち上がることはなかった。代わりにファサっと何かに包み込まれる。


(タオルケット?)


そう思った矢先優しい声が香菜子の耳元で響いた。


「おやすみ」


そのまま明人は香菜子の髪に口付けした。


「はうわああああああああああああ!!」


香菜子は奇声を発しながら飛び起きて明人から一瞬で距離をとった。


「うおっ!お前起きてたのかよ」


「起きてたのかよ、じゃないよ!なにしてんの!?」


「いや風邪引かないように被せたんだけど」


「その後だよ!」


「あー嫌だったかすまん」


「い、嫌じゃないけど」


「じゃあいいだろ。てかお前なんで寝たフリなんかしてたんだ?」


「それはその、またお姫様抱っこしてもらえるかなーって」


「えーなんだよそれアホらし」


「~~~~~~っ、うっさい!」


香菜子が右拳を繰り出す。そして明人が香菜子から見て右へ躱す。いつもの流れだ。しかし今日の香菜子はひと味違った。


(これならどうだ!)


かわされた拳を解いて明人の左肩を掴んだ。明人が戸惑っているうちに香菜子は右の肩も掴んでベッドへ押し倒した。

いつもしてやられてばかりの香菜子は勝ち誇り気味にフフンと笑みを浮かべた。対して明人は困り顔だった。


「おい待てこの状態はまずい」


「そうね。今日は私の勝ちよ」


「いやそういう意味じゃない。こんなの傍から見たら」


「ちょっと。今お客さん来てるから静かに・・・・」


明人の母、樋田昭子は硬直した。息子が女子となにやら戯れている。その女子のこともよく知っている。昔からの付き合いだから。最近付き合い始めたことも報告を受けて知っている。我がことのように嬉しくもありやっとかという安足感もあった。しかしこの状況は些か問題があるのではないか。驚愕と困惑の中で言うべき言葉がふっと舞い降りてきた。


「孫はまだ早いわ!」


「いややらねぇよ!」


「孫?やる?・・・・はっ」


そこでやっと香菜子はわかった。羞恥でみるみる顔を赤くして悶える。


「そ、そう。ならいいわ。じゃ静かにね」


バタンと扉を閉めて昭子は階段を下りていった。

未だに香菜子の顔は赤いままで固まっている。テンパって思考が止まっているのだろう。見かねた明人は香菜子の腕を引っ張って抱き寄せた。


「ちょ、ちょっとアキ!?」


ボスっというベッドからの衝撃で理性を取り戻した香菜子が慌てて離れようとするが背中に回された腕がそれを許さない。明人は耳元で説く。


「お前さ、少しは慣れろよ」


「え?」


「照れたり恥ずかしがったり、お前大袈裟過ぎ」


「だ、だって」


(好きだから仕方ないじゃん)


「まぁ気持ちはわからないでもないけど、理由はわかってても殴りかかられたりするのはいい気しないぞ」


「ご、ごめん」


「あと、まぁ、なんだ、母さんが言ってたやつもいつかはって思ってるし」


「え!?あ、う、うん」


「これくらい平気じゃないとって思う」


「そ、そうだね。がんばります」


「あと言い忘れたことがあった」


「何?」


「お姫様抱っこくらい言ってくれればいくらでもやるぞ?」


「!そ、それはもういいよ」


「よくねぇよ。っていうかせっかく気持ちが通じ合えたんだからもっと素直になれ」


「そんなこと急に言われても」


明人はするっと腕を解いた。香菜子は腕で体を支え上体を起こした。


「何かしてほしいこととかあったら言ってくれりゃいいさ。我が儘だなんて思わない」


やや思案して照れたように横に目線をやり香菜子は顔を明人に近づけて囁いた。


「キス、したい」


明人は一瞬驚いたがすぐに笑みを浮かべて唇そっと重ねた。数秒して唇が離されたが香菜子が明人に抱き付き二人の距離は依然としてゼロのままだ。


「んふふ」


香菜子の口から思わずこぼれた声は嬉しくて仕方がないという色を含んでいた。

お互いの顔が見えないこの時、明人は顔を真っ赤に染めていた。


(こいつ可愛すぎだろ)

髪に口付けだけで最初書いてたけど後からネタがいろいろ降ってきてめっさ楽しかった

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