露見と告白
「うおぁぁあ!」
叫びながら慌ててスマホを拾う。
見たられた?いや絶対見られたな。だって固まってるし!顔真っ赤だし!
「・・・・ねぇ」
「は、はいなんでしょうか」
テンパりすぎだろ俺。てか、なんでしょうかって聞くまでもなく・・・・
「その写真、何?」
だよなぁ・・・・
「・・・・あなたの寝顔です」
もう見られたのだから嘘の吐きようがない。
「い、いつの間に」
「こないだの勉強会でベッドに寝かせた後に撮りました」
尋問かよ。まぁ俺が敬語のせいか。
「なんで、こんなの」
カナは心底信じられないという表情をしている。呆れた意味では決してなく、困惑に近い。
こんなストーカーみたいなことされたら普通ドン引きだろうな。正直覚悟してたんだが。・・・そうならないってことは可能性があるんだろうか。
なにか、脈アリな言動は・・・・・・・悪口と攻撃ばかり思い浮かぶんだが。
まぁでも、ここから誤魔化すのは不可能だろうな。
それなら
「・・・・・・か、可愛いと、思ったから」
腹くくるしかないよな。・・・・・くっそ恥ずかしい
「か、可愛いって・・・・」
照れやら恥ずかしさやらで両者共に熟した林檎、もしくはトマトのようだ。きっとビタミンとか豊富だろう。
香菜子は明人の方へ向き続けているが明人は耐えられず顔をそらしている。
「ほ、本気で言ってる?冗談とかじゃ」
「本気に決まってるだろ。でなきゃこんなストーカー紛いなことしねぇよ」
やはり信じられない香菜子とチラリと香菜子に向き直すが恥ずかしさからすぐ顔をそらす明人。
「で、でもだって」
(今までそんな素振り全く・・・・)
「なんとなく察しついてるだろここまで来たら。まぁずっと抑えてきたから信じられないってのもわかるけど。全部言わないとダメか?」
「・・・・うん、言って」
(それはただの自分の期待かもしれないから)
自分の考えだけでは確信できない。どうやったって私情が入るから。だから自分以外の言葉が必要だ。
(あぁ、嫌だな。もういつもみたいに一緒に勉強したり軽口言い合ったり殴って躱して・・・・たまに今日みたいに出掛けたりとか出来なくなるかもしれない。堪らなく嫌だ。でも、もう言うしかない・・・)
明人はフゥー・・・と息を吐き覚悟を決めた。言葉を発するための空気をゆっくりと吸い込み、抵抗する臆病を振り払って言葉を発した。
「俺はお前のことが好きなんだよ」
「・・・・・!」
香菜子の中でなにか込み上げてくるものがあった。
明人は告白の際香菜子を見ることができなかった。どんな表情をするのか怖くて見れかったのと、なにせ告白は初めてのことなので面と向かって言う度胸が無かったからだ。
明人はここで初めて香菜子を見た。すると、俯き息を荒くして身体を震わせていた。
(怒ってんのか?なんで・・・・ってそりゃそうか。ストーカー行為しといて開き直って告白してきたんだからな。舐めてんのかって感じだよな)
明人は香菜子が怒るところをよく見ていたがための誤解だった。
「すまん。お詫びにって言ったらアレだけど一発殴ってもいい。絶対避けないから」
普通はこういった言動は出てこない。しかし、明人には怒る→殴るの流れが染み付いてしまってるのだ。仕方のないことなのだ。
「・・・・そう」
すっと香菜子が立ち上がる。
「じゃあ目閉じて」
「お、おう」
なぜ?と思ったが明人は大人しく従った。悪いのは自分なのだからとやかく言わないことにしたのだ。変に律儀である。
(これ、かなり怖いな。いつくるかわからないし、どこ殴るかもわからない。なんなら怒り余って蹴ってくるかもしれない)
怯えているとガシッと両肩を掴まれた。
(え、なにこれ。なにすんの?頭突き・・・は違うか。だったら頭掴むよな。・・・・・あ、わかった。腹に膝蹴りだな。ベジタブルな王子がナメクジな惑星でキャロットの息子にかましたやつみたいな感じだな。マジかー。絶対殴るより痛いだろアレ)
そう予想し明人は腹に力を込める。しかし、腹に衝撃が来ることは無かった。
(あれ?何か唇に柔らかくて温かい感触が・・・)
ゆっくりと明人は目蓋を開いた。
すると香菜子の顔だけが視界を占め明人はそこで初めて自分がキスされているのだと気付いた。
「~~~~!」
思わずバッと上体を仰け反ってしまった。それに対して香菜子は勢いよく明人に目掛けて飛び込み、背中に手を回して強く抱き締めた。そして明人の肩に自らの顔を乗せ耳元で告げた。
「私もアキのことが好き」
「!」
(・・・・マジかよ)
キスされたかと思ったら抱き締められて告白されたという予想外の事態に明人は驚きを隠せないでいる。予想外すぎて信じられないというのもあった。流れで、なんとなく、そんな気がするからなどという具合で言ってるだけなのではないかなんてことも考えるほどだ。
しかしその考えは香菜子を見た瞬間に一掃された。
「・・・・お前、泣いてんのか」
香菜子は涙を流していた。
「うっ・・・だって・・・っく・・・・こんなの、嬉しすぎだよ」
嗚咽混じりにそう言いながらより一層強く抱き締め、泣き顔を隠すように明人の肩に埋めた。
「・・・・こっちの台詞だ」
明人は香菜子の頭と背中に手を置き抱き締め返し、香菜子が泣き止むまで背中と頭を撫で続けた。
「落ち着いたか?」
「うん、ありがと」
そう言って香菜子ら明人からゆっくりと離れ立ち上がった。それを見て明人も立ち上がる。
「なぁ」
「何?」
「改めて、その、付き合うってことでいいんだよな」
照れ臭そうに目線をそらし頭をガシガシと掻きながら明人が確認する。
「当たり前だよ!両想いってわかったんだし、それにキ、キスもしたし。言っとくけど、あれ初めてなんだからね」
「いや初めてじゃないだろ」
間髪を入れずに明人が返答し香菜子は驚愕する。
「え、嘘!?あ、アキは初めてじゃないの?誰としたの?」
不安気な表情で明人に詰め寄っていく。
「誰とって・・・・お前だろ」
そう言われたが香菜子の記憶には無かった。
「あ!ひょ、ひょっとして寝ている時に・・・」
「ちげぇよ!・・・はぁ、てかお前からしてきたんだぞ」
ため息を吐き、呆れた様子で告げた。
「いつ?」
「小学校入るか入らないかぐらいだな。テレビで見たとか言っていきなりされた」
(・・・・なんでそんな一大事件を覚えてないの私!?)
言われても全く思い出させなかった。当時まだ明人に恋愛感情が無かったとはいえ香菜子は非常に勿体無いことをした気分だった。
「お前覚えてないのか」
「ご、ごめん」
「だろうな。次の日お前何事も無かったみたいにいつも通りだったし。・・・・・こっちは意識しまくってたのに」
やや拗ねたように明人が言った。
「そ、そうなんだ」
(ってことは10年前から!?全然気付かなかった・・・・明人が鈍感なんじゃないかって思ってたけどむしろ私じゃん!)
「ところでさ」
「へ?な、なに?」
一人悶々と考えていた香菜子に声がかけられる。
「俺ら、何か忘れてね?」
「・・・・確かに何かあった気がするかも」
「何だっけな・・・・」
その時、ウーウーとパトカーのサイレン音が響いた。
「「・・・・・・・あ」」
「今日未明、凶器を持った男が逮捕されました。ここ数日駅周辺に出没していた不審者だと見られ、警察の調べによると男は無職で独身、子供がいないにもかかわらず『俺の息子は無事か』と不可解な言動をしているとのことです。続いて~~~~~~~・・・・」
彼のダメージは大きかった。
一旦区切りです。ネタ浮かんだら書くと思いますけど大学始まるんでチンタラします。ご了承ください