表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長年の想いを  作者: 叶山 慶太郎
4/9

おでかけ

「あ、アキ!」


「ん?どうしたカナ」


どこかテンパった様子で突然声をかけてきた幼馴染。顔赤いけど大丈夫か?風邪か?てか、全然目合わせてくれないんだが。不自然なほど逸らしてくるんだけど。


「えと、あの、その・・・・・・」


「何かは知らんがとりあえず落ち着け」


「う、うん」


そう言ってフーっとカナが息を吐いた。ちょっとは落ち着いたか。やっとこっち向いたな。


「に、日曜日!」


「おう」


「出掛けませんか!?」


「唐突だな。まぁ、いいけど」


鬼気迫るって感じなんだけど。決闘の申し込みか。


「ほ、本当に!?」


「お、おう」


うってかわって満面の笑みだな。俺に向けてくれたのは結構前だった気がする。


「じゃあ、10時に駅でね!」


「あ、はい」


それだけ言うと去っていった。

新人戦終わった後でよかった。新人戦直前だと日曜も練習あるからな。まぁ野球部とかはずっと日曜練習あるらしいけど。卓球部でよかったわ。

てか、家隣なのに待ち合わせってのはおかしいだろ。一緒に行けばどっちかが待つ必要ないし。意味わからん。まぁ、合わせてやるか。でも普通に家出たら時間かぶるだろうな。早めに出るか。







「よかった~」


断られたらどうしようかと思ってた。意外とあっさり了承されたな。・・・・・・脈アリだと思っていいのだろうか。


『俺もお前のこと好きだ』


「~~~~~~~~~っ!!」


妄想してしまい、ベッドでゴロゴロゴロゴロ。・・・・重症だね私。


「はぁ、できることならイチャイチャしたい・・・・・」


「さっきからうるさいよ」


「え、お母さんいつからそこに!?」


「あんたがベッドでゴロゴロしてるときからよ。はい、服置いとくね」


「あ、ありがと・・・・・ってそれ最初からじゃん!」


「知らないわよ。で、なんかあったの?明人くん?」


「なんでまずアキが出てくるの!?」


「逆に聞くけどほかに何があるの?」


「・・・・・・私ってそんなにわかりやすいかな」


「うん」


「即答!?」


ちょっとはフォローとかしてくれないの?


「で、いつから付き合ってるの?」


「ま、まだ付き合ってないよ」


ハァ~~~と長いため息をつかれた。怒ってる?


「あんた、空手じゃガンガン攻めていくくせに・・・・」


「それとこれとは別だよ!」


「将来が不安なのよ。格闘技やってる人は結婚できないイメージあるし。霊長類最強のあの人とか」


「・・・まぁ確かに」


「あんたみたいな暴力ヒロインにこれだけ長いこと付き合ってくれる人は希よ。絶対逃がすんじゃないよ!」


「りょ、了解です」


「よろしい。じゃあね」


嵐が去っていった。暴力ヒロインはちょっと傷ついた。でも、応援してくれるのはありがたい。期待に応えねば!







次の日


「9時30分!?目覚ましかけ忘れたぁぁぁぁぁぁ!!」






(30分前はちょっとはええかな?ま、着く頃には15分前ぐらいになってるだろ)


ぁぁぁぁぁぁ!!


「ん?」


なんか聞こえてきたけど・・・・カナ?・・いや、まさかな。









「何か言い分は?」


「いやーその主役は遅れて来るというか・・・・」


「・・・・・・・・」


「・・・・・寝坊しました。すみません」


現時刻10時5分。浅田香菜子5分の遅刻。


(お母さんに時間伝えておけばよかったなぁ・・・「あんた昼から行くんじゃないの!?もう間に合わないじゃん!何してんの!?」ってめちゃくちゃ怒られたちゃったし・・・。「ごめん待った?」「いや待ってないよ」みたいなやり取りしてみたかった・・・)


「まぁ、たかが5分だしな。女は支度に時間がかかるって言うし」


「アキ・・・!!」


「でも誘った本人が遅れるってのはどうかと」


「うっ、アキ・・・・」


責められて見てすぐわかるほど落ち込む香菜子。


「はぁ・・・・」


明人は香菜子の頭をガシッと掴んで数度揺らす。


「わぁ!ちよっと何するの!?」


「これでチャラな。ほら、行こうぜ」


「もう・・・・・」


膨れっ面。しかし、怒りはそれほど無い。


「で、どこ行くんだ?」


「え?」


「いや、え?じゃなくてさ。俺今日何するか、どこ行くかとか何にも聞いてないんだけど」


「あ、あれ、そうだったけ?」


「そうだよ。で?」


「えっとね・・・・・あ!映画とかどう?」


「・・・・・お前予定とか何も立ててないだろ」


「え!?あ、いや、その・・・」


(舞い上がりすぎた~!あ~どうしよ。せっかく服も選んでもらっ・・・・そうだ!)


「ね、ねえ!この服どうかな?」


「誤魔化すなよ」


「い、いいから、ほら感想!」


お見通しである。とりあえず明人は乗ってやることにして香菜子の姿を見た。長袖だが胸元が少し見え、スカートはギリギリまで短い。


「・・・・・・寒くねぇの?」


「は!?なにその感そ・・・・ハックション!」


くしゃみして体を震わせる。


「ほらやっぱ寒いんだろ。そんな格好な上に急いで来たから汗かいてっから冷えるのは当然だ」


「だ、大丈夫だよ、これぐら・・・・わっ!」


バサッと何かが香菜子に投げつけられた。


「上着やるから着な。そのままだと風邪引く」


「え、でもアキは大丈夫なの?」


「馬鹿は風邪引かねぇんだよ」


「いや、私より順位上じゃん」


「いつも俺のこと馬鹿って言うのお前じゃねぇか」


「・・・・・むー」


それを言われると何も言い返せない。


(そういえば・・・・)


「ねぇ、なんかアキってやたら風邪のこと気にしてない?」


「ん?あー、かもな」


「なんで?」


「お前が昔風邪で大会出られなくなって大泣きしたから」


「・・・・・え?」


「まぁ、もう大会終わったんだけどさ」


「・・・・・・」


(それ、何年も前でしょ!もう泣かないよ!多分!・・・・・本当優しいな、アキは。そういうとこずるいよ)


嬉しさのあまり声が出ない。恥ずかしさのあまり顔を上げれない。


「どうした?体調崩したか?あんまり辛いようなら帰ったほうが・・・」


「大丈夫!上着ありがとね!」


明人が見たのはニマニマと弛みまくった笑顔だった。


「お、おう」


戸惑う。


「さ、行こ!」


「おう」







「ん、これ面白いって聞いたな」


「あ、私も知ってるよこれ」


「じゃあこれでいいか」


「・・・・これ、ホラー、だよね?」


「そうだな。・・・・・そういや、苦手だったっけ?」


「い、いやーそれ昔の話だから。今はもう大丈夫だから。ははは・・・・・」


明らかに強がり。冷や汗が見られる


「・・・・・・・別にやめてもいいんだぞ」


「全然平気だし!むしろ見たいし!」


「あ、そ。知らねぇぞ」







「きゃあああああああああ!」

「うわああああああああああ!!」

「ひゃあああああああああああああ!!!」






「いやー面白かったな」


「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・」


未だに香菜子の心臓は落ち着かない。


「・・・・・だから言ったのに」


呆れ顔でため息混じりに明人が言う。


「だって怖いの駄目ってなんか恥ずかしいじゃん・・・・」


顔を赤くして明人から目線を逸らす。


「今更俺に強がることなんてないだろ。お前のことは大抵知ってるし」


「・・・・・・アキが知らないこと、あるよ」


僅かに目線を上げて言った。


「?なんだよ」


「・・・・・教えない」


「気になるだろ」


「・・・・いつか、言うから」


「・・・・・?」


「さ、お腹空いたしご飯食べよ!」


何事もなかったかのように笑顔で促す。


「お、おう」


気の抜けた返事しか明人にはできない。


「こないだテレビで紹介されたお店に行こうかと思うんだけど」


「予約したか?」


「え?してないけど」


「テレビに出たってんなら混んでるんじゃないか?時間的にもちょうどだし」


「・・・・・だ、大丈夫だよ!多分・・・・」







「めっちゃ人いるな」


「・・・・・・」


店の前に立っている人、ベンチに座っている人等様々いるが、皆順番を待っていることはなんとなくわかる。案の定リストにはズラっと名前が記入されている。


「どうする?ほかの店に行くか?」


「でもほかの店も多少混んでるだろうし。お腹空いてるけど別に待っても」


グゥ~~~~という音が騒がしい人混みの中でも明人には聞こえた。


「体は待ってくれないみたいだな」


「・・・・・・」


顔を伏せているが赤くなった香菜子の顔が見えた。


「近くに先輩の家があって店やってんだけどそこでいいか?」


「・・・・そこは空いてるの?」


落ち着くため少し間をとってから香菜子が返答する。


「大丈夫だろ。居酒屋だし」


「い、居酒屋?」


「いや別に酒は飲まないからな」



「だ、だよね。未成年だしね」


「試合の後とかに寄ったりするんだけど唐揚げとか超旨い」


「へ~」


「じゃあ決まりでいいか?」


「うん」









駅から徒歩で数分。「居酒屋さとう」とでかでかと看板に書いてある店に到着。

ガララッと扉が開く


「いらっしゃい・・・・・あれ、樋田君じゃん!」


「どうも。元気そうですね、佐藤先輩」


「そっちもね。あ、ちょっと背伸びた?」


そう言って明人や香菜子より少し年上かと思われる女性が明人の頭頂付近に手を添える。


「まあ成長期なんで」


「そっかそっか」


この二人が香菜子にはとても仲良さげに見えた。


「ね、ねぇ、アキ、先輩って女の人だったの?」


「ん?あぁ、そうだけど。言ってなかったっけ?」


「てっきり男の人かと・・・・」


部活、といっても男子卓球部ではなく卓球部のことだった。


「ん?そっちの女の子は・・・・彼女?何、デートしてたの?」


「ち、違います!」


ゲスな笑みを浮かべる佐藤と顔を真っ赤にして否定する香菜子。


「まぁ、デートには変わりないけど」


「え!?」


「おっと」


さらっと明人が言い放つ


「デデデ、デートって・・・・・」


「どうした急に大王の名前なんか出して」


「ほうほう」


意味深な様子で佐藤は頷く


「付き合ってなくても男女が出掛けりゃデートなんじゃねぇの?」


「そ、それはそうかもしれないけど、その、デートっていう響きがなんていうか・・・・」


「ねぇねぇ」


「はい?」


赤い香菜子に佐藤がそっと耳元に寄る


「好きなの?」


「みゃふぁ!?」


「なにそれ新しいね」


ケタケタと佐藤が笑い、香菜子はよりいっそう赤くなる。

香菜子は明人に聞こえないように小声で佐藤に反論する。


「べ、別にアキのことなんて」


「好きなの?としか聞いてないよ?よく樋田君のことだってわかったね」


「!?」


(ま、まんまと引っ掛かってしまった!)


ケタケタからニタニタに笑みが変わった


「なにしてんすか?」


「ううん、なんでもないよー。にしても・・・」


ガッと佐藤が明人と肩を絡める。


「やるじゃない~」


「いや何がですか?」


依然として口角を上げた佐藤と困った様子の明人。そしてそれをなんとも微妙な表情で眺める香菜子。


ふと香菜子と佐藤の目が合い、香菜子は少し驚き、佐藤は何故かどや顔を浮かべた。


「?」


そしてよくわからない明人。


「なんでもないよ~。ささっ座って座って」


佐藤がテーブルへと案内し席に座るよう促し、明人たちがそれに従い互いが正面になるように座った。


「ご注文は?」


「唐揚げ定食」


「あんたそればっかだね。じゃあ、そっちの・・・・」


「あ、浅田香菜子です」


「そう、香菜子ちゃんね。香菜子ちゃんはどうする?」


「それじゃあ同じので」


「はい、了解しました。唐揚げ定食二つー!」


あいよーとおっさんの声が厨房から響く。おそらく店主だろう。


「それじゃあごゆっくり~」


そう言うと彼女は去っていった。


「・・・・仲良いんだね」


「あの人は誰とてもああなんだよ。てかなんでお前不貞腐れてんの?」


「・・・・別に」


明人から目線をそらす。


「・・・・・?」







「お待たせいたしました。唐揚げ定食でございます」


佐藤が手慣れた様子で卓の上に盆を置く。その盆を見て明人は違和感を抱く。


「ポテトサラダってついてましたっけ」


「サービスよ」


佐藤が得意気に二人に笑顔を向ける。


「ありがとうございます」


明人は佐藤にならい笑顔で礼を言う。


「あ、ありがとうございます」


香菜子は明人と違い、佐藤と会ったばかりで気まずさのようなものがあった。礼からもそれがうかがえる。


「今後ともご贔屓にね!」


明るくウインクを華麗に決めて佐藤は去っていった。アイドルのような派手さは無いが大人っぽくかなり様になっていた。


(アキは、ああいう人が好きだったりするのかな・・・・)


香菜子は不安げに俯いた。佐藤は香菜子から見て魅力的に思えた。そしておそらく一般的にもそう言えるだろう。


「食わねぇの?」


「え?あ、うん。いただきます」


(アキは私のことどう思ってるんだろう)


不安は消えない







ドジっ子にしすぎた感がある。ごめんな香菜子さん

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ