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今日から学校と仕事、始まります。①莞

閻魔大王、家事をこなす理由

作者: 孤独

ここは”地獄”、悪しき死者達が辿り着く世界。

そこにいる、”閻魔大王”は最強と謳われる男であった。



「ふはははははは」


戦闘狂の中の、戦闘狂。

地獄の覇者。


男の名はトームル・ベイ。3mはあろう筋骨隆々な体躯、何百年以上もこの地獄で最強を誇っているだけに、やや老いた顔をしている。だからこそ、経験と実力が他の生物を抜いていて隙のない男だ。



「数でこの俺を殺すなど、寝言をかますな」


接近格闘戦も好きだが、トームル・ベイの強さの真実は弱者の虐殺にある。

魔術、”閻魔大王”。彼の異名通りの魔術は、至極シンプルにして、凶悪。恐怖を痛みに変えるという誰にでも分かりやすい能力を持つ。


非常に単純だからこそ、質が極めて問われる。故に敵や相手が、トームル・ベイに合わせた対策を練るのが難しい。


今、まさにトームル・ベイに襲い掛かる何百、何千人の兵士達がいた。

すでに”閻魔大王”の距離にして、効果が適用されるところで彼等は生きている。”閻魔大王”が適応される範囲は、軽くやっても半径50km。本気で使った事はないため、正確な範囲はベイも知らない。また生殺与奪ができるように、範囲内にいる存在を複雑に選ぶ事もできる。

恐怖を痛みに変える程度は、生物として抱いた過去の恐怖をも含めてのものを再現する。


一度死に掛けた恐怖があれば、一瞬にして、それだけの痛みが肉体を襲う。そして、また恐怖を抱けば重ねるように肉体は傷付き、生物は消滅する。



ブシュウゥゥッ



一瞬の事である。1000人以上の兵士がベイによって、消滅した。戦闘にすらならない事の方が多い。それが彼の、”戦闘”における強さであった。




◇       ◇



閻魔大王、トームル・ベイは強い。それはなにも、戦闘だけが求められる”強さ”ではない。


「カレーでも作るか」


最強の男は意外と庶民的。そして、最強だからといって、メイドや使用人を雇うことはあまりない。雇った事はあるが、色々あったので辞めた。

トームル・ベイは最強であるが、趣味もある。日曜大工や料理、裁縫、読書、トレーニング。……まぁ、トレーニングは肉体の強さを維持し、鍛える事を指すため、日常の趣味としては微妙か。

他にも多彩な趣味を持つ。何百年も最強としてだけでなく、生物といて生きているわけだから色々な事をするのだ。


家事は案外大変であるが、疲れた時にできるかどうかで、己の忍耐力を鍛えられる。


激しい戦闘(基本、虐殺になるが)を終え、相手の血を浴びた服をそのまま使うと臭いが残り、部下達に怖がられる。ただの洗濯ではなく、臭いまで消える洗濯は毎日しなければならない。同時にシワなんてついた服を着るのはみっともない。ちゃんと、アイロンも綺麗にかける。


飯は自炊を心がけている。最強をやっているため、食事処で戦うと何かとお店に迷惑が掛かるからだ。いくら範囲が広いからといって、敵と味方、第三者を見抜ける能力はない。あったらあったで、退屈しかないわけだし。毒を入れられる事もある。買ってきた者は自己責任として受け入れる。毒なんかでは死なんし(苦しいけどな)。


「クーポン、使っていいですか」

「はいよー」


あまり高級な物は買わない。それより調理が難しいか、多いかのメニューを選ぶ。作っている楽しさがあるからだ。魚を捌くのは中々楽しい。最初は難しかったが、重ねることで理解にいたる。その達成感は戦闘に勝つ喜びと似ている。

最近、ガーデニングにも手を出してみた。苦難の連続ではあったが、プチトマトができるとそんな苦労も吹っ飛んで、美味しく頂いた。次はジャガイモの栽培に挑戦しようと思う。

様々な挑戦で得られる達成感と充実感。失敗はあれど、それを糧に挑戦することは、忘れてしまいかける勝者としての振る舞い。虐殺するための強さを求めるのではなく、新たな挑戦に挑める強さ。トームル・ベイは後者である。


それが最強の形の一つであろうと、ベイは思う。


日常に生きるのも一つの鍛錬。むしろ、楽しい鍛錬と思う。



「す、隙がねぇ」

「基本スペックが高いとは聞いていたが、これほどとは……」


買い物している間、料理をしている間、いくつか殺気を感じた。それに反応して始末する臆病者ではない。気付くべきことだ。


「己を鍛えよ」


相手に合わせた強さでは、このトームル・ベイ。最強を手放したりはしない。


どんな環境でも生きられるのも、また問われる強さである。

閻魔大王の話、1年半ぶりに書きました。


彼の長編も書きたいですけど、中々できませんね。

やっぱり戦うだけじゃなく、普通並に生活ができるのも強さだと思います。

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