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漏れる
「お邪魔しました。」
笑顔で彼は帰って行った。
姉は僕に言った。
「あの子が弟だったらいいのに。」
何気ない彼女の言葉はまた僕を潰していった。
「おはよ!」
朝、学校へ行くと彼が話しかけてきた。
「それでさぁ…。」
彼は僕の家の話を始めた。
『お前の家は大きいな。』
『あんな家に住んでみたいよ。』
『それより、お姉さん素敵だね。』
『俺もあんな姉が欲しかったな。』
『一人っ子て、意外と辛いんだぞ。』
彼はどんどん口を開いた。
「ごめん。トイレに行ってくる。」
小さな声とともに僕は席を立つ。
僕はもう耐えられられなかった。
咳とともに僕の気持ちが吐き出されていった。
僕が醜いことはもうわかっている。
「これ以上、なりたくない…。」
また僕は届かない声をあげていた。
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