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長年の想いを  作者: 叶山 慶太郎
3/9

きっかけ

「ねぇねぇ、香菜子」


「何?」


「あんたっていつから樋田のこと好きなの?」


「#◎@$£°♀○!?」


「・・・・・何言ってるかわかんないんだけど」


「な、なんのこと?別にアキのことは・・・・」


「いや、バレバレだから。めっちゃ見てるし。そんで見ながら微笑んじゃってるし」


「え、嘘でしょ!?」


「本当よ。まぁ、その反応からして好きなのは間違いなさそうだね」


「~~~~~~~っ!」


崩れ落ちるように私は机に伏す。


「よしよし」


そう言って吉田恭子が私の頭を撫でてくる。彼女は高校からの友達だ。

悶えていた私はあることに気付いてガバッと起き上がる。


「アキにもバレてる!?」


「んー、それはないんじゃない?男連中が樋田にあんたとのことからかったときに『好きだったら殴りかかってこねぇだろ』とか言ってたし」


「そ、そっか」


ほっと一息。


「なに安心してんの?このままじゃあいつ振り向いてくれないよ?いいの?」


「いや、それはできることなら付き合ったりとかしたいけどさ、今更やめても心配されそう」


「は?心配?」


「『最近、元気ないけど大丈夫か?』とか」


「へーあいつそんな感じなんだ」


「うん。結構気にかけてくれたりして優しいんだ」


まぁ、なんていうか不器用っぽいところはあるけどね。


「・・・・・バカップル」


「なんで!?」


付き合ってないし、馬鹿でもない!


「いやだって今のどう考えてもノロケでしょ。頬弛みすぎ」


「え、嘘!?」


「本当」


私ってそんな顔に出るタイプだったのか・・・・。知らなかった。


「それで、いつから?」


「言わなきゃ駄目?」


「・・・・・樋田にチクってやろうかなー」


「言います!言います!言わせていただきます!」


「よろしい。それで?」


「えっと・・・・・小学5年のときだったかな」









私そのときにはもう空手やってて入賞とかもするようになってきてた。そんなとき昼休みにクラスでいじめられてた子をたすけた。力ずくで。そしたら放課後に


「あ、暴力女だ!」


「ほんとだ、暴力女だ」


いじめてた男子たちが私に突っかかってきた。


「誰が暴力女よ!」


私が怒って詰め寄ったら


「お、殴るのか?やっぱり暴力女だな!」


余計に腹が立った。今まで頑張ってきた空手も馬鹿にされてるような気がした。でもそう言われて私は手を出すことができなかった。そしたら


「だっさ」


「あ?なんだよ」


アキが来てくれた。


「だせぇって言ったんだよ。集団で負けて悪口を言うことしかできないなんてな」


「なんだと!」


「殴るのか?人にはあれこれ言ってたくせに自分は別かよ」


「う・・・・・」


詰め寄ったいじめっ子たちに対してさっき私が言われたことを利用して黙らせた。


「チッ、行こうぜ」


いじめっ子たちは去っていった。アキは何事もなかったかのように玄関の靴箱に手を伸ばす。


「帰るぞ」


「え?あ、うん」


靴を履き替えたアキがぼーっとしてた私に声を掛けてきた。そしてそのまま帰らずに私が靴を履き替えるのを待っててくれた。


「ねぇ、どうしてたすけてくれたの?」


私がアキに問いかけた。


「ああいうの腹立つんだよ。自分のこと棚に上げて偉そうにして。それにカナが空手頑張ってんのも知ってるし、これきっかけに止めるとか言ってほしくないから」


うれしかった。こんなにも自分のことをわかってて、その上でたすけてくれる人がそばにいるんだって。


「でも、お前もお前だぞ。すぐ手を出すから暴力女とか言われるんだ」


「だってそれはいじめられてたから」


「先生呼ぶとか、他にもいろいろあるだろ。逆にやられてたかもしれないんだぞ」


「う・・・・」


「まあ、お前のそういう優しいところは好きなんだけどさ」


「・・・・え?」


「これからは気を付けろよ?」


「・・・・・」


「おい、どうした」


「だ、だって、あんた、今・・・・・ああ!もう!」


顔を真っ赤にしてアキに殴りかかった。アキはバッと思い切り仰け反ってなんとかかわす。


「あっぶねぇ・・・お前言ったそばから殴るなよ」


「それはそっちが!・・・・いや、なんでもない。ごめん」


しゅん・・・と項垂れる私の頭にアキはそっと手を乗せた。


「まぁでも安心しろ。俺は絶対カナのこと暴力女だなんて言わねぇから」


アキは笑ってそう言った。それがなんだかうれしくて、ドキドキした。






「これがきっかけかな」


「へ~かっこいいじゃん。惚れるのもわかるわ」


「だ、駄目だよ、惚れたら!」


「いや、わかるって言っただけだから。惚れてないから。あんた必死すぎ」


「ご、ごめん」


「はぁ~てか、そんなに他の女にとられたくないならさっさと告ればいいじゃん」


「で、でも、多分向こうはそんな風に私のこと見てないと思うし」


「わかんないでしょそんなの。それに好きかどうかは別にして、あんたのこと大切にしてるのは確実なんだから脈がないわけじゃないよ」


「そ、そうかな?」


「そうだよ。あと、もしあんたのこと女だと思ってないって言うんなら意識させればいいのよ」


「どうやって?」


「とりあえず暴力禁止」


「は、はい」


「それと、フフっ、明日空いてる?」


なにやら怪しげな笑みを浮かべてらっしゃる。なんだろう。


「午前は部活があるけど、午後からなら大丈夫だよ」


「よし、じゃ駅に来てね」


「なにするの?」


「ふふっ、コーディネートよ」


「・・・・・え?」


次の日私は着せ替え人形と化した。

今更だけど暴力ヒロインてどうなんだろ。いける?

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